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戦国都道府県  作者: 傘音 ツヅル
第一部〜始まりの英雄 黒雷編〜
54/55

Record No.054 館山決戦(3)

「これより館山支部奪還作戦を実行する」


 フロアに集められた隊員達に京橋が壇上からマイクで呼びかける。


「優先事項は館山市民の救出だ。永田の私設武装集団が妨害してくるだろう。敵兵はかなりの曲者ばかりだが、特務隊おまえたちは俺が選んだ精鋭だ。思いっきり暴れて来い」

『おおぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーーーーーーーーー』


 京橋の激励に応えた兵士達の叫びでフロアが揺れた。


「各自、最終チェック後に光速道で現地に向かえ」


 京橋の後ろに立っていた向日が兵士達に指示を出す。


 ザッと音をたてて兵士達が敬礼をして動き出した。


「カグちゃんに負けず劣らず向日ちゃんも相当だよね」

「どういう意味ですか?」


 装備の点検をしながら話す渋谷に神楽坂がいつもの厳しい視線と言葉を向ける。


「だって、ずっと空席だった零隊の副隊長になっちゃうんだもんなあ」


 渋谷は大袈裟に感心した素振りで言った。


「女性隊員で特務隊になるのも珍しいのに、ましてや京橋隊長の部隊に選抜されるのは凄いな」


 こういう会話にあまり入ってこない秋葉原も賛同してきた。


「確かにあの人は凄いです」

「大丈夫。お前はもっと凄いよ」


 神楽坂の悔しい感情を読み取った秋葉原が短い言葉で励ます。


「私はまだまだです」

「自信を持て、お前は隊長が選んだ天才なんだから」


 少し弱気気味な神楽坂の背中を秋葉原がバシッと叩く。


「イっ」


 顔に痛さが出ていたが、神楽坂はグッとこらえて言葉を我慢した。


「ふっ」

「何をするんですか」

「俺が言っといてなんだけど、プレッシャーを感じすぎてやしないかと思ってな」

「それは……ありがとうございます」


 秋葉原のおかげで無意識に感じていたものが軽くなった。




「いやー隊長と任務なんて久しぶりだな」


 サイドを刈り上げた短髪の体格がいい男が立って軽いストレッチをしながら言う。


「そうデスね。隊長は総司令官としての業務で多忙デスから」


 長身で美しい金髪をした外国人美女もストレッチしながら同意した。


「恵比寿さん、キャナルさん、そろそろ作戦開始ですよ」


 向日が緊張感のない二人に注意する。


「だから、俺達にさんづけしなくていいって、向日ちゃん」

「そうよ。アナタは上官なんだから」


 二人はマイペースな態度で向日に言う。


「そうですけど。この部隊でも、隊員としても先輩ですから」


 いつもは落ち着いている向日がすっかりペースを乱されていた。


「ハハハ。無駄だ、無駄。こいつらをマトモに相手にするだけ損だぞ」


 武器で素振りをしていた京橋が笑って向日に助言した。


「そうそう。この二人はバカなんだから」

「確かに、戦闘バカ。ハハッ」


 組み手でウォーミングアップしていた男女二人が楽しそうに話す。


 二人は長身でうりふたつの美男美女だ。


「うるせぇ。このバカ双子」


 恵比寿が二人を怒鳴る。


「はぁ、下北さん達ちょっと黙ってもらっていいですか。いいですか皆さん、作戦を確認しますよ」


 向日がトホホという感じの溜息をつきながら話を戻した。


「左右を第三師団で、正面を私達零隊で攻めて陽動をかけます」

「で、その隙をついて第三特務隊ダイサンを中心にした特務隊が潜入して人質を救出するだろ」


 悪びれることなく恵比寿が向日の説明を途中で取り上げる。


「そうです」


 統率するのを諦めた向日は注意するをやめて話を続けた。


「お前ら、全力で暴れてこい」

「おう、待ってました」

「くぅー、ヒサビサに暴れられるわ」

『ワクワクしまくり』


 京橋の言葉に面々はテンションが上がる。


「スリー、ツー、ワン、ゴッ」

『ウォーーーーーーーーーー』


 向日のカウントで零隊の隊員達は駆け出した。


「オラオラ、どうした、どうした、骨のある奴はいないのか」


 先陣を切った恵比寿が、レーザーで強化された槍で敵兵を嵐のように吹き飛ばす。


「ヒャッホーイ、もっと早く動きなさい。そんなんじゃ、止まっている的の方がマシよ」


 恵比寿に続いてキャナルが自分の体と同じくらいの弓からレーザーで形成された矢を放ち、敵兵を踊るように射抜いていく。


「緑、敵兵の座標をスコープに出すよ」


 双子の弟が小型飛行艇を左手で操縦しながら、右手でガッドを操作し姉をサポートする。

 

「サンキュー波、もっと高く上がっていいよ。この高さじゃ狙われちゃう」

「オッケー、外すなよ」

「誰に言ってんのよっと」


 返事をしながら緑は、一キロ距離以上離れた敵兵を体と同じ大きさの狙撃銃で撃っていく。


「おぉ、やってるな」

「総司令、のんきに眺めてないでください。敵が来ています」

「ああ、気持ち良さそうに飛んで来ているな」


 宙に浮かぶスケボーに似た装置に乗った敵兵が、京橋と向日の所に向かって来ていた。


「おーし、始めるか」


 京橋は二本を組み合わせた大型の刀を構えた。


「特式〈天空の型〉」


 脇に刀を構えてグッと左足を前に踏み込んだ京橋は、刀を大きく下から上に振り上げる。


『ぎゃああああああああああ』


 京橋が繰り出した斬撃は半月状のレーザー攻撃となって敵兵を装置ごと真っ二つにした。


「さすがですね。では、私も」


 京橋の攻撃を運良く避けていた敵兵めがけて向日はシーガッドを飛ばした。


「特式〈天翔てんしょうの型〉」


 向日はシーガッドを階段のように登っていき、残っていた敵兵を斬り落とした。


 ものの数秒で零隊は敵兵の三分の一を倒していた。

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