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7 元2-A副島剣太

これ以上生徒にそのジト目でみられつづけるのは精神的にきついものだ……。

すこし観念した不黒文は、特別措置としてピネスに召喚した彼らと思うように接触することを許した。



立ち並ぶゾンビ肌の若者たち。

校長がその異能で使役する4人の中のひとり、これまでダンジョンを共にした赤い表紙の薄い本、その本当の持ち主は突然それを広げてみせた。


宙に浮かぶ白紙のページに男子ふたりの語りたい思いが、今語られていく。


⬜︎タコイカ学習帳

ごめん俺ずっとお前のこと卓球部のフクジマだと思ってた…


気にするな浦木幸(うらきぴねす)、ソエなんて読ませる方がおかしな日本語なんだから。そうなるとは想像連想できない例外の珍しい読みはなるべくなくした方がいいだろう。まぁソエジマは比較的メジャーではある全国に10000人はいる姓だがな。ちなみに幸→ハピネス→ぴねす、お前の名前は一般人が想像連想できる読みの範囲だから世間はなしでも個人的にシンプルにまとまっていてアリだ。最近ではキラキラネームなどと揶揄されることもあるが、実は大昔からキラキラネームなるものはある俺の調べた限り明治時代から多く存在しており昔の方が家庭裁判所へのキラキ────


あぁ、それもそうだな卓球部のソエジマ


ちなみに卓球部じゃないんだただの書記の帰宅部だ、名前よりそっちをたのむ浦木幸。


あぁ完全にわかった書記のソエジマ! そういやこのタコイカ学習帳は? ずっと副島しか情報提供者がいなかったんだが


それは俺の発現した異能その名も〝書記〟だ。提供した情報がしょぼかったのはまだ異能のコントロールに慣れてはいなかったからだ。今はこうして自由自在だがな。常々思っていた書くという長らく付き合うことになる行為を喋ることや思うことで完全代用できたらいいのにと。鉛筆を手に取り書くという段階を飛ばす、そうすれば学生たちの仕事の9割である勉学授業ノートを取るという作業効率や意欲が著しく上がるものだと思わないか。あと中川、細川、三河は話をきいたところダンジョンにて発現した異能が思ったようにふるわず逆に裏目に出てゴブリンにやられた。どうも気をつけた方がいいらしいぞ。中川なんかは異能浮遊でぷかぷか中途半端に浮いて不恰好に身動きが取れなくなってしまったところを滅多刺しに────


え、やっぱりあいつらゴブリンにやられちゃったのかよ!

って異能がふるわず中川がぷかぷかってぇ……まぁゴブリンは全然油断できる強さじゃなかったしそりゃ気の毒なやられ方だな…俺も気をつけよう。(ちょっと見てみたい)

でっででで、ソエジマの異能がこのダンジョンについて来てくれたタコイカ学習帳? へぇーなるほど、それで情報があんなふわふわな感じだったのか。たしかにこうして念じて書ける…しかも筆談ってのか? できるのは便利だなーでもスマホで音声なんたらとかあるじゃん、アレつかったら


音声認識自動入力か? あれはラグもあり正確さにかける、あと声のボリュームを上げるとなると恥ずかしい女子もいるだろう使える時と場所が限定されるだろう、それにまだ万人の声の訛りなどを正しく読み取れないものだ。

あと致命的な欠点がひとつあるぞ、固有名詞をなかなか認識しないのでかえって手で記述するよりも遅くなるというヤツだ。固有名詞を登録するカスタムできるものもあるがソレも敷居が高く面倒なものであり融通のきかない代物だった。あぁだから音声認識率100%を目指すのが音声認識の界隈における一大目標らしい。

それでだ、話はもどるが書記である俺はあくまで学生たちが普段幾度もするノートに書くという日常行為を声や念で代用し学生生活がより円滑でスマートになることを密かに願っていた。どこかの発明家のような不自由をちょっと便利にしてみたいというただそれだけのささやかな願いであったんだろう。しかし思ったよりもこの異能書記の能力は広い意味で今は使えたものだからおもしろい。さっきのような戦闘ログをリアルタイムで自動記述できるのは雑記俯瞰モードといいまさに神の


ソエジマ、ソレ、もしかして長いぃ?(あと30行ぐらいいきそうな勢いだぞ)


すまない浦木、(丁度あと30行ぐらいを予定していた、フッ)そうだな枝葉であるそんな事よりもお前に伝えたいことがあった。


俺に?


あぁ…まずはじめに不黒文校長先生の色香にノセられてダンジョンに挑み敗れた俺たちブク高の男子生徒4人は実は死んでいるが死んでいない。サンカワ衆の中川、細川、三河も俺も詳しくは言えないがその魂と写し身を安全な場所にストックされてこちらはこちらで毎日珍しい書物を読ませてもらったり地上にはない見聞を広めよろしく優雅にやっている。


?? なに? どゆこと? 今タコイカで喋ってるのは? え???


それは不黒文校長の操る俺の、俺たちの抜け殻であり記憶だ。思い入れのある抜け殻を通じて浦木お前に俺副島は今遠隔から異能書記を用いて語りかけている。(何か一時的に魔力パスがひらき繋がったのかもしれないな?)ほらそういう意味では似た有名なミイラを知っているか、アレは死者の面影をなんらかの形で現世にとどめ人々が彼を偲ぶ意味もあるが、実はある地方では権力者の魂の未来帰還のために肉体を腐らせず取りおいておく意味もある。そうだ、それと日本にもミイラがあるのをしっ


なんかわかんねーけど、おっ、おぅ? ミイラか、それなら分かりそう?


そうだ。ここまではいいか? つぎに、だから不黒文校長の事はあまり責めないでやってくれ、おそらくスペシャルな異能に目覚めた校長はこう考えた。

①俺たち男子生徒をダンジョンへ挑むよう甘言とそのミステリアスな魅惑で誘い、自分の異能死体操作これを仮にネクロマンシーとする、を強化するための生贄(駒)とした。


②死んだ俺たちが特例でたとえば何人かまで安全な場に避難できることを事前に知っていた。もしくはやんごとなき人智を超えた存在となにか契約の類をしていたので躊躇がなかった。詳しくは言えないが、俺たち4人はそこで悪くない待遇にある。


③一般的、共通認識としてネクロマンシーの能力は死者を操るor復活させる強力なモノが多い闇の能力、そして操れるのは死者の体だけではない。そう俺たちの異能を自分に集中し集めることで、ダンジョン攻略の最適解を導き出そうとしていた。(死者は恐れのない兵士という、ゴブリンやミノタウルスにヤラれた男子生徒4人より戦力になるのは明らかだ)


④不黒高等学校の最高責任者、校長である自分が生徒たちを危険なダンジョンに挑ませるわけにはいかない=ネクロマンシーを用いて自分だけでダンジョンを攻略し生きてゆくために不可欠な食料や水を手に入れる。そしてゆくゆくこの断片的な世界からの脱出の手がかりをダンジョン内で見つけ生徒たち用務員含め全員でここを脱出する。(男子生徒4人の復活の手がかりにも何かあたりをつけている? おそらく特殊な異能ネクロマンシーが鍵なんだろう)


⑤つまり不黒文校長は生きている生徒をできるだけこの辛い閉鎖環境で苦しませたくはない。だから俺やサンカワ衆に男子高生としてありったけの淫靡な希望と欲望をもたせ魔のダンジョンに挑ませた、そんなブク高のお茶目でクールな校長だ。


そーかなるほど……ってなるか!!いや待て待てソエジマ?? てか長文すぎて俺おまえの言ってることの半分のはんぶんも──


お前はあまりアレコレ無駄に考えるタイプではないが俺より強い。校長をブク高のみんな緒方さんのことをたのんだ浦木幸


え、えぇ……わぁ…わかったソエジマ。(緒方さん?)


フッ。そういえば初めて話したな。俺はお前とまた学校で今度は筆談ではなく机を合わせて話せる時がくればいいと今は願う。それとこれからのお前の快進撃冒険のログをこっそり覗くのは──少しこちら側の楽しみになっているぞ。



《俺とお前のひみつの筆談(ちなみに浦木は全国におよそ1200人、副島よりもマイナーだ)》


元2-A 副島剣太(そえじまけんた)

⬜︎



念じた書き文字のやり取りはミエナイ消しゴムに消されたように削り失せ、

ページをぱらららと勢いよく捲られ、赤い表紙はひとりでに閉じられた。


血色の悪い副島が目の前のそこに変わらずいて、それは副島であって副島ではない抜け殻。

言いたいことを記し告げてホンモノの副島がその安全などこかの星へと帰っていったのがなんとなくピネスにはわかった。



不思議なふれあいの時間はおわり──


ダンジョン大部屋の隅っこからとぼとぼと寂しげな足音をたてて、その話題の人は近づいてきた。



「その…なんだぁピネスくん、キミのぉ、後ろに今い──」


「フクジマじゃなくてソエジマだったんすよねぇ……あいつの名前、ははははいちまんにん俺って1200人ぽっちかよ。え、今こーちょー何か言いました?」


副島の抜け殻を見つめていたピネスは少し笑ったようすで振り返る。

予想とはちがった生徒の反応をみて驚き顔をつくった校長は頭をかきながらごまかした。


「いやっ、なんでもないが……そのぉーピネスくんは現在いま~私のことを一体全体どう思っているのかな~~なんて?」


「えどう思っているって? あぁったしか…………ただひとりの校長先生ですよね? 俺の」


すこし間を置いて顎に手をやり考えて出てきた生徒の言葉は、誰かがその生徒に言った言葉。

校長はぶわり……トツゼンのそよ風に吹かれたように、心をきゅんと撫でられ口をぽっかりと開けたままかたまった。


「な、なるほどぉーー。そ、それはぁーー私がぁ……言ったなぁーーはっは!!! そうだそうだともキミのただひとりの校長先生とは、私不黒文人呼んでブクロのふぅーちゃんのことだぁー!!! ところでキミは今怒ってないかピネスくん? ほらなにぶん刺激的な異能をつかうものだろ私、校長は」


「え怒るもなにも、俺ぇ…なんどか目を凝らして脳を回転させて頑張ったんすけどぉ…こいつらの顔と名前未だしっくり一致しないんすよねぇ……。むしろ死んでからちょっとした友達になったようで? それってありっすかね」


「ぴ、ピネスくんキミはぁ…それはまた刺激的な友達かな? んっんっごほん! ──そのメガネのスマートくんは副島、なかなか仕事のできるかつユーモアもある私のブク高における模範的ないいやつで。で授業中後ろ向いて喋り顔のこれが中川、柴犬みたいな目をしたのが細川、余ったのが三河、ちがったこっちが細川でこっちが中川か? ふはははははとにかくサンカワ衆のモテないお馬鹿男子どもで────」



4人の死者たち男子生徒たちを得意げに紹介する不黒文校長、傍から見ればそれは狂気の類。

しかし浦木幸はそんな校長を見て笑う。

やはりブク高のスペシャルな校長、まだまだ理解は及ばないがとりあえず楽しそうな雰囲気に彼は彼女といっしょに笑っていた。

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