表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Drused Race  作者: 鈴生
14/30

14

 バディを組むと決めて最初に話し合ったのは、機体(マシン)についてだった。リュカが今日のレースで運転していたノア600は、エンジン部分を丸ごと交換することになったそうだ。

 先ほどまでのしおらしさはどこへやら、彼女の声はいつものように甲高くなった。

「うちのノア、今まであんなことなかったのに!!絶対今日の整備士(メカニック)がなんかした!!最っ悪、まじで!!」

「自分で整備(メンテ)、しないんですか?」

 ずっと疑問に思っていたことだ。最初にノア600に乗せてもらったときもそうだったが、彼女が整備をした様子は見受けられなかった。

 小首を傾げた彼女が、不思議そうにこちらを見る。

「するわけないでしょ?レーサーがそんなこと。ウチ、今まで整備とレーサー同時にやったことないし!」

 あまりにも当然のように言い切るので、二の句が継げなかった。そんなことがあっていいのか。レーサーたるもの、自分の機体くらい、自分で整備したがるものではないのか。

「あ、でもでも、オフィシャルにいたときは彼氏がたまにしてたよ?今日はしなかったけどさあ」

 つまり、リュカ自身が機体に触れる時間はほぼ無いという意味だ。不安にならないのだろうか。それに、今何と言った?今日の副運転手(ツイン)は、オフィシャル時代からのバディである彼氏だったのか?

「……ほんとに私と組む必要あります?」

 今日の連携を見せられて、そう思わないわけがなかった。あれだけ息が合っているのだ。多少副運転手が遅れる瞬間はあったが、誤差範囲だ。ドルーズドではあのくらい普通だ。

「あるに決まってんじゃん!!彼氏もいいけど、あんなに遅れるってオフィシャルじゃ失格だし!!」

 あれで失格扱いか。レギュレーションはコックピットのずれまで規定しているのか。

「あとアンタ整備好きでしょ?今日のあれ味わったら、やっぱバディに任せたいなって。あと、アンタ隣にいると(オイル)の匂いするし。今はしないけど。普段ちゃんと風呂入ってんの?」

「余計なお世話なんですけど。」

 口にする気はなかったが、内心では抑えきれなかった。確かに整備は好きだ。あちこち改造するのも、調子が悪そうなところを修理するのも楽しい。予定がなくて手元に機体がある日は、日がな一日機体を弄っている。何もしなくていいのなら、寝食を抜いて整備とレースに明け暮れたいくらいだ。

「レース前に整備するんです。その匂いでしょう。……で、どうするんですか。機体。」

 いちいち挑発的な物言いをするリュカに乗せられてしまっては、話が進まなくなる。ノア600がない今、私たちに運転できる機体はない。

「家に、カイン1300がある、けど……」

 彼女の歯切れが悪い。何かあるのだろうか。

「ボロいから嫌いなんだよね、ウチ、あれ。」

 その程度のことか。乗れればなんだって楽しいのに、選り好みをするなんてやはりエリート上がりなだけある。

「乗れればいいでしょう。次はそれで出場するんですね。整備は私がします。会場に前日入りして機体持ってきてください。カインシリーズなら、整備キット揃えてあるので。」

 左手の腕時計に視線を落とす。結構な時間が経っていた。夕飯が遅くなってしまう。

「え?アンタ自分でキット持ってんの!?マジでオタクじゃん!!」

 自分でしないからって好き勝手言いやがって。

「いい加減にしろ。私は帰る」

 心底呆れた視線を投げかけて、座りっぱなしだった椅子から立ち上がる。腰が痛い。厭味ったらしく告げてやる。

「じゃあ、また次のレースで。出場枠はこちらで取ります。では失礼します。」

 軽く会釈をして、控え室(ロッカールーム)の出口の扉に向かう。重いドアノブを捻る。

「えちょっと待ってウチだけ置いてくつもり!??」

 やかましい彼女がバタバタと足音を立てて追ってきた。

 溜息をついて、彼女を先に部屋から出す。

 ガチャリ、と背中で扉が閉まった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ