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「こんにちわ、あかりちゃん。」

俺の隣に居る朋さんも、あかりの事は顔見知りな訳で挨拶を交わす。

「・・・朋先輩・・・。」


俺の好きな人が朋さんだと今、知ったあかり。

色々、頭の中を逡巡させているらしい。


「あかりちゃんも買い物?」

朋さんが話し掛ける。

「あ、は・・ぃ・・・お使いで・・・勝手にチョコとか買っちゃおうかなぁって・・・。」

目が泳いでる。


きっと”あたし、お邪魔だなー”とか考えてるに違いない。

全然そーゆーんじゃないんだけど、今、既に振られてるからとか言うトコじゃないよな・・・。


「あ、あたしやっぱりアイスにしよーっと! じゃ薫ちゃん又、学校でね?

 朋先輩も又!」

「あ、あかりっ!」

誤解されてると解ってて俺はあかりを呼び止めた。


「ん?」

何時もみたいに接しようとしてくれてるその笑顔を見たら、何か胸が痛んだ。

上手く何かを伝えたかったのに、言葉が出てこなかった。

「なになに。どうしたぁ?」

「・・・又、な・・・。」

「あはははは! またな!!」

あかりがブンブンと手を振った。



彼女の背中が見えなくなると、朋さんが口を開いた。

「あかりちゃんって良いよね、元気いっぱいで。何で野球部のマネージャーに

 ならなかったんだろー? あーんなに試合とか観に来てくれてるのにね?」

「あ、俺高校入る時、誘ったんスよね、マネージャーやらないって? そしたら

 ”遠くから観てる方が良いんだ”って断られました。」

「・・・ん?」

朋さんはのど飴の袋を手に取りながら、俺の顔を見つめた。

「え?」

「・・・あー・・・そうかぁ・・・。そうなんだぁ・・・。」

「え?」

独り言ちる朋さんは目的の商品を手にしてレジに向かう。

「と朋さぁん?」

俺は慌てて自分の菓子パンを選び朋さんの後を追った。


「袋要らないでーす。」

朋さんがレジ打ちのおばちゃんにそう言いながら、財布を開く。

そして俺に言った。


「ね、池内さ、あたしとね、あかりちゃんって何となく似てない?」

「え? あ、あー似てます。」

「やぁーっぱり・・・。あ、おばちゃん、その後ろの菓子パンも一緒にお願いします。」

俺がレジ台の上に乗せておいた菓子パンを指差す朋さん。

「えっ良いっスよ!」

「良いの。」

朋さんの鋭い眼光が俺を貫いた。

「あざーす。」

俺は小さくお礼を言う。


スーパーを出ると、朋さんは「じゃーね」と、まるで告白なんてなかったみたいな調子で帰路を辿った。


失恋って初めてだけど、こんなものなのかな。



あかりにはお礼も言いたいし、月曜日会ったら直接言おう。


そんな事を思っていたのにタイミングを逃して、自分から参加を申し出たクリスマスパーティで俺は自分の中の醜い感情に気付いてしまった。



クリスマスパーティは、あかりと同じクラスの温子ちゃんの家で催された。

1階が居酒屋らしくて、何人かは其処から提供された酒を飲んでやけに盛り上がっていた。


俺は何とかあかりと話そうと彼女の左横に腰を下ろした。


「あかり何飲んでんの?」

男の声がしてそちらに顔を向けると”委員長”と愛称で呼ばれる遊佐があかりの右隣を陣取った。


 -何で俺等の横に来るんだよー・・・。


横座りするあかりの右太腿に遊佐の掻いた胡坐の左膝が微妙に触れている。


 -何であかりは拒否らない訳?


「コーラ。あれ、委員長今日塾って言ってたなかった?」

「イヴだよ? 会いたいでしょ、好きな女の子に。」


遊佐の視線が俺を捉える。


「池内は? 彼女とか居ないの?」

「・・ぁあ・・ん、居ない。」

俺のその返答にあかりが俺を見つめた。


朋先輩は? と目が語っている。


「好きな奴居ないんだったら、俺と付き合わない?」

遊佐の言葉に俺は、口に運び掛けたグラスを止めた。

「・・・え、あ・・・委員ちょぉ・・あの・・・。」

何が起きてるのかイマイチ理解出来ないあかりを見て俺は、遊佐に制止をかける。

「・・・そーゆー事言うならちゃんと二人の時に言えよ。」

「何でお前にそんな事言われなきゃいけねーの?」


何コイツ。

あかりが困ってるの見て解んないの?


あかりを挟んだこんな言い争いをするつもりじゃなかった。

「そーゆー事言ってるんじゃないだろ?」

俺は努めて冷静に遊佐に対応しようとした。


遊佐は俺の目の前に移動してきて凄い剣幕で捲し立てた。

「お前のモンでもない癖に!」

「あかりの気持ちも考えろって言ってるだけだろ?!」

「お前は解ってるってゆーのかよ!」

「解ってるよ!!」




あかりのことなら俺は全部解ってる。









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