3つの願い
気がつくと真っ白な空間にいた。
境界線がなく上下左右の区別もつかないようなのっぺりとした空間だ。
「なんだ、ここ」
「おはようございます、天野直志さん。」
声をかけられて目の前に人がいることに気づく。
白いローブを目深に羽織って顔は分からない上声にも特徴がない不可思議な人物だった。
「あんた何者だ?」
「私は粛清を司る神、名前はありません」
「神様?神様が一体なんのようだよ。」
話が見えてこず、不安が襲ってくる。
「天野直志さん、率直に言ってあなたは死亡しました。」
ストンッ
と音がしたかのように自分の現状を理解する。
そうだ俺は死んだ。訳の分からんやつにぶっ殺されたんだったと。
「ははっ、確かにあれは死んだな。」
あまりに突拍子のない、しかし現実なのが理解出来る事に乾いた笑いが漏れる。
「はい、あなたは死にました。
しかし、あなたの死は私の不手際によって起こされてしまったことです。」
「あんたの仕業ぁ?じゃああんたが犯人ってことかよ!」
「いえ、正確には粛清の対象となった悪魔を後一歩のところで逃してしまったのです。直ぐに追いかけましたが、異世界に逃れてしまい探すを手間取ってしまい、あなたを助けることができませんでした。」
「なんだ、別にあんたの仕業って訳じゃないじゃないか。
で?それで神様が出張ってきて何をしてくれんだ?生き返らせてくれるのか?」
「いいえ、世界の管轄が違いますので生き返らせることは出来ません。しかし、私の管理する世界に転移をさせることができます、もちろん健康体で。」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!なんで生き返らせてくれないんだ!?」
「申し訳ありません。この地球は私たちの管轄にはありませんので、私があなたを蘇生してしまうと輪廻転生のシステムに異常が起こる可能性が高いのです。その上私は粛清を司る神、蘇生は権能に含まれないことも理由の一つです。」
「そうなのか…まぁ、しょうがないか。
それであんたの異世界はどんなところなんだ?」
天野直志はオタクである。故にか自らの死より、異世界転移できることに気分が上がってしまっていた。お詫びの転移はチートを貰える可能性が高いと。
「あなた達の創作で言うところの剣と魔法の世界と言った所でしょうか。」
(きたー!これで勝つる!)
「ふーん、そ、そうなんだ。」
「はい、そして不手際によって死してしまったあなたに私のできる範囲ですが、3つの願いを叶えて差し上げましょう」
(チートきたー!さて、ここが悩みどころだ。
俺の夢は、気ままな狩猟生活をすることだ。そのためには何がいるだろうか…。そういや、獲物は血抜きより先に冷やさなきゃならないって聞いたことあるな。
嫌でも血抜きしなきゃ血生臭くて食えないってのも聞いた。
虫とか病気も心配だな。確か体温を1℃上げたら免疫がめっちゃ上がるって聞いた事あるし、体温を上げまくったらいいんじゃね?温度高かったら虫もよらないだろうし)
そうこの男、狩猟生活に憧れてるといいながら知識もなくただジビエが食べたいだけの男だった。それだけでなく…
「じゃあ、血抜きが出来るやつと冷やしたり凍らせたり出来るやつ、そして体温をあげるやつをくれ。」
とても大雑把な性格をしている。
「わかりました、では3つの願いを受領しました。転移を開始致します。」
「おう!ドンと来い!」
「では、幸福をお祈りします。神の加護があらんことを」
その瞬間、俺の目は光に包まれた。
まだ説明回が続きます。