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6.5 風邪と病み上がりと斜向かいさん。

「あの、体調は大丈夫そうですか……?」


「えっ……?」


 てっきり夕李たちが戻ってきたものだと思ってドアを開けた柊の体が、ぴしりと固まる。

 クラスも違う彼女がなぜここへ来たのか、そもそも柊の状態をどうやって知ったのか、など気になることは色々あるが、ぼんやりとした頭では考えがうまくまとまらない。


「な、なんで……」


 辛うじて口から出たのはその一言。


「白藤さんが学校を休んだと聞き、体調が悪いなら少しお手伝いでも、と思いまして」


「な、なるほど」


 そういうことらしい。その情報でわざわざ訪ねてくれたのは嬉しいことではある。


「それで、どうですか?」


 どうですか、というのは体の調子のことだろう。しかし幸いか、先ほどの二人のおかげもあり気分は良くなってきていた。


「心配ありがとうございます。嘘でも快復とは言えないですけど、さっき友人が二人来て色々してくれたので大丈夫ですよ」


「そう、ですか……」


 少しばかり不満げな表情と声色でそう言葉を返す氷梨。

 そんな彼女を視界に収めつつ、それに、と言葉を続ける柊。真意は分からないが、もう一つの理由からもあまり長くは話していたくなかった。


「何より風邪うつしちゃったら嫌ですし」


 一番はこれだ。夕李たちが来た時にも言ったが、気にしてわざわざ来てくれたにもかかわらず相手が体調を崩してしまう、なんていうことは避けたかった。


「本当に大丈夫ですか?」


「大丈夫ですよ。まあ、言っちゃえばもう寝るだけなので」


「たしかにそれもそうですね…… じゃあ今日は温かくして寝て、お大事にしてくださいね」


 氷梨の気遣いをありがたく受け取りつつ、それじゃあまた、と言葉を交わして自分の部屋へと戻っていく柊だった。


***


 ピピピ、という目覚まし時計の電子音に促されてまぶたを上げた柊。

 若干の頭痛は残るものの、昨日のような倦怠感はすでになく、熱も下がっているようだった。

 普段通りに朝食を食べることもでき、体の調子が戻ってきているのを感じる。


「……そうだ」


 昨日しようと思いながらも出来ていなかった洗濯をしておかなければならない。

 まとめてかごに入れておいた服をを洗濯機へと放り込み、洗剤と柔軟剤を入れスイッチを押す。


(洗濯が終わるまでは割と時間かかるし……まぁちょうどいいか)


 はっきりとしない頭で考えていたことを遂行するべく外出の準備を始めた。


***

  

「あ、おはようございます」


 数分後、かばんに財布やエコバッグやらを詰め、頭の中で必要なものをリストアップしながらドアノブを回すと、視界にちょうど自室から出てきた銀杏氷梨の姿が映った。


「体調は良くなりましたか?」


「あ、はい。普段通り動けるくらいには良くなりました。ありがとうございます」


「それならよかったです」


 急なことで少し驚いてしまい返答が少したどたどしくなるも、とりあえずそう答えておく。

 見るとどうやら彼女も出かけるところらしく、普段学校やこの廊下で会う時とは違ったおしゃれな格好をしている。

 タイミングが悪かったか、という考えが柊の頭の中によぎるも、こうして心配してくれるのは嬉しいことだ。こうしたさりげないところが彼女の評価にもつながっているんだろうな、と考えてしまうのは悪い癖だろう。


「今日はどちらへ?」


「えーと、昨日体調を崩したときにインスタント食品をまったく置いてなくて困ったので、その買い出しに行こうかと……」


「なるほど」


「銀杏さんは何をしに?」


「本屋さんまで行ってこようかと。参考書が欲しいので」


 この間いいものを見つけたんですよ、と少し楽しそうな口調で話す氷梨。

 参考書など高校入試の時にお世話になったきりで、そのあとには買おうと本屋に行った記憶などない。顔が広いわけではないので断定はできないが、夕李と柚羽はそういったことをしているところを見たことも、聞いたこともない。


「あ、そろそろ行かないと予定が……ごめんなさい」


 そんな優等生の用事に初めて遭遇し、参考書の話を少しばかり聞かせてもらっていたところで彼女はそういって会話を切り上げた。

 きっと他の誰かと待ち合わせをしたりしているのだろう。氷梨は、申し訳なさそうな顔をしながら足早にエレベーターへと駆け込んでいった。


(……そんな申し訳なさそうにしなくても)


 俺のことなんて気にしなくてもいいんだけどな、とぼそり呟く柊。正直スルーしてくれてもよかったのだが。


(それに……)


 そこでふと昨日の夜に考えていたことを思い出し、一瞬思考が止まる柊。


「……ま、いま考えても仕方がないか」


 軽く頭を振り、指先が赤くなった手を擦りながらスーパーマーケットへの道を急ぐ柊。

 病み上がりというのもあり、鈍い痛みが彼の頭に広がっていた。

こんにちは。天守熾空あまがみしあです。初心者も初心者です。筆はとても遅いですが、頑張って書きます。


読んでいただきありがとうございます。「こうした方が読みやすい」などありましたらご指摘のほどよろしくお願いします。


六.五話です。なぜこんな中途半端かというと、単純に六話と七話のつなぎの部分だからです(ここを一つのお話としてまとめられる技術がわたしにはなかったごめんなさい)。最近色々始めてみたりしているのですが、そっちもやりたいし書きたいところもいっぱいあるしで、わーって感じになってます(?)

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