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安倍晴明と安東総理のやり直し転生譚  作者: 坂崎文明
第二章 安土桃山時代編

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信長の歌、イエズス会の謎

(清明殿、この女、どこにいた? わしの魔人眼でも見えなかったぞ)


 信長は自分の手を見た。

 少し汗が吹きだしていた。


(かなりの陰形(おんぎょう)の使い手ですな。おそらく、最初から光秀殿の側にいたのでしょう。わたしの陰陽術でも見通せなかったようです)


(これは分が悪いな。早々に退散しようか)


 信長は珍しく弱気な発言をした。


(それがいいかと思います。敵の戦力がわからない時は一度、引くべきかと)


 明智光秀改め、天海は信長同様に合理主義者である。

 武士の意地とか、名誉などは意外と意に介さないところがあった。


「イエズス会のベアトリス殿か。ルイス・フロイス殿は息災か? それともヴァリアーノ殿と親しいのかな?」


 信長はそれとなく鎌をかけた。

 イエズス会にも派閥がある。イスパニア(後のスペイン)に併合されたポルトガル出身のルイス・フロイスとイタリア出身のイエズス会東インド巡察師ヴァリアーノは全く違う派閥に属していた。

 かのフランシスコ・ザビエルもイエズス会の創立メンバーだという。

 当時はイスパニア、ポルトガルがイエズス会の二大派閥だと言われているが、イタリア、つまりローマのバチカン派閥が背後にいて、二大派閥を牽制していた。

 信長への交渉役がルイス・フロイスからヴァリアーノに交代したのもバチカンの意向が働いていたからだろう。


「ええ、私はヴァリアーノさま同様、イタリアから参りました。そんなことより信長さまの和歌が聴きたいです。それにしても、信長さまと天海殿が先ほどからかけているメガネのようなものは何というのですか?」


 花のような笑みを浮かべるベアトリスはさりげなく聞いてきた。

 信長と天海は神沢優からもらったダークブルーのサイバーグラスをかけていた。

  

「これはサイバーグラスといって、堺の職人につくらせた貴重な品じゃ」


 信長は咄嗟に嘘をついた。

 

「そうでしたか。西洋でもあまり見かけない品です。私もひとつ所望したいのですが、ダメですか?」


 甘い言葉でおねだりされた。


「残念ながら、これは本当に貴重な品で、また今度、取り寄せてそなたの元に送ろうと思う。どちらにおいでかな?」


「はい、京都のイエズス会の修道会にいますので、ベアトリス宛にいつでもお送り下さい」


 ベアトリスは碧い目で上目遣いに信長を見る。


(たぶん、このサイバーグラスをかけていなければ、この女の術に嵌るところだった。天海、光秀のほおけた顔が見えるか? あれが本能寺の変の真相じゃな)


 光秀、過去の天海の顔はベアトリスの媚術(びじゅつ)(とろ)かされていた。


(己のことながら恥ずかしいですな。あれでは無謀な謀反を起こしてしまいますな)


 天海は己自身を笑った。

 逆に言えば、正気を取り戻した本来の光秀が戻ってきたとも言えた。


「では、最後に一句詠む。九十九句では切りが悪かろう」


 信長は一同を見回して宣言した。


「はい、楽しみですわ」

  

 ベアトリスの賛同に一同もまるで傀儡(くぐつ)のようにうなづいた。


「ときは今 天が下しる 馬揃(うまぞろ)え」


 光秀の表情が何とも複雑に変化した。

 馬揃(うまぞろ)えとは観兵式、軍事パレードであり、兵馬の武威を示すものである。

 この句は信長が天皇家への忠誠を誓って、天下を治めるという意味合いであった。

 信長らしくない平和裏な挙句と言えた。


「光秀、わしは征夷大将軍を受けるぞ。天皇家にそう伝えてくれ。それと本能寺にて、お前の備中への出陣式の馬揃えをやるので、準備ができたらすぐに来い」 


 そう言い終るとすっと立ち上がって、信長と天海は乗ってきた馬に跨った。

 一同はあっけにとられていた。


「信長さま、また、お会いできるのを楽しみにしています」


 ベアトリスだけが笑顔で信長に言葉をかけた。


「ベアトリス殿も息災でな」


 信長は莞爾と笑った。

 

(三十六計逃げるに如かずじゃ)


 信長は平静を装いつつ、内心、危機を感じていた。


(それがよろしいかと)


 天海も同意見だった。 

 


 

     †


 



 安東要たちと合流した信長と天海はそれぞれ、式鬼<金鋼(コガネ) (ゼロ)>、式鬼<銀鋼(シロガネ) (ゼロ)>に乗り込んで、メガネ君たちの<ボトムストライカー>隊と共に、京都の本能寺の方面に向かっていた。


 移動迷宮の入り口は京都の本能寺付近にあって、どうしてもそこまでは辿り着かないといけなかったのだ。


(しかし、晴明さま、イエズス会って何なんですかね?)


 安東要は晴明の見解を聴きたかった。


(ふむ、イエズス会かあ。一般的にはキリスト教の国際的な布教団体と言われているが、その創設は1540年9月27日にイグナチウス・ロヨラによって成立したと言われている。イグナチウス・ロヨラは元々軍人だったのだが、負傷して療養してるうちに信仰に目覚め、後に人の霊的進化トレーニングを記した『霊操』という本を書いる。その時の創設メンバーのひとりが日本でキリスト教を広めたフランシスコ・ザビエルじゃ。イエズス会が目指していたものはローマの反宗教改革で、ルターが聖書だけを信仰しなさいと言った宗教改革による信者の教会離れをビジネスモデルの転換で引き留めようとしたのじゃ)


(宗教なのにビジネスモデル?)


 要は話の成り行きが変な方向に行ってるので疑問を挟んだ。


(現世利益と言った方がいいかのう。つまり、それまでのローマ教会は免罪符を売って信者を食い物にするようなことをやって、ルターの宗教改革と信者の教会離れを生んだ。それはいかんということで、信者と共存共栄路線に転換したのじゃ。具体的には奴隷商人の船に乗って世界各地の国に行って、その国で布教しつつ、鉄砲などの武器を売って、婦女子を奴隷として売りとばしたのじゃな。異教徒なら奴隷として売りとばしてもOKだった訳で、まさにこれはWin-Winのビジネスモデルの原点じゃな)


(晴明さま、ひどいわ。日本の戦国大名は自国のいたいけな波奈のような婦女子を売りとばして鉄砲を手に入れたのですか!)


 月読波奈が我がことのように嘆いた。


(最初はそうだったが、日本が鉄砲を自国生産できるようになってからは火薬の原料の硝石などと交換されたのじゃな。50万人ぐらい売られたらしい。つまり、イエズス会は最初から布教を名目にしたビジネス団体だったんじゃ、そう考えると辻褄が合う。もっといえば、十字軍の略奪で大儲けした虐殺レイプ集団のテンプル騎士団が有り余る資金のために銀行の財務管理システムを発明して、その後、その膨大な資金が国から危険視されて(国王もテンプル騎士団から借金していた)潰されていくのだが、ポルトガルだけはイスラム勢力を追い出したレコンキスタに貢献したという理由で、テンプル騎士団は解散したが、キリスト騎士団として存続を許される事になった。その膨大な資金を元に設立されたのがイエズス会という訳で、大航海時代が始まるわけじゃな。秀吉や家康がキリスト教の布教を禁止するのもわかるじゃろう。イエズス会の作った下智大学などではちゃんとそういう歴史を教えるのかははなはだ疑問じゃな)


(ひどい、ひどすぎるわ。日本の戦国大名の武士道なんか信じないわ!)


 そこまで怒ることないだろうというぐらい月読波奈は怒りだした。


(すまんな。波奈殿、それが現実じゃ)


 信長は自分の無力を正直に吐露した。


(ただ、この日本が統一された暁にはもう少しマシな世の中になるじゃろう。戦もなくなれば鉄砲も少なくて済む)


 信長は未来の遠い世界を見ているような目をした。


(そうですね)


 メガネ君が答える。


(メガネ隊長、上空に変なものが現れました)


 副隊長のザクロから通信が入る。

 全員が空を見上げる。


 そこにはブーメラン型の巨大な黒い飛行物体が見えた。

 次の瞬間、その飛行物体からパラシュートをつけた無数の機体が地上に舞い降りてきた。


 数は200機ぐらいはいるだろうか。

 赤色の人形の機体に胸に十字の紋章が見える。

 <薔薇十字騎士団>、魔女ベアトリス忠実な(しもべ)であった。





二日間、高熱が出て棒に振りましたが、ようやく更新です。


次回は<薔薇十字騎士団>との戦いになる訳ですが、メガネ君も頑張りますが、天海が活躍する予定です。


さてはて、どうなるでしょうか?

しかし、安土桃山時代編がなかなか終わらないし、細川幽斎もそろそろでき来ますが、イエズス会は表と裏のギャップが激しいと言うか、全く信仰とか布教を考えてはなかったとは思いませんが、なんでこうなった?という感じですね。



日本の歴史教科書はキリシタンが日本の娘を50万人

も海外に奴隷として売った事は教えないのはなぜか?

http://blog.goo.ne.jp/2005tora/e/5a197e856586baf726f6a0e68942b400


ポルトガルを1000年恨み続ける

http://my.shadowcity.jp/2014/03/1000.html


「イエズス会の世界戦略」高橋 裕史 著

http://kousyou.cc/archives/6526


【イエズス会は軍事諜報組織である:日本のイエズス会人脈】

http://www.asyura2.com/0406/bd36/msg/111.html

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