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5 はじめてのクリティカル

⬜︎タコイカ学習帳

ピネスはゴブリンの喉元を一突きで貫いた。

ピネスは振りかぶり叩きつけられたコボルトの棍棒ごと斬り裂き、立つ獣をそのまま鮮やかな袈裟斬りにした。

《不黒ダンジョン13F石のつうろ》


校長:

シールド値90%

魔力量75%(悪魔の片眼により自然魔力回復力UP)


ピネス:

シールド値94%

魔力量41%

⬜︎




「ピネスくんキミはほんとに体育3かな?」


「校長、体育の成績は関係ないってまえに送り出すとき言ってましたよね?」


「なっはっは、上手いこと言うな。まあまぁそのなんだ、良い動きをするからびっくりしたのだよ、キミの校長である私は」


「そーすか? 上手いことの意味はちょっと分かりませんが…あざっす。あぁーっと、たぶんこいつらモンスターっすから容赦はいらないからかと? ようは、こいつらが殺しにくるように俺も殺せばいいんすよね? そうすると勝手にカラダがいい感じに動くというか」


モンスターをたった今臆せず斬り裂いた緋色のショートソードを片手に……黒ブレザーの不黒高校の一員である彼の背は振り返る。

いたって真顔フツウの顔で彼は後ろに控えていた校長へと、自分がどういう心持ちで敵を斬り動いたのかの説明をした。


「殺しにくるから殺すか……それはそうでありひとつ真実的でひじょーに正解だが、なんか怖いぞキミ。本当にあのすぐおっぱいに視線がいきがちな可愛い私のピネスくんなのかい? それとどちらかというとここまで殺しにうかがいに行ってるのはダンジョンにお邪魔している我々の方とも言えるぞ。まぁピネスくんがそれで動けるならキミの考えを尊重し、ここはダンジョンだあまり深く考える必要もなくこの調子でモンスターを倒しガンガン進めばいいと思うぞ。単純に男の子っぽく、冒険っぽくな!」


「単純に男の子っぽく…冒険っぽく? …なるほどそういうのも……え、おっぱ??」


ピネスは校長の胸元服越しの豊かさを見、対面する校長はあっち向いてホイ! と突然上を指差し遊びだした。


上を見ながらやがて器用に瞳孔は下を見る。不思議な魅力と魔力と豊かさに視線が引き寄せられてしまうのは……男子としてのサガであると思われる。

戯れを終えたピネスと校長の2人はアイテムを回収しダンジョンのさらに先へと進んで行った。






▼▼▼

▽▽▽






⬜︎タコイカ学習帳

ゴブリンビッグシャーマンナイトは再度ゴブリンを召喚した。


ゴブリンA、ゴブリンB、ゴブリンC、ゴブリンD、ゴブリンE~Gはするどい爪牙を剥き出しに前衛のピネスへと襲いかかった。


不黒校長はゴブリンビッグシャーマンナイトに刺股ダブル改から魔法のガトリング弾をお見舞いするも、やはり魔法耐性が高いのか決定打には到底至らず。


ゴブリンビッグシャーマンナイトは中断された魔力の練り上げを剣に込めて再開した。2人の生命を保護するシールド値に被害を与えた魔法【ゴブリンサンダー】をまた発動するつもりだ。



《不黒ダンジョン20Fゴブリンビッグシャーマンナイトの大部屋》



校長:

シールド値63%

魔力量47%(悪魔の片眼により自然魔力回復力UP)


ピネス:

シールド値44%

魔力量53%

⬜︎




不黒ダンジョン20F、さしかかったボス部屋での戦闘は10Fのミノたのときのような一方的なボーナスステージではなく、部屋へと閉じ込められ今もなお破茶滅茶と続いていた。


そして命を賭けたバトルの最中に、2人はあるゲームなどでありふれたシステムについて言い争っていた。


「だからァァクリティカルってどうやって出すんですかぁー!?」


「何を言っている今までも出していただろ! クリティカルだ! 私のこしらえたクリティカルビルドに間違いはない」


「いや俺フツウにコボルトとかゴブリン斬って刺してただけなんですけどなんか勘違いしてませんかぁー! って、だから敵多いって!?」


「ふむむLuck値の異常に高いと思われるピネスくんのクリティカルがここまで出ないのは予想外の計算外だ……仕方ないな…よしっ」



【私の青春半分はヤツの灰色、愛しき死者を操るは秘められし灰色の眼】



プラチナ髪にひそめた眼帯は開かれ、秘められし灰色の眼が今、露わになる。


ぶつぶつと唱えた言葉と共に一気に増幅した魔力の旗印に、愛しき死者たちは忽然とあらわれ呼応する。


⬜︎タコイカ学習帳

不黒文校長は悪魔の眼を解放し使役している中川、細川、三河、副島を召喚した。


中川:

異能 浮遊


細川:

異能 波動


三河:

異能 カリスマ


副島:

異能 書記

⬜︎


「な、なんだぁ!?」


中川、細川、三河、副島はピネスの前へと躍り出て、彼を攻撃せんゴブリンの群れを食い止めた。


「数の差は私が使役する召喚獣で埋める。遠くからの魔法はあまり効かないとなると後はキミがあのシャーマンにクリティカルを決めるだけだピネスくん」


「いやっえっ?? 召喚獣?? どゆこと、これは一体??」


目の前で戦う人型の召喚獣とはなんなのか。肌色は血色悪く服の背はボロボロだがどことなく見覚えのあるフォルムに、ピネスは困惑した。


「大丈夫、キミはちょーツいてる!!! これ以上緑のゴブリン共とぐだぐだ長くやっていても埒が開かないと判断した。雑魚はこーちょーせんせーが引き受けるっいきたまえ」


校長は寄るゴブリンたちを引き受け、後ろに剣を翳し控える魔法耐性の高いゴブリンビッグシャーマンナイトをクリティカルを決め討ち取るようにピネス生徒につよく命じた。


「ッ──はぁ…次から次へと情報が多すぎてさぁ、とにかく俺がツいてりゃいいんでしょーー!!!」


奮闘する4人の召喚獣たちとゴブリン群をありがたくすり抜け、ピネスはゴブリンビッグシャーマンナイトの巨躯を目指して意を決して駆け抜けた。


「あぁ、ゆきたまえッ!」



GBシャーマンナイトは再びゴブリンを2体召喚。

迫り来るピネスに対して自分を守るように2体を左右から挟撃するように向かわせた。


首を狙われたボスは狡猾にも無理してか召喚できるゴブリンの頭数の上限を隠していたのだ。


そしてGBシャーマンナイトの召喚するゴブリンはそれほど雑魚ではない。ピネスの一振り一撃では簡単には仕留められない程の強度を誇り、魔法【ゴブリンサンダー】の魔力を練り上げるまでの時間稼ぎには十分な駒であった。


敵と味方、差し迫る距離に勝負するコマンドは選ばれる。


バチバチと雷属性を帯びていくボスの剣に、企み舐めずる青いゴブリン舌。


左右から彼に迫る緑の餓鬼など────


冷たい地を強く蹴りステップする普通スニーカー、赤熱する緋色の剣は瞬く間に、2体の間をスピードを上げて追い越した。


横薙ぎ一閃。

断面鮮やかな緑の胴と下のパーツをあわせて4つ……バラバラと短い断末魔とともに彼の背方に落ちていく。



⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎

▽用務員室▽……


その陽気でおかしくウブなそよ風は、ダンジョン遥か彼方からこじんまりとした用務員室で眠る彼女の元へと────。


「そうだイケイケぇ~~制圧だぁーふわっ!? だれだぁ~…私の夢にかてにそんな風ふかせはいりこんでぇ~ふふぅそれがきみの陽気かむにゃむぅ…へへ……たてなみとよこにゃみ…陽気を極めればこれすなわち陽術となり陰術をも飲み込みりようしあいてはうちがわからしぬぅーー……ぐぅーーzzz」


怪言をのこし、彼女は眠った。

⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎



ゴブリン2匹をその剣一太刀で撫で滅した。奇妙で心地良い感覚を浴びながら、黒いブレザー背の勢いは風を切り止まらない。ただ敵を夢中で滅して、前へと向かいつづけている。



(えさっきのがイチゲキ? 手ごたえ…訳わかんねぇ? アレがクリティカル??)



迫る、

迫り走る、

クリティカルなどという怪奇現象を浦木幸は知りもしない。


ただ今を懸命に走りたどり着いたときには、


緋色に熱くなるその溜めた刃。敵を斬り裂いたそれが、どれだけのチカラを秘めたものなのか完全に分かっていた。


今にも向かって来ているちいさな敵の進行を阻止できず迫られたため、ボスは大剣に溜め込んだ魔力をさらに練り上げる行為を急遽切り上げた。

そしてデカいゴブリンが天に祈るように掲げた大剣から不完全な雷撃が放たれた。


しかし今の彼のその身に浴びせられても、その青雷のマジックは期待感に満ちた緋色にはかなわない。

熱い切先が襲う雷を跳ね除け、僅かにその身が痺れるばかり。


この疾る剣にはそんな陰気な雷マジックをも上回る陽気な質が込められてある。

敵を屠り、雷撃を弾き、握りしめる強大な味方をその手に育ち得たピネスはもう確信する。


「【そうかッ…クリティカル破壊力235%】!!! そんでおまけに【こうだろっ運も何も燃え尽くせええバーンファイア】!!!」


解き放たれん確信のイチゲキは、GBシャーマンナイトの地を引っ掻く最後の必死の太刀筋を避けて、ドキドキと高鳴る一瞬と一瞬のシチュエーションの最中に臆せず敵の心臓に飛び込んだ。


巨躯のゴブリンに跳躍しその鉄鎧ごとを貫いた緋色の剣の切先は、ただ急所を刺すだけのクリティカルなイチゲキにとどまらない。


巨躯の胸元を嘲笑うように踏みつけた普通のスニーカーの両足は遠のく。

貫いたままのショートソードをそこに残して……黒いブレザー姿の男子は勇ましく敵に背を向け地へと着地した。


突き刺さった胸元はバチバチと魔力高鳴り、鮮やかな緋色に爆発する。


発動した魔法は内部から焼き尽くし爆ぜる炎の魔法。


緋色の幸福なショートソードに込められたささやかなマジナイを掘り起こし、起爆した。



緑鎧の巨躯は握る手もない大剣をからりとその地に落とし、粉微塵に倒れ。

使役されていたゴブリンたちはボスの死に呼応するように死に絶える。


「俺はちょーーツいてる浦木幸だ! ハッ、燃え尽きるほどの運の尽きだなっあばよっバケもん!! はぁっはぁっ……」


味わうように相手に振り返り、彼は特に決まっていないキメ台詞を即興でくみたて剥き出しの感情のままに叫ぶ。


そんな男子生徒の任務を遂げ急成長をとげた炎にたたずむその勇ましい背姿を、


「はははピネスくん……キミは、今……過去最高にかっこいいぞぉ? んーーー? ふふ…ふふふふはっはっはーーー!!!」


──見つめた校長は剣一本と持ち前のLuck値のみでやってのけたひとりの生徒を褒め称え、目の先に広がる緋色に爆する光景にシャウトした。



生き残った校長の使役する召喚獣副島の異能書記は発動し、ピネスの勇姿をその赤表紙のノートに自動記述記録する。




⬜︎タコイカ学習帳

浦木幸の魂のイチゲキ!!!

クリティカル技【バーンファイア】は見事炸裂!!!


〝大敵ゴブリンビッグシャーマンナイト討伐完了〟


《不黒ダンジョン20FGBシャーマンナイトの大部屋》

⬜︎

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