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プロローグ
運命之女
孤独な吸血鬼の唯一無二の“花嫁”
幾度となく、巡り会う宿命
細く、白い首から、クロスが引き千切られた。
首に赤い擦り傷が出来る。
「お前、キリシタンか!? 田舎娘の癖に、胸糞悪い奴だ」
男が部屋の隅っこにクロスを投げ捨てた。古びた畳の上に十字架が転がる。男は女を強引に組み敷いて、女の着物の裾を割り、力尽くで貞操を奪おうとする。
「嫌だ、助けて」
女は死に物狂いで抵抗した。
残酷で卑劣な男に処女を奪われてたまるものか。女は着物の袖の袂から糸切りバサミを取り出すと、男の肩めがけて振り下ろす。
「ぎゃっ!」
男が肩を押さえて喚いた。指の間から鮮血が滴り落ちる。女は隙を突いて、逃げ出した。
黄昏時。冷たい雨が降る。
女はからだ一つで、行く当て所なく駆け出していた。