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冬なのに夏がやってきたまるで海を思うように

作者: ぼるしち

こたつに入りながらみかんを食べている典型的な私の冬は、もうすぐ終わりを迎えようとしている。

季節が過ぎるからではない。唐突に、あの季節がやってきたのだ。

それは個人的なことだった。世間的にはまだまだ冬の真っ盛りなのだ。

だが、冬は唐突に終わり、夏がやってきた。

ぼくらの夏がこの年初めにやってきたのである。歓迎すべき夏という季節は、とても個人的なものだった。つまり夏らしい歌を聞いて、風鈴の音を思い浮かべ、うちわを仰ぎ、そして「夏」と叫ぶ。そんな季節が我が家にやってきたのである。

例えば夏休みといえば何を思い浮かべるだろうか。

学生ならば、長い長いしかし短い休みの時期だと答えるだろうか。

クーラーをがんがんに吹かして、家でゲーム三昧じゃあなんて人もいるだろう。

そんな季節に、僕は冬のみかんを食べながら、夏の歌を口ずさんでいた。

そしていじめのことを思うのだ。

いじめ。

私はそのワードがあまり好きではないが、夏といえばいじめという記憶がこびりついていて、離れようとしないのだ。かわいそうな私ということだ。ゲームがきっかけだったと思うが、どうだろうか、昔のことだからよく覚えてない。そのいじめの内容も典型的なもので、ひたすらシカトされるというものだった。

そんないじめを受けていた僕にとって夏休みそのものはあまり好きじゃない。

だが冬ならどうだろう。冬の夏。ここには悪い思い出が滞在していない。だから安心して夏を語ることもできるというものだ。夏休みのない夏。それって、大人になったらみんなそうでしょう?

さて私はそろそろ夏についてもっと深く語りたいと思う。

冬だからできる夏についてのトーク。

そんなものは本当にあるのだろうか。ないような気もする。

冬の風鈴、カララ。という歌詞があったりする。実際に存在している曲だよ。

夏の風物詩は夏にしか出番がないなんて典型的すぎる。

冬だからこそあえての出番というものも、しゃれおつなものじゃないだろうか。

たとえば海。たとえばプール。

水。

冬では氷、雪。

夏の雪。

夏に降る雪をみたことがない。みてみたいなあ。

たとえば冬がまぼろしで、実は夏がそこに居座っているのだとしたらどうだろうか。

夏の雪。

それならありえるんじゃないだろうか。

まあ、そんな話はどうでもいいか。

私たちは、もっと冬と夏の違いについてはっきりと意思を表明すべきなのだ。

え、語るまでもなく違いははっきりとわかっているだって?

そんなことはない。

みんな冬と夏の違いがわかっていない。

冬にはハロゲンを使って温まる。夏には扇風機を使うだろう。

ほら、その二つにはたいした違いがないじゃないか。主に見た目に。

くだらないことをいってしまって申し訳ない。

次に行こう。

冬の雪の中に飲み物をいっぱい入れて冷やして飲むと夏は気持ちいいが夏には雪がないからその作戦は成功しない。夏と冬を一部分だけ切って合体させてしまえば、最高なはずなのに。

海の色は違うだろうか。

沖縄の冬の海と、夏の海には、違いがあるのだろうか。

東京湾の水の温度は違うだろう。沖縄だってそうだろう。

季節の合体。

そうか、その手があったじゃないか。

春と夏と秋と冬の都合の良い部分だけ切り取った世界を作ってしまえばいいじゃないか。

科学の力で実現させてしまえ。

一年中快適で楽しくて予想外な世界が完成するだろう。

四季なんてなくして、一年中春夏秋冬。

わびさびがないなんていうなよ。

きっとそれはそれで、新しいから少しの間だけは快適なままだよ。

でもそのうち季節が一つずつ訪れていた頃が懐かしくなって、元に戻してくれという声がいっぱいあふれるのだろう。そこまではよくわかる。

では都合の良い春夏秋冬の一年にはどんな快適な世界が広がっているのだろうか。

それをみんなで話し合いたい。

暇だったら話し合ってみるといい。

暇じゃないならやめておけばいい。

くだらない話はもう終わりだ。

冬の風鈴、からら。

夏みかん、ぴりり。

海はきっと寒いだろうなあ。

おしまい。

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― 新着の感想 ―
[良い点] とても面白かったです。 夏と冬について、語り手の考察を聞いていると、頭がすっきりしたり、そんなこと考えつくのかと思ったり、思考の運動になりました。 いじめられていたなどの暗い話題もありまし…
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