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「ぬわあああああああ!?!?!?」

「きゃあああああああ!?!?!?」


 天井を突き破り舞踏会の会場に降り立った私とワイバーン。

 ナルシスト殿下は間抜け面で尻餅をつき、その股間をみっともなく濡らした。

 おやおや、ここまで予想通りだと、逆に笑えないな。

 エミリーも漏らしこそしていないものの、お漏らし殿下と同じく腰が抜けて動けない様子。


「ジャ、ジャンヌ!?!? 貴様どういうつもりだッ!!! ワイバーンを退治しに行ったんじゃないのかッ!!? 何故ここにワイバーンを連れて来たッ!!?」

「それは私がクーデターを起こしたからですよ」

「っ!?!? 正気か貴様ッ!?!?」

「ええ、私は至極真面目です。あなたが婚約を破棄してくれたお陰で、この通り盟約の証の紋がなくなりましたからね」

「なっ!!?」


 綺麗になった右腕を見せると、お漏らし殿下は顔面蒼白になった。

 やっと自分のしでかした事の重大さに気付いたらしい。

 もう遅いがな。


「本来であればこのワイバーンに命じて、この国全体を塵に還すことも可能なのですが」

「ギャオオォォ!!!」

「ひいっ……!!」

「ああぁ……!!」


 ワイバーンが鋭い牙を剝き出しにして吠えると、お漏らし殿下の股間の湿地帯は更にその面積を広げた。

 ワインを飲みすぎなのでは?


「一応私もこの国に人並みの愛着はあります。滅ぼすのは忍びない。かといってあなたのような無能が王に収まるのを黙って見ていられるほど吞気でもありません。ですのでこのようにクーデターを起こし、王になる人間は私が決めることにした次第です」


 バカンスで隣国に赴いている国王陛下夫妻には申し訳ないが、息子の教育がなっていなかったということで、責任の一端はあるしな。

 精々国王としての最後のバカンスを、思う存分楽しんできてほしいものだ。


「そんな、無茶苦茶だッ!!!」

「殿下、ここは危険です。お下がりください」

「っ!! おお、ジルベール!!」


 ――!

 刹那、氷のように鋭い眼をした背の高い男が、お漏らし殿下の前に立つ。

 ホウ、近衛騎士団長のジルベール殿か。

 その卓越した氷属性の魔法剣の腕前から、【氷刃の騎士】と呼ばれ畏怖されている男。

 この国で唯一、私と武力で渡り合える存在といっていいだろう。

 フフフ、これは灯台下暗しだったな。


「よし決めた、王はあなたになっていただこう、ジルベール殿」

「はああああああああ!?!?!?」


 お漏らし殿下はちょっと黙っていていただきたい。


「謹んでお断りいたしますジャンヌ殿。――あなたこそ国家に刃を向けた罪、その命で償っていただきます」


 ジルベール殿は惚れ惚れするほど美しい所作で腰の剣を抜くと、その切っ先を私に向ける。

 フフフ、面白い。


「ではこの勝負で私が勝った暁には、私と共にこの国を治めていただきますぞ!」

「笑止!」


 私はワイバーンの背に手を置き、魔力を込め呪文を唱える。


「逆鱗に触れし蒙昧な王

 不能を晒す偽りの聖女

 贖罪の炎に色はなし

 万物に等しく安らぎを与えん

 ――【獄炎の咆哮(メギドノヴァ)】」


「ギャオオォォアアアア!!!!」


 ワイバーンが灼熱の火炎を吐く。

 私の魔力がたっぷり込められた炎だ。

 触れるだけで、森羅万象(すべ)てを塵に還すぞ。


「うわあああああああああ!!!!」

「いやあああああああああ!!!!」

「ご安心ください、殿下、エミリー嬢」


 ジルベール殿は眉一つ動かさず、剣に魔力を込める。

 フフフ、お手並み拝見といこうか。


「我が魂を王に捧ぐ

 剣に宿れ氷雪の神よ

 悪鬼羅刹を凍てつかせ

 やがて至るは雪月花

 ――【暴風雪の三日月(ブリザードクレセント)】」


 ――!!

 冷気を纏わせた剣をジルベール殿が振るうと、三日月型の氷の斬撃が放たれ、私の【獄炎の咆哮(メギドノヴァ)】を相殺した。


「フ、フハ、フハハハハハハハ!!! 面白い、実に面白いぞジルベール殿!! 必ずやあなたを屈服させ、私の婿にしてみせる!」

「笑止!」

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― 新着の感想 ―
[一言] きたぁっ!呪文詠唱! 兄さんのコレ好きですー。今回はも良き! センスを分けてほしい!
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