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(9)


俺とあかりが出会ったのは、中学の入学式の日だった。




  ***




「ねぇ、ごめん席替わって貰っていい?」

後ろから肩を突かれ、振り向いた所に内堀あかりは居た。

窓際の黒板から3番目の席が俺で、4番目があかり。

「え、前見えない?」

入学当時で165センチあった俺は、他の男よりも頭一つ突出していた。

「ううん、違うの。そっちの席の方が日当たりが良くって。」

そう言って彼女は笑った。


面白い事言う子だなって、それが第一印象。


席が前後だった事もあって、俺達は良く話すようになって彼女が大の巨人ファンだと聞いて更に親しくなる。



「あかりー、俺秋の大会にベンチに入れるんだ!」

「ベンチ?! 1年なのに入れるなんて凄いじゃんっっ!!」

「へへへっ。」

「観に行くし!」

「ぇえ~? 出れるか判んないし良いよ、わざわざ~。」

「何言ってんのさー、ベンチも立派な選手だよ?」


冗談なんかじゃない、それが当たり前みたいに言うあかりが好きだなって思った。

こんな良い友達、男でもなかなか居ない、そう思った。



2年に進級しても同じクラスで、俺達は友愛を育んでいたと思う。


「なぁ薫平、お前って内堀と付き合ってんの?」

「え? あかりと? 付き合うって何。」

「えぇ? 質問そこぉ?」


男共の間では、最近誰誰が好きだとか、誰誰と付き合いたいだとか、キスしたとかそんな話で盛り上がってた。

そもそも、スキとかそんな感情が不明だったし、付き合うって何するの?って俺は疑問符を投げる。


「つーか、内堀はないだろ!」

「なぁ? あれは彼女には出来ねーな。」

「言える!」

「何で?」

何で、あかりは無い、な訳? 何で彼女には出来ない訳?

俺が聞くと周りに居た連中が顔を見合わせて異口同音する。

「全然女っぽくない。」

「は?」

「色気とかねーし、男っぽいじゃん、友達としては良いけどなぁ。」


・・・つーか、俺ら親友だしな。


「ねぇ一つ言っていい? あかりもお前等と付き合わないと思うけど。」

「・・・はぁー?! どーゆー意味だ、薫平っっ!!」

「え、いや、こーゆー事言う男が彼氏って嫌だろーなーって思って。あ、俺部活行くわっ。」


ぶーぶー言ってる輩を尻目に俺が教室を出ると、壁に寄り掛かるあかりが居た。

「・・・あ。」

ヤバイと思った。

けど、あかりは俺を見上げて片眉を上げつつ笑みを見せる。


「正解。」


きっと本当は陰口を叩かれて嫌な思いをした筈のあかり。

でも、そんな事おくびにも出さずに微笑む彼女は偉いと思った。




中学3年の夏、俺ら野球部は県大会予選の決勝戦に進んだ。


「薫ちゃん、頑張ってー。」

「池内、頑張れよっ!」


決勝戦を明日に迎えた金曜日、学校で俺はそんな声援を沢山貰った。

弥が上にも緊張が高まって、俺は珍しく神経を高ぶらせていた。


「薫ちゃん、明日、何時から?」

帰り際、あかりが聞いてきた。


あ、心音速まった。

決勝、明日なんだよな、負ける訳にいかないんだよな・・・。


「9時半から、かな。」

「そっか、了解。明日、行くねー。」

・・・ん、何か素っ気ないな。

「え? なに?」

あかりを見つめてしまった俺にあかりが逆に尋ねた。

「んっと・・・”頑張ってね”とか言わないのかなーとか?」

「え、だって頑張ってる人に頑張ってって言えないよ。敢えて言うなら、やりきってね、かな!」



うわー何、スゲー、こいつ ってまぢで思った。



あかりのこの言葉で俺は緊張を断ち切れた。


けど・・・決勝戦、健闘したけど負けた。

中学最後の試合は終わってしまった。


応援に来てくれた人達が、肩を落とし涙を流す部員に「頑張ったよ」って労いの言葉を掛ける。

俺は、グラウンドを振り返る。


悔しい。

その一言に尽きた。

勝てる相手だった。でも、9回俺達は集中力を切らした。

それが敗因だ。


「薫平ー、帰るぞー!」

顧問の声が聞こえて俺は悔しさを残したグラウンドを背にした。


木村の親が出してくれたワゴンに乗り込もうとした時、自転車を押して歩くあかりを見つけた。


あかりも俺に気付いてか、俯いていた顔を上げた。

あかりはボロボロに泣いていた。


そして一言、言った。


「薫ちゃん、悔しいよ!」














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