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Drused Race  作者: 鈴生
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 いつしか、リュカのしゃくりあげる声は止んでいた。2つのグラスに入れられていた氷は、とっくに溶けきってしまっていた。溜息を、一つつく。彼女の肩が、びくりと震える。ああ、違う、怯えさせたかったわけではない。それを、伝えなければ。

「…怒ってるんじゃ、ない。」

 彼女が、詰めていた息を吐き出すのが見えた。

「…父さんのことも、イズモさんのことも、別に、怒ってない。この前の、レースのことも。全部。」

 彼女は、自分で、自分を、断罪したのだ。これ以上、責める理由も、必要も、どこにもない。


 私は、トカラの娘。()()()だ。その事実は、覆らない。父さんが、トカラが、リュカの父親であるイズモさんに憧れていたことも、変わらない。イズモさんの副運転手になりたかったであろうことも、嘘じゃない。それでも、父さんには、主運転手(メイナー)の才能があって、憧れていたイズモさんの運転をして、伝説に成り上がった。全部、作り話でも何でもない、まっさらな事実だった。

 でも、もう、私は()()()じゃない。父さんの跡を継いでいくだけの()()()は、もういない。

 私は、()()()なのだ。


「リュカ」

 彼女の顔が、弾かれたように上げられる。頬に涙の跡がくっきりと残っていた。

「私は、()()()じゃ、ない。」

 その言葉に、リュカは、はっとしたような表情を浮かべた。

「私は、トカラの夢を、追う。」

 これは、宣言だ。(ヤクモ)は、(セイカ)として、これからを生きていくのだ。

「リュカは、どうする。」

 彼女の決断が、必要だった。



 リュカの視線が、揺れる。か細い意志を湛えた両の瞳の奥で、何かが揺らめいて、煌めいて見えた。

 あれは、躊躇だ。恐怖だ。憎悪だ。卑下だ。そして、葛藤だ。

 彼女の瞼がゆっくりと降りて、睫毛が震えた。目尻に溜まった涙が、一粒だけ零れ落ちた。

 瞼がまた少し震えて、持ち上がる。

 その瞳は、真っ直ぐに、私の両目を、見据えていた。

「イズモを、追う。あの、王座を、奪い取る。ウチの、手で。」

 言葉は、もう、震えていなかった。


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