(3)
「あ、あたしやっぱりアイスにしよーっと! じゃ薫ちゃん又、学校でね?
朋先輩も又!」
「あ、あかりっ!」
一刻も早くこの場を立ち去りたかった。
けど、薫ちゃんの”友達”としてはきちんとしなければならない。
彼の背中を押したのは、”友達”としてのあたしなんだから。
「ん?」
一生懸命笑って顔を上げる。
薫ちゃんは、本当に何て言葉を発しようか考えあぐねている。
「なになに。どうしたぁ?」
だからあたしは何時もの調子で彼に問い掛ける。
「・・・又、な・・・。」
「あはははは! またな!!」
あたしはブンブンと手を振った。
それからあたしは律儀にアイス売り場でアイスを選んでレジに並んだ。
何だ、そっか。
薫ちゃん、凄い心配な感じだった癖に全然じゃん。
全然良いじゃん。良い雰囲気だったじゃん。
・・・朋先輩だって、薫ちゃんの事好きだったんじゃん。
あたしは走った。
アイスが溶けてしまわないように走って帰った。
***
帰りのショートホームルームが終わって帰り支度を整えていたあたしに声がかかる。
「あかり。」
教室の出入口に背の高い薫ちゃんがひょっこりと顔を出した。
これから部活なのかまっ白いユニフォームを着ていた。
それがやけに眩しくて仕方ない。
「おー何どうしたぁ?」
あたしは鞄を背負い、薫ちゃんの傍に歩み寄る。
彼は右手の指で頭を掻く。
「あー・・・あの昨日のさ。」
室内には未だ誰かしら人が居て、廊下は少し騒がしくて薫ちゃんは話しづらそうだった。
「歩きながら話す?」
あたしは彼の同行を促した。
「これからの対策とか必要?」
あたしはケラケラと笑う。
「え?」
「あ、ほら昨日の見た感じだと良い感じだったし、あたしのアドバイスとか不要そーじゃん。」
「良い感じ?・・・。」
薫ちゃんの立ち止まった気配があったけど、あたしは気付かない振りをした。
暫く歩いてあたしは、横に薫ちゃんが居ない事に気付いた振りをした。
「あれっ! 薫ちゃん!」
振り返ってアハハって笑う。
「・・・。」
「薫ちゃんも両想いみたいで良かったー。あたしが相談受けて振られた人居ないしっ!!」
薫ちゃんは、「だな」って言って小さく笑った。
「部活遅れるよっ!」
視線を逸らしたその先に仲の良い友人を見つけ、あたしはそっちへと逃げ込んだ。
「まぁすみーんっ、一緒帰ろーっっ♪」
ちょっとだけは、許してよ。
何年分の想いだと思ってるの?
今日だけだよ、今日だけだから。
明日は普通に笑う。
明日は普通に”友達”演じれる。
「あかりはクリスマスどーすんのぉ?」
「おうちでパーティーかなぁ。」
「けけっシケテル! 一人モン集めてクリパーしよークリパー!」
「じゃー皆でわーっとやろーよっ!! 楽しいの大好きっっ!!」
朋先輩も、楽しいのが好きな人なんだっけ?
そうだぁ、薫ちゃん言ってた。
『その人』。
その”子”じゃなくて、その”人”。
目上の朋先輩を思い浮かべて、その心中の想いを、届けたい想いを、あたしに吐露した。
「あかり。」
薫ちゃんに呼び止められた。
「そのパーティ、俺も出て良い、かな?」
間違い無く薫ちゃんの台詞だった。




