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(8)


その夜、薫ちゃんからメールが届いた。



  電話で話せる?



目を疑った。


けど・・・どうせ、もう終わろうと思ってた。

終わりにするつもりだった。


もう明日の”友達関係”なんて考えなくたって良いんだ。


あたしは電話帳から薫ちゃんを呼びだしてコールした。

ワンコールで彼は電話に出た。


『あかり?』

「・・・薫ちゃん。」

『・・・俺、あの・・・。』

「薫ちゃん、あたし薫ちゃんの事ずっと好きだった。でも、本当に今日で終わりにする。

 ・・・勝手なんだけど・・・暫くは・・・普通で居られるか自信が無い。」


一気に、彼に遮られない内に、胸の内を明かした。


『・・・ずっと? ずっと俺をそうやって見てくれてたの?』

「うん、中学ん時から・・・ごめん、今日泣いたのはそーゆーの色々ひっくるめて・・・薫ちゃんは

 何も悪くない。委員長も悪くない。あたしがズルイだけだから。・・・もう切る・・ね?」

『待って!』

「薫ちゃん。バイバイ、ありがと。」

『あかり!』


あたしは通話終了釦を押した。


一番・・・最低な終わり方。


”友達”も演じ(やり)きれなかった。

そして何より、薫ちゃんを傷付けた。


巻き込む様に委員長も傷付けた。


あたしは最低だ。

自分を安全な場所に置いておこうとした姑息なあたしは最悪だ。





次の日、あたしは正門をくぐる委員長を呼び止めた。


「昨日、薫ちゃんに言ったよ。好きだったって。」

「そう。」


鍵が壊れた非常口から、あたし達は外階段の踊り場に出た。

風が冷たくてあたしは身を縮める。


「だから俺にももう止めろって言ってる?」

あたしは返答に困って乾いた笑いを漏らす。

「・・・お前が俺を選ぶとは思ってない。解ってて一緒に居たいって望んだのは俺だよ?

 終わらせるのも俺の意志で良くない?」

「・・・苦しいよ。」

「・・・告って未だ一ヶ月も経ってないんだけどなぁ。」

「本当に有難う。好きになってくれて有難う。本当に。」

「はっ・・・ずりぃー・・・あかりズルイよ、それ。」


目に掛かりそうな前髪を手で掻き上げる。

長い息を吐いて委員長は言う。

「・・・俺もズルイけどね、あかりのそーゆー人を無下に出来ないとこに付け込んだんだから。」



委員長は階段に腰を下ろして

「先行って? ちょっと一人になりたい。」

と言った。

「うん・・・風邪ひかないでよ?」

「俺、健康優良児よ?」

委員長が笑う。

だからあたしもちょっと笑った。


彼に背を向けてあたしは非常階段を下りて校舎を離れた。

もう今日は授業なんて受ける気力は無かった。



プラプラと街を歩いて駅ビルに吸い込まれていく。


シュークリームの甘い香りが漂うビル内。開店準備中の飲食店。

エスカレーターで2階へと上がる。


明日は流石に学校行かなきゃね。


「あかり!」


委員長とは、笑って


「あかり!」


名前を呼ばれた気がして振り返る。


エスカレーターを駆け上がる薫ちゃんの姿が見えた。


「く、薫ちゃん?!」

「あかり!」



口の端が切れてるのか少し血が滲んでる。


エスカレーターを上り切った薫ちゃんはあたしの腕を掴んで休憩スペースになってるベンチへと座らせた。


どうして、薫ちゃんが此処に?

どうして、薫ちゃんは怪我を?


あたしの視線が薫ちゃんの痛々しい口元にあるのに気付いてか薫ちゃんは指の腹で其処に触れる。


「遊佐に、ちょっと。」

「え、委員長に・・・? 何で・・・。」


薫ちゃんがあたしの横に腰を下ろした。

あたしの右腕に彼の左腕が触れた。


心臓が跳ねる。


そこが熱を持って火を起こして痛みが生まれる。


動きたい、薫ちゃんから数センチでも離れたいと思うのに体が思う様に動かない。



「俺・・・勝手なんだ。遊佐にも言われた。」


太腿の上に硬く握り締めた拳を乗せて、あたしは冷たい床を見ていた。



「あかりが、遊佐の彼女になるなんて俺、やだった。」










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