お花探し 3
ララと一緒にいくつかの薬草屋を回ったが、「マルズの花」を見つけることはできなかった。どの店でも「ここ一年ほどは入荷していない」と言われるばかりで、そもそも自家栽培ができない希少な花だということもわかった。自然に自生しているものしか手に入らないらしい。他の店でも、最初の店と同じように、収穫できそうな場所を聞いてみたが、情報はすべてラーヌ地方で一番大きな湖の周辺に集中していた。
宿に戻った途端、ララはソファに倒れ込むようにして眠ってしまった。彼女が無防備に眠る姿を見ていると、自然と微笑んでしまう。俺はそっと彼女を抱き上げ、ベッドまで運んでやった。軽い体がふわっと腕に乗り、彼女の寝顔は本当に無垢そのものだ。
「ララの笑顔が見られないと、なんだか自分まで悲しくなるな…」
僕はそう思いながら、彼女の額にかかる髪を優しく払いのけた。
その瞬間、彼女の髪のふわふわした感触が心地よくて、つい触ってしまう。
その瞬間、背後にミイの視線を感じて慌てて部屋を出た。
今に戻ると、もう一度薬草屋で集めた情報を書き留めたメモを見直した。
花が見つけられそうな場所を頭にたたきこむ。
絶対に花を見つけて、ララの笑顔を見たい。
その一心で地図とメモとにらめっこし続けた。
次の日の朝、ララは元気な顔で朝食の場所に現れた。
昨日の落ち込みはすっかり消えていて、目をキラキラと輝かせながらやる気満々だ。
「今日は絶対に見つける!あの花、必ず手に入れるんだから!」
彼女が元気を取り戻しているのを見て、僕も自然と笑みがこぼれる。
前向きなララが可愛すぎて、こちらまで力が湧いてくる。
「その意気だね。でも今日は少し足場が悪いから、動きやすい服にしといたほうがいいな」
ララは素直に頷き、ミイが木の枝に髪が巻き込まれないようにと編み込んでくれた髪に帽子をのせて、ミイが用意してくれた一番動きやすいシンプルなブーツとワンピース姿に着替えて出てきた。帽子を被った姿もとても似合っている。
シンプルな服装でも、ララはまるで天使みたいにかわいい。
どんな服でも似合ってしまうララは罪な存在だとすら感じた。
馬車に乗り込んで、僕たちは昨日のうちに現地の屋敷の者があらかじめ手配してくれた案内人と一緒に湖を目指した。案内人のおじさんはラウス周辺の地形に詳しく、俺たちを湖へ案内している間も、ラウスのことについていろいろと教えてくれた。
「この辺は、見ての通り治安もよく、食べ物もおいしくて住みやすいんですわ。
そのおかげか最近住みつく人が増えて、人口が2倍くらいになったそうです。
観光者も増えたおかげで観光業も儲かってみんな嬉しそうですわ。」
と笑っていた。
馬車が道を進んでいると、案内人のおじさんが興味深そうに話しかけてきた。
「でも観光客の方がこんな街の片隅というか
もはや山の入口に来るなんてめったにありませんよ。
私もこの湖の近くに案内するのは2,3年ぶりですわ。
何か目的がおありで?」
僕ははちらっとララに視線を向けながら、答えた。
「マルズの花を探してるんです。喉の痛みに効く花だって聞いて…」
すると、案内人のおじさんは少し驚いた様子で、懐かしそうな表情を浮かべた。
「ああ、その花か。うちの娘もその花のおかげで助かったことがあるんですよ。のどの痛みが原因で高熱が一週間続いていたんですが、長年馴染みの薬草師がその花を使った薬を特別に分けてくれたおかげで一日で治ったんですよ。本当に助かりましたよ」
その話を聞くと、ララはすぐに案内人のおじさんにいくつか質問をし始めた。
好奇心が顔に現れていて、目がキラキラ輝いている。
「その花って、どんな見た目なんですか?匂いは?薬にしたらどんな味がするんですか?」
案内人のおじさんは笑いながら答えてくれた。
「白くて小さい花で、葉っぱは細長い。
匂いはほとんどなくて、薬にすると少し苦いらしいけど、
娘は一口飲んだだけでスッと喉の痛みと熱が引いたよ。」
俺はそんなララの様子を見て、自然と微笑んだ。
ララが夢中になる姿を見ていると、何だがこっちまでわくわくしてくる。
「やっぱりすごい薬草なのね!見つけたらおじさんにも分けてあげる!」
とララが勢いよくいうと、
案内人のおじさんは優しく頷いて、感謝の意を表してくれた。
「お嬢様はお優しいですね。ありがとうございます」
馬車が1時間ほど揺れながら進むと、やがて湖のほとりに到着した。
ものすごく大きな湖で、対岸が見えなかった。
ララはもう湖周辺に生えている草花をみるのに夢中だ。
「ここなら、きっと見つかるよ!」
ララは期待に胸を膨らませ、すぐに湖畔の花々を見渡し始めた。
その姿を見ながら、僕は心の中でお願いだから見つかってくれと祈った。
「さあ、始めようか」
そう言って僕もララに続いて花を探し始めた。
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