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「ジャンヌ、ただ今をもって、君との婚約を破棄する!」

「――!」


 私の婚約者であり、我が国の王太子殿下でもあらせられるマティアス殿下が、舞踏会の最中唐突にそう宣言した。


「今のはどういうことでしょうか? 冗談にしては、いささか度がすぎていると思われますが」

「今のが冗談に聞こえたのだとしたら、つくづくおめでたい頭をしているなジャンヌ。そういうところが前から気に食わなかったんだ。やはり君は私の婚約者には相応しくない。――そして聖女にもな。今後は聖女の任は、エミリーに担ってもらう!」

「――!」


 殿下の傍らに立った伯爵令嬢のエミリーが、無言で不敵な笑みを浮かべている。

 これは……!


「……お言葉ですが、エミリー殿には聖女の務めは荷が重いと思われます。魔力測定の結果も規定値には達していなかったはず。それではいざという時、この国を守れません」

「フン、そんなもの、今の時代の聖女には必要ないさ。この国はもう百年以上太平の世が続いている。大昔の乱世ならいざ知らず、今聖女に求められているのは、武力ではなく偶像。だからこそ、聖女は君のような無愛想な脳筋女ではなく、類稀な美貌を持つエミリーこそが相応しいのさ!」

「不肖の身ではございますが、聖女としての務め、精一杯果たさせていただきます」


 エミリーは勝ち誇ったような顔で、堂々とカーテシーをした。

 愚かな……。


「殿下、今一度お考え直しください。現にここ最近この付近で――」

「ええい、クドいぞジャンヌッ! いい加減その汚い口を――」

「た、大変ですッ!!」

「「「――!!」」」


 その時だった。

 余程恐ろしいものを見たのか、顔面蒼白の兵士が一人、慌てて会場に駆け込んできた。

 もしや――!


「何だ何だ無礼者ッ! 今大事な話をしている最中――」

「ワ、ワイバーンですッッ!!!」

「「「――!!?」」」


 ……やはりか。


「超大型のワイバーンが一体、我が国に物凄い速さで向かってきておりますッ!!」

「そ、そんな、バカな……!!?」


 悪い予感が当たったか。

 最近この近隣でワイバーンを目撃したという噂がまことしやかに囁かれていたのだが、どうやら噂は真実だったらしい。


「――殿下」

「っ! な、何だ」

「聖女としての務め、果たしてまいります」

「え? ちょ、ちょっと待てジャンヌッ!」


 殿下の制止を背に、私は駆け出した――。

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