(2)
「薫ちゃんは、先ずその子に”男”扱いして貰いたいって事ね?」
先程渡したチョコを見つめながら薫ちゃんは頷く。
「二人で会ったりするってのはどぉよ! 今まで二人だけっての無いんでしょ?」
「学校で二人で話す事はあっても外で二人で会った事は無い。」
うーわっ・・・同じ高校ん中なんだ・・・。
せめて他校の野球部のマネージャーとか、他校で塾が一緒とかそんなんにして欲しかった。
「メアドで、取り敢えず誘ってみよーよ。」
「・・・断られたら俺、明日からどんな顔するの?」
「ダメモトダメモト!! そんな事言ってたら何時まで経っても”友達”だよ?!」
・・・ん。
それって、あたしにも当て嵌まる訳だ。
振られるのが怖いから、今の関係を壊したくないから、決して告ったりはしない。
告らなければ”友達”以下にはならない。
「失くしたくないんだ、その人の事。」
あたしの背から射し込む落陽が薫ちゃんの顔を染めている。
橙色になった薫ちゃんの顔は、酷く真面目でその想いがどれ程真摯なのかを物語っていた。
「・・・そっかぁ。じゃあ、こんなのどぉ? 『電話してもいいですか』。」
「電話っ?!」
「ん、電話。もしその子の返事がメールでね『なに?どうしたぁ?』って感じだったら、
残念だけど彼女の中で薫ちゃんは友達。逆に彼女から電話がかかってきたら一歩進めた事に
なると思う。」
「・・・電話、してもいいですか・・・か。」
「そっ、先ずはそこから! その結果次第で次の事考えよ? 次も報酬はチョコで良いぞ?」
あたしは立ち上がり、薫ちゃんの肩をポンと叩いた。
「送ってく。」
そう言い薫ちゃんはあたしの横を歩き始めた。
12月の空気は冷たくて夜が直ぐ其処に在った。
「あかりはさ、人の相談ばっかりだけど誰か好きな奴とか居ないの?」
「んー? 居ないねぇ・・・。居ないのに相談受けてるのもどーよっって感じだよね!」
「ははは、だよなぁ?」
漫画やドラマの世界でなら、薫ちゃんはあたしにメールをくれる・・・。
でもこれは現実で、薫ちゃんはあたしの知ってる誰かに恋をしていて、
薫ちゃんの中のあたしは”友達”でしかなくて、
あたしは薫ちゃんの良き相談相手じゃなくちゃいけない。
その夜、あたしが携帯を手にして眠りに就いたのは誰にも秘密。
翌朝目覚めて、無言の携帯を見つめる。
「馬鹿みたい。」
来る訳無いのに期待して、何度も携帯の電波を確認する。
どー考えたって、圏内なのに。
「あかりー暇ならスーパーに買い物頼まれてよー!」
リビングからママの声。
「”暇”前提なの失礼じゃない?」
結局暇だから頼まれるんだけど。
メモに買うものが記されててあたしはそれを頼りに籠の中に放り込んで行く。
「御駄賃御駄賃。」
と言いながら、あたしはお菓子の陳列棚に足を運ぶ。
冬はチョコレート商品が沢山あってそれだけでテンションが上がる。
先客が居るのに気が付いて視線を上げると、薫ちゃんだった。
昨日の今日で、急過ぎて話し掛けられなかった。
「あかり!」
薫ちゃんが驚きの声を上げる。
その横に肩を並べるおっとりした感じの女の子もあたしの顔を見て微笑む。
「こんにちわ、あかりちゃん。」
「・・・朋先輩・・・。」
薫ちゃんの横に居たのは、野球部の元マネージャーの朋先輩だった。
そぉか・・・そぉか・・・。
薫ちゃんの想い人は、朋先輩だったのか。
「あかりちゃんも買い物?」
「あ、は・・ぃ・・・お使いで・・・勝手にチョコとか買っちゃおうかなぁって・・・。」
-コナキャヨカッタ。
スーパーなんか来なきゃ良かった。
頼まれてた買い物だけ済ませれば良かった。
欲出してチョコなんか見に来なければ良かった。




