異世界の扉
あれは、一体いつの出来事だったのだろう・・・
俺は妃堂 竜巳16歳。
ごく普通の青年で、春から近所の私立高校に通う一年生の筈だった…。
なのに今俺は、何が起こったか分からない状態で、この世界に迷い込んでしまった。
現実世界の俺は、パラレルワールドや幽霊などの話しは一切信じない主義で、最近流行りの異世界小説等も、有り得ない事実だと認識していた。
つい数分迄は…。
まさか、その有り得ない状態が自分の目の前に繰り広げられようとは夢にも思わなかった…。
朝、母親に起こされた俺は、先日から約束していた幼馴染の朋美と、買い物に向かう途中だった。
朋美を迎えに行った瞬間迄は記憶があるのだが、気がついたら森の中で横たわっていた。
何が起こったか分からない俺は、周りを探索したが、朋美どころか現実世界に結びつく物は何も無かった。
近くにあった湖で水を飲んでいると、背後から獣のような鳴き声が森の中を響き渡った。
俺は余りの恐怖に声も出せずに、その場に立ち尽くしてしまった。
一体此処は何処なんだ…。あの鳴き声は…。
背後から人が近づく気配がして、俺は素早く振り返った。
《おい⁈お前こんな所で何をしているんだ、早く逃げないとやばいぞ!》
男は鎌のような物を振り回して、何かに威嚇しているようだった。