(6)
「・・・そんな勇気無いの。あたし薫ちゃんの好きな人知ってる。・・・正直、薫ちゃんが
その人と上手くいってもあたしは上手に笑えない。薫ちゃんがその人に振られちゃっても
一緒に同じ様に悲しんであげれない。・・・あたしって最低・・・結局、自分が可愛いんだ。」
傷付くのが怖いから、友達として上手く笑える自信が無くなるから、告白なんて出来ない。
だから、薫ちゃんは凄いと思う。
そして、あたしの目の前に居る委員長も。
「俺は、あかりと何処か行ったり、あかりと手繋いだりとかそんな事夢見てたよ。
あかりが池内の事好きなの知ってても、可能性はゼロじゃないって思ってた。根拠は無い。
これも俺の憶測だけど、あかりは永い片想いにもしかしたらケリをつけたいと思ってるかも
しれない。だったら、俺の手を取らない手は無い筈だってね。・・・自意識過剰?」
委員長は自嘲するように笑う。
言うつもりはない。
だとしたら、あたしが何処かでケリをつけなくちゃいけないんだ。
あたしの意志で幕を引くんだ。
そぉか・・・そこまでは考えてなかったな。
高校卒業まではきっとこの状態なんだろうなって漠然と思ってた。
薄れていくんだろうなって思ってた。
「付き合えない、うん、そうだろうね、今はね。・・・俺を遮断しないで、あかり。
もう少し猶予を頂戴。たまには二人で会って、たまには一緒に学校から帰って、あかりの
時間に俺も少し加えて? そんなの俺に悪いなんて偽善者ぶった台詞は聞きたくない。
俺に”その気持ち有難う”なんて言う位なら、俺にあかりの時間を少しでも頂戴。」
苦しくなった。
息の仕方を一瞬忘れてしまったのかと思う程。
この人は何て人なんだろうと思う。
その熱い想いに逆らえなかったのではない。
熱い想いに押し切られたのではない。
あたしは、頼ってしまった。
委員長のその優しさに流されて、薫ちゃんへの想いを何処かに溶かしてしまえば良いと思った。
あたしは又自身を加護した。
初詣に初めて男の人と二人で行った。
「委員長は何お願いしたの?」
「言ったら叶わないでしょ。」
「え、そおなの? あ、ごめん今の嘘。聞かなかった事にして。」
委員長は笑って
「あかりが俺を名前で呼んでくれる様になりますよーにってお願いした。」
と言った。
「俺の名前知らないとか言うなよ?」
知ってるよ、遊佐春陽でしょ。
でも、もう2年近くも”委員長”で・・・。
あたしが当惑してるのを察して委員長は言ってくれる。
「ほら、叶わない。言うんじゃなかった。」
拗ねた風に、でも、こっちが委縮する程の言い草じゃない。
「あれ、委員長っ・・・と内堀じゃん。あれ何そーゆー事?」
初詣に訪れた人で賑わう境内で、クラスメイトに遭遇した。
数人の男子だった。
「おぉあけおめ菊池ー。そーゆーって何だよ。」
委員長は菊池クンの肩に腕を乗せ自然に振る舞う。
「だってお前等クリスマスん時さぁ。」
「なぁ?」
丸クンがあたしに視線を移す。
「あかりが家で寝正月するとか言ってるから無理矢理連れ出して来たんだよ。お前等この後
どっか行くの?」
「え、あーモール行ってみるかって話してるけど。」
「あ俺も行きたい。あかりは? 福袋とか買わないの?」
「買わないけどモールは行きたい!」
委員長が、まるで此処は学校であたしを特別視しない雰囲気を醸し出してくれた。
そのお陰で菊池クンも丸クンも河ちゃんもクラスメイトそのまんまで接してくれた。
男子4人の中に女子あたし一人で行ったモールだったけれど、行き着くと福袋を抱える女子数人に会い結局の所、10名程の団体様になっていた。
家の近くまで送ってくれた委員長にあたしは手を振る。
「ありがと、委員長。」
「うん。又新学期な。」
委員長はあたしに無理をさせない。
それでいて、少しずつあたしの中に沁み込んできた。
薫ちゃんは今頃、どんなお正月を過ごしているのだろう。




