始まりの町ミンティア
翌朝俺達は、近くの農村の夫妻から荷馬車を借り、町に向かった。
町は小さな町だったが、商売人が多いのか活気に溢れていた。
町はミンティアという町で、この辺りで一番人が集まる町だと教えて貰った。
《わぁ…。凄い人ですね。さっきまで殆ど人とすれ違わなかったのに》
辺りをキョロキョロ見渡しながら、シムの後を追いかけ尋ねた。
《このアルカディアでは、大抵の人間は町でしか移住出来ない。但し、俺のようなハンターや冒険者のような職種は別だがな》
《職種って結構厳しい決まりがあるのですね。シム、職種とはどうしたら決められるんですか?》
《職種は神殿で決められるんだよ。ある程度の年齢に達した時、神殿に行き儀式を受けるんだ。
そうだ、まずは職種を決めないとな。取り敢えず【冒険者】にしておけば疑われる事も無いだろう》
《分かりました》
町の中央の広場に近づくと、神殿らしき建物があり、その付近では行商人や人々で賑わっていた。
建物の中は小さな町の神殿とは思えないような精巧な内装だった。
神殿の中央には大きな杯が浮かんでいて、参拝者がその杯に何かを投げ込んでいた。
《シム、あれは何をしているのですか?》
《あぁ、あれが職種選択の儀式と言って、そこにある羊皮紙になりたい職種を書いて、あの杯に投げるんだ。職種に適応能力があれば左手に紋章が浮かび上がる。紋章が出ればその職種に必要な能力が手に入れられるんだ》
《凄いですね。でも適応能力が無かったらどうなるんでしょう。俺は大丈夫でしょうか…》
《俺の知る限りワンダーはどんな職種にもなれる筈だ、職種は適応能力が見つかるまで変更可能だから安心しろ。取り敢えず物は試しだ、やって見ろ》
シムに背中を押され、俺は羊皮紙に冒険者と書いて杯に投げ込んだ。
すると一瞬身体の中が暑くなり、左手に黒炎の様な紋章が浮かび上がった。
《シム、手に紋章が!黒い炎の様な紋章です》
俺は左手を見せながら、不思議な力を身体の中で感じた事を伝えた。
《黒は力が強い証拠だ。炎って事はお前の属性は火だ。水系のモンスターとの戦闘には気をつけた方が良いだろう。俺の属性は風だから相性は良い属性だな。》
《この世界には属性があるんですね。(ますますRPGの世界にいる見たいだ、もしかしたらゲームの世界の様にラスボス倒せば、元の世界に戻れるとか…ははは…まさかな)》
そんな事を考えてる間に、シムは神殿のシスターと話し始めていた。
暫くしてシムが戻って来ると、手にはカードの様な物を持っていた。
《竜巳、これはACと言って、職種や特殊技能つまり魔法や召喚等…、まぁ便利な物だよ。後で使い方を教えてやるよ》
シムに渡されたカードは、透明なトランプの様なカードだった。
《良し、後は装備品だ。今日は行商人が多いから良いのが見つかるだろう。さぁ行こうか?》
《はい、お願いします》
俺とシムはそれから町の行商人に会い、装備品を整えた。
武器はシムの勧めで、剣と槍を織り交ぜたようなタクトディアという武器を選んだ。
この武器は槍のように伸ばす事も可能だが、折り畳むと剣として使用出来るという優れ物だ。
比較的攻撃力の高い武器では無いが、俺の火の能力と合わせると相性の良い武器の様だ。
防具は簡素な皮の胸当てと皮のブーツを選んだ。
他の防具は俺には重すぎて合わなかったのだ。
今迄スポーツに興味が無く、敢えて鍛える事等して無かった。
ちゃんと筋肉をつけないと後々やばい事になりそうだ…はぁ…。
そんな事を考えながら、必要な薬草や日用品を買い揃えてシムと家路についた。
家に帰った頃には既に日が沈んでいて、夜の森は危険だと言うので、明日の朝から修行を始める事にして眠りについた。