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鎌と短剣  作者: アリクイ
異世界生活(序章)
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初邂逅

 時々見かける靄がかった宝石を宿す仮称魔物を狩りつつ、その日も同じように昼から夜にかけて、森の探索に出かけて帰って来た時だった。


「い…す…これは…」


「や…やめ…ほうが…」


 洞窟の中から喧騒が聞こえる。


「なんだ?賊でも入ったか?やばいな誰も来ないもんだと思って色々剥き出しで置きっぱなしだぞ。特にあの蛇の素材は持ってかれたら困る。しかしこの壁を越えられるのか。」


 ハルパーとダガーを構え、壁を越えゆっくりと洞窟に近づき中を伺う。


「手前にはいないか。奥にいるようだな。」


 音を立てないよう慎重に進み、姿を確認してから声をかける。


「おい、お前ら!ここで何をしている!事情によっては拘束させてもらうぞ。」


 そこに居たのは、


 赤い髪に要所に金属で補強を行った革鎧を身にまとい片手に小盾をつけ長剣を佩いた青年


 白髪に硬そうな金属鎧を身にまとい背中に大盾を背負って手斧を佩いた低身長の老齢の男性


 緑の髪に草色の服を着て、矢筒と弓を背負った尖った耳が特徴的な長身痩躯の女性


 青い髪に銀糸のようなもので刺繍をしたローブを纏って身長を超えるほど長い杖を持った少女


 の4人組だった。

 4人組は洞窟の中に集められた骨や鱗、牙等の残骸を物色しているようだ。


「あっこれ違くて!」


「待て話を聞いてほしい。」


「だからやめようって言ったのよ。」


「許して下さい~...」


 突然の誰何に驚いたのか三者三様いや四者四様に喋りだす。


「落ち着け!まずは落ち着いて手に持ってるもんをもとの場所に戻せ。あと武装は解除してもらおう。

 腰から外して床に置いておくだけでいい。こちらは刃を収めるのみとさせてもらう」

(あれ?言葉が通じるな、もしかして日本語が主要語?いやそんなことはないはずだが。)


 その言葉に、とりあえず落ち着きを取り戻したのか素直に持っていたものを元に戻す4人組。


「いや、すまなかった。ところでこんな所で生活しているなんてすごいな。君は噂の賢者様なのかい?」


 武装を床に置きながら、赤髪の青年が尋ねてくる。


「まず質問したいのはこちらだ。無防備においていたからといって取られてもいい物なんてここにはないからな。とりあえずお前たちは何者だ?何の用でここに来たんだ。」


「わしらは、冒険者ギルド ルマル支部所属のAランクパーティ火竜の鳩尾じゃ。」


 やけに背の低い老齢の男性が答える。


「僕はパーティリーダーのアレックス。直剣の神の加護をいただいている。」


「わしはウゴ・リエルテ、見ての通り鉱人族じゃ。重装の神の加護をいただいておる。」


「私はリナリナ・エル・ロマリア、リナって呼んで。まぁ言わなくてもわかるだろうけど森人族。

 速射の神の加護をいただいてるわ。」


「わ、わたしはコルマって言います。人族ですっ、えっと治癒の神の御加護をいただいております。」


 上から赤髪の青年、老齢の男性、緑髪の女性、青髪の少女がこの世界独特のものだろう名乗りを上げる。


「ふむ、珍妙なパーティ名は置いといて俺も自己紹介するか。俺はアマノ タダシ。

 アマノでもタダシでも好きな方で呼んでくれ。ちなみに、名前はタダシの方だ。

 で?加護がええーと、紙紙っとあった。あー粛清の神の加護をいただいておりますってか?」


 うろ覚えの加護を身分証明書になるらしい紙を取り出し確認しながら自己紹介を終える。


「なんと...粛清の神の御加護をいただいてらっしゃるのか。ならば司法院に所属している精練神官でなのかな?」


「え?精練神官?司法院?いや知らないな、なんだそれ?」


 聴きなれない言葉に素が出る


「精練神官だけじゃなく、司法院も知らんのか?ずいぶん世間知らずじゃのう。」


「いや、世間知らずってレベルじゃないでしょ。四大ギルドの1つを知らないって一体どれだけ世捨て人なのよ」


 彼らにとっては常識だったのか、衝撃を受けているようだ。


「あ、ああ。俺は物心つく前から師匠と一緒に山で暮らしてたからな。俺が知ってるのは生きるすべと

 山のこと、あとこの紙に書いてあることだけだ。」


 何故か素性を隠したくなり咄嗟に嘘をつく。

 元々、この世界で地球での自分を捨てて生きることを決めていたからか、まるで実際に体験したかのように言葉はスラリと出た。


「そうだったのか...それでこの残骸か。それで、お師匠殿は今どこにいらっしゃるのかな?」


「あーそれは...。」


 もちろん師匠などいないので言葉に詰まる。


「ア、アレックス!それは失礼だよっ。」


「あ!すまない。ぶしつけなことを聞いてしまったようだ。」


 言葉に詰まったのを言い難いことを聞いたと判断してくれたらしく、話が中断する。


「いや、いいんだ。ところでここに来た理由を聞いてなかったな。とりあえず、飯にするから食べながら話そうや、な?」


「あいや、こちらも一応野営の準備はしてあるんだ。」


「いいって、ここに取られて困るもんは肉しかねぇからよ。何なら女はこの洞窟を使ったらいい、そこらの頭と目があっても耐えられるならだが。」


 そう言いつつ、火の肉体を使い火をおこす。


「は?お主それは、火の肉体では?」


 相当驚いたのか、素っ頓狂な声を上げるウゴ。


「ん?そうだが...なんかあったか?」


「いや、その特性はドワーフにしか、というかドワーフでも極稀にしか発現せん特性じゃと思っとたが、ずいぶんつかいこなしておるのぅ。」


「いや、使いこなすなんてそんな大層なもんじゃねぇな。バカみたいな熱はこいつに何とかしてもらってるからな。」


 そう言いつつダガーを抜きその刀身に触れる。

 すると蒸気を上げながら体温が下がっていく。


「色々、本当にいろいろ気になりはするが、まずは置いておこう。」


「ええ、そうして欲しいわね。もうすぐこちらも夕食ができるからね。」


「できましたよー、と言っても材料がないのでこんなもので申し訳ないですけど。」


 冒険者組の夕食はパンに干し肉らしきものをはさんだ簡易的なサンドイッチだった。


「何だか質素だな。そんなんじゃ腹が膨れんだろ。肉食うか?いや食いな、一応いっぱいあるからよ。」


「お?ほんとにええのか?それはありがたい。」


「ちょとは遠慮しなさいよ。あんたは。」


「いや確かにありがたい。」


「お?素直なのは気に入られるぜ。すぐ焼くから待ってな。」


 いつものようにハーブを擦り込んで肉を焼いていく。


「は?いやいや...は?え?何してんのそれ。」


 あまりの驚きに語彙を喪失するリナリナ


「これ?これはそこらに生えてるハーブでな、近くの泉に大量に群生してるんだがこの赤いのがまた肉に合うんだ。緑のは苦みが強いから入れなかったが緑の方がよかったか?」


「いやそれ、ライトポーションの素材のヤクポ草よ?!しかも、赤い方はヘヴィポーションの素材になるレクポ草なのよ!てっきり薬作りのために置いてあるのかと思えば、料理に使ってたの?!」


 ものすごい剣幕でまくしたてるリナリナ


「へぇー、これ薬になるのか。知らなかったな。」


「知らなかったじゃ...「リナリナさん!そこまでにしときましょうよ!」...はぁ、しょうがないわね。」


 ひと悶着ありながら肉は焼き上がり、食事とともに会話が始まる。


「で?いったい何しにここに入ったんだ?壁の方は扉なんて高尚なもんはつけてねぇし、乱杭だってあったろ?」


「ああ、俺たちは偵察に来たんだ。この森で最近魔物が増えているらしくてな、少し時間がたってしまったが、一応目的はタイラントスネークと言われる魔物を追ってきたのだが...。」


 言い辛そうにどもるアレックス。


「あ?どうした?」


「いや、ここに来るまではそうだったのだがな。」


「はぁ、あれよ。」


「あれじゃな。」


「あれなんです。」


 全員が見つめる先にあるのは、いつの日か狩った大蛇の頭骨が。


「あいつがなんだって?」


「ああ、あれが今言ったタイラントスネークなんだ。破壊の暴君、暴食の蛇、色んな通称で呼ばれるAランク魔物の中でも上位の化け物だよ。」


「タイラントスネークねぇ...確かに強かったな。ま、気にすんなって獲物は俺がぶっ殺しちまったがクヨクヨせずに肉食べな。」


「あ、ああだがこの肉はとてもうまいな。魔力がたぎるぞ、まさに高ランクの魔物肉のような...。」


 何かに築いたかのように押し黙る一行。


「もしかして...。」


「この肉か?もちろん、そのタイラントスネークってやつの肉だ。」


 絶句、その時、一瞬この空間の時が止まった。


続きは明日

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