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(4)


クリスマスパーティは、温子の家で催された。

2階建ての1階は温子の両親がやってる居酒屋。

だから2階であたしらが多少騒いだ所で問題は無いってのが開催場所決定事由だ。


ほぼうちのクラスの仲間で集合した中に、ちらほらと他クラスの顔があった。

あたしの横に座る薫ちゃんもその一人。


「ねぇ今日クリスマスイヴイヴだよ?・・・良かったの?」

あたしはコーラを片手にこそりと薫ちゃんに問う。

オレンジジュースを口に運びながら薫ちゃんは首を縦に振る。


「あかり何飲んでんの?」

右肩にどんっと衝撃があって顔を向けると委員長だった。

「コーラ。あれ、委員長今日塾って言ってたなかった?」

「イヴだよ? 会いたいでしょ、好きな女の子に。」

横座りするあたしの右太腿に委員長の掻いた胡坐の左膝が微妙に重なる。


まぁ・・・狭いから。


でも、あたしの左で胡坐を掻く薫ちゃんの身体はあたしとは触れない距離に在る。


「池内は? 彼女とか居ないの?」

委員長が少し身を乗り出して薫ちゃんに質問した。

「・ぁあ・・ん、居ない。」

「・・・。」

あたしは薫ちゃんを凝視した。


朋先輩は?


「お前野球ばっかだもんなー? あかりは、彼氏居ないよね?」

ふいに委員長はあたしに話を振ってきて、あたしは我に返って委員長を見た。

「ははは、断言的だなー。」

「俺とか、眼中無い?」

「ははは・・・は?」


周りは盛り上がってて、だけど、あたしの半径50センチだけが静寂だった。


委員長の言葉を反芻する。

それって・・・そーゆー・・・意味?


「好きな奴居ないんだったら、俺と付き合わない?」

「・・・え、あ・・・委員ちょぉ・・あの・・・。」


太腿に触れる委員長の身体が一気に意味のあるモノだと解ると、あたしは凝り固まった。


「遊佐、お前酔ってる?」

「あ?」

「・・・そーゆー事言うならちゃんと二人の時に言えよ。」

「何でお前にそんな事言われなきゃいけねーの?」

「・・・。」

あたしは二人の間で、手の中のコーラの気泡を見つめるに(とど)まる。



「こんなに人居るとこであかりだって返事なんか出来る訳ないだろ?」

「はっ、あかりの事なら何でも知ってるってツラしてんじゃねーよ。」

委員長の声が段々と音量を上げて、周りがこちらの異変に気付いた。


「そーゆー事言ってるんじゃないだろ?」

薫ちゃんはいたって冷静に委員長に対応している。

激昂している委員長を見ると、中腰になり、あっという間に薫ちゃんの目の前に移動していた。

「お前のモンでもない癖に!」

「あかりの気持ちも考えろって言ってるだけだろ?!」

「お前は解ってるってゆーのかよ!」

「解ってるよ!!」


何時しか薫ちゃんも声を荒げていて、近くに座っていたクラスメイト達が二人を止めに入った。

「オイオイ委員長、どうしちゃったんだよ~。」

「薫ちゃん、どうしちゃった??」

「内堀、なにどうした訳?」

「何でもねぇよ。」

そう答えたのは委員長だった。


委員長は、立ち上がる。

「ごめん、俺帰るわ。・・・あかり悪かったな。」

スパンっと小気味良い襖の閉じられる音。

あたしと薫ちゃんは当事者で取り残される形になった。


楽しかった空気が一変している。

あたしは取り繕おうとして笑おうとしたのに、それも上手くいかなかった。


「あかり、行こう。」


薫ちゃんに腕を掴み上げられ、あたしはヨタヨタと歩き出した。

脱いだコートや持参したバッグは薫ちゃんが掻き集めた。




室内との寒暖の差に身を縮める。

薫ちゃんがあたしにコートを羽織らせた。


「・・りがと・・・。」

薫ちゃんはバツの悪そうな顔を見せる。

「ごめん、嫌な思いさせたね。・・・遊佐の事、もし邪魔したんだとしたら悪い事したよな?」

あたしは頭を振る。


ただ吃驚しただけだ。


委員長とは高校に入学してからの付き合いで同じクラスで、去年は同じ委員会に属してて確かに仲は良かったのだけれど・・・まさか、委員長があたしに友達以上の好意を抱いているとは思ってもみなかった。


あたしは半歩前を歩く薫ちゃんの背中を見た。




きっと薫ちゃんも、あたしが薫ちゃんに永い片想いをしてるなんて夢にも思っていないだろう。










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