ディスヴィアス山脈
ディスヴィアス山脈に旅立った俺は、まず麓に近い村スプリング村を目指す事にした。
此処からはかなり遠い村なので、恐らく数週間はかかるだろう。
あれから水晶で確認した所、この世界のアイテムは人口に比例しているらしく、モンスターだけがかなり少数になっているようだ。
この世界に来てから数週間経ったが、貧困や争い事等、殆どこの世界では見られない。
モンスターは町や村に入って来る事は無く、森や山等人の居ない場所に生息しているようだ。
職種に縛られた町の人は、町から出る事や、モンスターと戦う事は出来ないらしく、珍しい武具やアイテムは、行商人や冒険者が売買を行うだけで、そうなると必然的にアイテムも変わらないので、争い事も少なくなるといった状況だ。
低級モンスターのドロップアイテムは町で売っている物と変わらない、かといってレアアイテムはモンスターが強過ぎて、手練れの冒険者でも命を落とす危険があり、そうまでして得たアイテムを町で売るとは思え無い。
そのお陰で皮肉にもこの世界には、モンスターに倒される冒険者が少なく、人口が増え続けているのだ。
レアアイテムを取りに行かせる為、数人の冒険者やハンター等にモンスター退治をさせる必要があるな。
冒険者にモンスター退治の手本や、レアアイテムをもっと手に入り易くすれば、次に続く者たちが現われるかも知れないな。
そんな事を考えながら歩いていると、右手からクロウの意識が伝わって来た。
《おはようございますマスター。今マスターのお考えが僕に伝わりました。とても良い方法だと思います》
《おはようクロウ。取り敢えず近くの村で冒険者を集めて見ようと思う。良い案はあるか?》
《はいマスター。私が近場に手頃なアイテムのある場所を探します。暫くお待ち下さい》
右手の紋章が青く輝くとクロウが現われ、何か唱えた後人間の男の子に変化した。
《お…お前。人型にもなれるのか?》
《はい、マスター。ドラゴンはこの世界の全ての魔法が使える種です。この姿の方が気力が安定しますので変化しました。早速情報を集めます》
クロウが空中に文字を書くと、クロウの額に竜の紋章が浮き出て、暫くすると空中に地図が投影された。
《マスター分かりました。此処から南西の港町付近に、小さな洞窟があります。モンスターの強さは中級ですが、かなりレアアイテムが埋もれているようですよ》
《そうか、有難う。取り敢えず港町に行って見よう。冒険者を募らないと》
《はい、マスター》
俺とクロウは南西にある港町を目指し歩き始めた。
港町に着くと、俺は人が賑わっている場所を探した。
港の船着き場の辺りに酒場があり、其処には冒険者が集まっているようだ。
酒場は港町らしく屈強な身体の男達がたむろっていた。
酒場のマスターらしき男がいたので、冒険者が来たら洞窟探索を手伝ってくれるように伝えて欲しいと、貼り紙を渡した。
【近くの洞窟にレアアイテムが沢山あります。冒険者やハンター、モンスターと戦える職種の方手伝って下さい。
人数は3人。報酬は洞窟の中のアイテムを分配と、別に金貨一枚を渡します。参加に興味ある方は、付近の宿屋に泊まっていますのでお訪ね下さい。
クロウ迄】
俺の名前は隠した方が後々良いと思い、クロウの名を使う事にした。
貼り紙はマスターが、店に貼ってくれ冒険者にも声をかけて貰う事になった。
洞窟には沢山のキノコ酒の材料があり、マスターもモンスターが減れば助かると言い、喜んで引き受けてくれた。
暫くこの町に留まり、様子を見る事にしよう。
マナから貰った水晶は何でも希望の物が出て来るが、洞窟のレアアイテムや武具は出ないようだ。
バランスに影響される物は駄目なようだ。
余り目立つと、すぐに注目を浴びそうなので、俺は顔を隠せる装備品をつけ、冒険時はクロウを右手に隠す事にした。
宿屋に滞在して5日程した時、2人の冒険者が宿屋に訪れた。
一人は体格の良い男で名をアルバ。
斧使いの戦士系タイプのようだ。
もう一人は神官系のすらりとした美少年で、フォルスと言う青年だった。
酒場のマスターとは知り合いらしく、貼り紙を見て来たようだ。
話を聞くと、普段は近場の森で狩りをしていて、そこそこ名をあげている冒険者だと言う事だ。
アルバは下級のモンスターの洞窟なら、一人で突破した事があるそうだ。
フォルスは魔法攻撃が得意だが、近接攻撃が苦手らしく、洞窟等は入った事が無いようだが、アルバの誘いもあり、参加してくれる運びになった。
簡単な自己紹介が済んだ後、2人に今後の日程や、洞窟の簡単な地理を説明した。
近接攻撃が俺とアルバなので、出来ればもう1人は回復魔法や補助魔法が使用出来る仲間が欲しかったが、明後日迄待ち、誰も来なければ出発する事になった。