街を目指す
コモの村はレヴァル王国の国境沿いに広がる魔鉱山脈及び魔晶の森と隣接する辺境の村だ。
「なんだってそんなとこに村なんて作ったんだ?」
「それは簡単なことだ、魔鉱石が取れるからだよ。この森を麓とする魔鉱山脈では、魔鉱石が採掘される。
まぁ、魔鉱石を採掘する鉱山街はまた別の所にあるがね。魔晶の森は微々たるものだが、土の中に魔鉱石の屑が埋まっているんだ。魔晶の森は広いからコモの村のような村は森沿いには珍しくない。」
「魔鉱石ねぇ...。」
「まぁ、そのおかげで私たちみたいな冒険者は危険な場所に入る前に物資なんかを補充できるってわけよ。」
辺鄙なところに村があるのは、どこかにうまみがあるからのようだ。
「そういやこれから向かう街はどんな街なんだ?」
「これから行く街は、マリクス辺境伯領最大の鉱山都市であるバルクという街だ。
魔鉱石のほかにも希少な魔法金属を有した山を数多く所有していて、付近の迷宮も鉱山系の特徴を持っているんだ。もちろん、採掘だけじゃなく錬金術の触媒に最適な魔晶石の産地ゆえに錬金術もかなり発展している。」
「魔鉱石は錬金術に使うのか。」
「そうじゃ、魔鉱石は普通の鉱石が魔力に染まった物の総称なんじゃが、そのほとんどが錬金術の触媒になる。その中でも魔水晶が最も効果が高い。その魔水晶が多く採掘されるのが魔鉱山脈なんじゃ。
保有する魔力は魔晶石には遠く及ばぬが数が多い故、魔晶石の代用品としては一級品じゃからな。とてつもない利権となるんじゃよ。」
これから向かう場所は栄えていそうで、期待を膨らませる。
(肉の味がいいからってハーブだけじゃ物足りないと思ってたんだ、流石に塩くらいないとな。
街についたら美味いものもありそうだし、ダンジョンも気になるところだな。)
「そろそろその獲物のことをきいていいかのぉ。ずっと気になってたんじゃが...」
腰に差した二本の武器を見つめながらウゴが聞いてくる。
「これか?これはなぁ、正直俺にもよく分からん。師から受け継いだものだからな。
能力はある程度知っているが、だれがどこでなにでどんなふうに作ったのかも分からんぞ。
能力はこっちの短剣がとんでもない冷気を出すことでこっちの鎌が血液を吸うことと地によって切れ味が増す。」
「ならばそれは魔剣ということかい?いいものを使ってるね。」
「血を吸うなんて物騒ね。でも、気になるのは能力の強さよね。どれくらいのものなの?」
「それ、気になります。火が付くほどの体温を覚ましてたのも気になってたんです。」
全員の視線が武器に注がれる。
「そうだな。人間大なら深く突き刺せばすぐさま凍り付くな。鎌の方はどれくらいかは特に調べてないがかなり早く血を吸えるな、切れ味はまだ限界は見たことないな。」
「「「「「..........。」」」」」
壮絶なほど強力な武器の性能に絶句する4人
「かなりすごいんだね。そこまでの代物なら相当の反動が大きそうだね。」
「反動か、まぁあるな。短剣の方は氷結効果が柄にまで及んでるってこと、鎌の方は呪いかなんかの耐性を持ってないとたしか操られて手当たり次第に殺しまわった後自死しちまうはずだ。」
「はぁ?!そんな代物司法院の封印宝物庫行きの劇物じゃない!なんであんたは平気なのよ!」
思っていた以上の反動に粗い声を上げるリナリナ
「さぁ?知らんね。持っても特に変化なかったから師はこれを俺に託したんじゃないか?」
「も、もしかしたらですが...粛清の神の御加護がとても強いのかもしれません。
子供のころや夢などで神様の声を聞いたことはありませんか?」
「あー、えっと神の声は聞いたことはあるな」
(ほんとは直に会ったこともあるけど)
タダシの言葉の裏を知らない一行は推察を始める。
「やっぱり、寵愛を受けていますね。加護の力の強い人は精神系の攻撃にめっぽう強いと聞いたことがあります。そのおかげではないでしょうか。」
「寵愛って、剣聖とか聖女様が受けているっていうものでしょ?こんなところに寵愛受けてるのがいたなんてすごいわね。」
「寵愛ねぇ。ま、生きやすくなるならもらえるものは全部もらうだけだから感謝しかないな。」
神の寵愛を受ける男はそのありがたみを知らないようだ。
「ふむ、君には神への敬意があまり感じられないね。君も裁定の神の系譜の神に御加護を受けているのだから司法院から勧誘が来ると思うからそのときは少し注意したほうが良い。彼らの中には頭の中に鉄が詰まったみたいに硬い連中がいるからね。何をされるか分からない。」
「げ、そんな奴らいるのかよ。」
「いや一部だけじゃよ。奴らは基本的に清廉潔白に生きる。そもそも悪事に手を染めることなどできぬ。
神はいつでも見ておるゆえにな。」
「それはそれで窮屈そうだな。」
神に縛られるのは気の毒だと思うタダシ。
「いやいや、彼らは望んでそれをしているのだよ。それを苦にするものにそもそも神は御加護をお授けにはならないよ。」
「そんなもんか。」
そんな話を続けながら道なき道を進むと森の木々が少なくなってゆく。
「そろそろコモの村が見えてくるはずだ。最後まで気を締めていこうか。」
「案外早く着いたな。」
「話しながらもかなり早く進んでたから、こんなものでしょ。」
そうしているうちに、周りには下草が少し生えるだけになり気を使った立派な壁が見えてくる。
空は赤みががって夕方に差し掛かっている。
「あれがコモの村だ。ここまでくれば乗合馬車を使えるから、一気に進めるよ。」
一行は、コモの村で一泊した後バルクの街へと向かうため乗合馬車に乗り込んだ。
明日も更新予定