2度めの訓練
3月23日。ひまりと美織は訓練に参加した。2人は更衣室で体操服とブルマーに着替えた。オーバーニーソックスはひまりがブルー。美織がボルドー。ひまりはハルク。美織はビリーと組んで柔軟体操を始めた。ひまりたちは女子校育ちで男の子に免疫がない。彼らとの柔軟体操はデートみたいなものだ。ハルクたちからはすっごくいい香りがする。「ねえハルク、あなたたちはどんな香水付けてるの?」「ミルカがふだん愛用する香水さ」「そ、そうなの?」「彼女たちの香水は実は強力な催淫剤さ」「さ、催淫剤?」「実戦で魔法戦士に性的な訓練を施すために使われるんだ」「そ、即効性はあるのかしら?」「即効性はないが、地味に効く」「そ、そうなんだ」彼らに悪意はない。あくまでもひまりたちを催淫剤に慣らすのが目的だ。柔軟体操が股割りに差し掛かると2人は徐々に性的な興奮を覚えるようになっていった。かと言って理性が吹っ飛ぶレベルではないが、真綿で首を絞められているかのようにジワジワ効いてくる。す、すっごい。ひまりたちはみるみるうちに下着が湿り気を帯びていった。ば、バレたらどうしよう。しかも2人は下着の替えを用意していなかった。幸いにも教官たちは見て見ぬフリをしてくれた。休憩に入るとひまりたちはトイレで用を足し、下着を脱いだ。下着はあそこのよだれで納豆が糸を引いた状態にされていた。やむなく2人はノーパンで訓練に臨むことになった。しかもひまりたちはノーブラだ。つ、次からは替えの下着がいるわ。前回は短い柔軟体操だったから全然気づかなかった。休憩が終わると2人は白のブーツを履かされた。実際に魔法戦士が身にまとう白のブーツだ。ブーツは軽くて通気性に優れ、柔らかい。ムレないし、サイズがぴったり。履き心地がいい。ひまりたちはサンドバッグを使ってキックを練習した。初めにハルクたちが見本を見せてくれたが、可愛い教え子の前でいいところを見せようとしたせいか、スネのあたりに違和感を覚えて実技指導をあきらめた。2人はキックを繰り出したが、サンドバッグがとにかく重い。こ、こんなキックでミルカに勝てるの?ひまりたちはローキックに特化した。魔法戦士はミニスカートタイプのコスチュームを身にまとうのが定番だからローキックを繰り出しても恥じらいがない。だからキレはないが、ハイキックは繰り出すたびに恥じらいを強くされるからあまり長くは続けられないのだ。なので魔法戦士はローキックとハイキックのコンビネーションを磨かなければならなかった。帰宅した2人はクタクタ。お風呂にも入らずに寝落ちした。熱いシャワーを浴びて軽い夕食を済ませるとひまりたちはハルクたちの動画をチェックした。彼らは何を思ったのか心霊系ユーチューバーを目指すことにしたようだ。やはり街コン30連敗が響いたのか?初めての心霊系の動画は三重の廃屋。確か料亭か何か店をやっていたようだが、一家心中したという噂がある。ダラシメンが何度か撮影に来たが、かなり怖い場所だ。ひまりたちはお化けが苦手で霊感ゼロだが、オカルトには興味しんしん。なのでダラシメンの動画をよく見ている。「なあビリー、すでに鳥肌が止まらないんだが」「ハルク、ここだけはやめろとあれだけ忠告したろうが」「ひまりたちも止めてたな」「そうだな」「あの子たちは来たことないだろ?」「それがどうした」「ビリー、お前も来るのは初めてのはずだ」「だからそれがどうした」「なんでみんな[ここはヤバい]ってわかるんだ?」「ダラシメンの動画を見たらわかるだろ?」「確かにな。彼らの動画と同じ流れだ」「ハルク、今ごろ気づいたのか?」「ビリー、どうする?」「行きたくない」「でもビリー、それじゃあ僕たちはモブキャラのままだぞ?」「モブキャラで何が悪い。作者にやる気がないだけさ」「確かにな。作者の好きキライは異常すぎる」「しかしハルク、お前はダラシメンと肩を並べるとか抜かしたな」「もちろんさ」「ハルク、顔色が悪いぞ?」「ビリーだって震えが止まらないじゃないか」「行きたくない」「僕だって行きたくないさ」「ハルク、もしかして日和ったのか?」「僕が日和った?まさか」「どうするんだ?ハルク。行くのか?行かないのか?」「わかった。行くよ」「そうか。悪い予感しかしない」ハルクたちは結局たどり着けなかった。雨が降っていたし、夜だから足元があまりにも悪すぎたのだ。結局動画はアップしたが、再生回数は意外と伸びた。初めて300回を超えたのだ。チャンネル登録者も8人から一気に48人に増えた。「ついに僕たちはダラシメンを超えた」「そんなわけないだろハルク。僕たちはたどり着くことさえできなかったじゃないか」ハルクたちは定期的にお祓いに行くかどうかでモメたが、最終的に[炎の祈祷師]の呪い返しの動画を24時間流すことで悪霊も生霊も邪気も呪いも一切寄せ付けないということで落着した。