遥かなる想い
《竜巳…、本当によろしいのですか?次に貴方がワンダーを呼べる時には、彼女はもうこの世に居ない方なのですよ》
フラルが後方から歩み寄り話しかけた。
《朋美は俺のせいでこの世界に来る事になった、それに彼女はこの世界では俺程関わりがない、帰せるなら今帰したいんだ》
《大切な方なのでしょう、竜巳…》
朋美の寝顔を見つめながら俺はフラルの問いに答えた。
《あぁ…大切だよ。楽天家でお人好しで、しょっちゅう俺の心配ばかりして、だからこそ絶対彼女だけはこの世界から帰したいんだ》
《竜巳………》
フラルはそれ以上何も語らず俺の後をついて来た。
俺は朋美を扉の前に下ろし、鍵を回した。
扉を開けるとそこには光が渦巻いていた。
試しに俺の手を入れて見ると激痛が走った。
《やっぱり、俺は駄目って事らしい…》
朋美を足元から光の渦に差し込むようにすると、朋美の身体は渦に吸い込まれて行った。
俺は彼女の手を最後まで握り締めゆっくりと離した。
完全に彼女の姿が消えた後、俺は扉を閉め鍵をかけた。
朋美…絶対帰るよ…
暫くすると扉は崩れ消えていき、俺はいつまでもその場所を見つめ続けた…
朋美を地球に返してから数ヶ月、俺はコアディアに戻り、元の生活に戻った。
地球への帰還の渇望はあるが、朋美を帰してから何かが吹っ切れたように、気持ちは穏やかだった。
旅の仲間達は解散したが、あれからアルバやフォルスが様子を見に来てくれた。
身の廻りの世話はクロウやミンディが争いながら、やってくれている。忙しない毎日だ。
あれから扉は消滅したまま一度も出て居ない。
俺が次のワンダーを呼べるのは、数百年後…。
しかし、俺にはその気持ちが無かった。
もう、他の人間に俺の様な思いをして欲しく無かった…。
朋美は嘘つきと怒るだろうか…。
彼女は無事、地球に戻れたのだろうか…。




