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戦国都道府県  作者: 傘音 ツヅル
第一部〜始まりの英雄 黒雷編〜
46/55

Record No.046 淡路三つ巴の戦い(5)

「どうした、どうした。特級兵士が二人もいてこの様か」


 わざと安い挑発をしながら龍河は守達へ銃撃を続けていた。


「速いし、正確だし、全然近付けないね」


 劣勢なのにサウスは楽しそうに笑っている。


「笑っている場合か。速さを上げるどころか、走りだしも出来ない」


 ガッドのシールドから守達は出れないでいた。


「そろそろチャージ出来たし、援護するから突っ込んじゃえば」

「簡単に言ってくれるな。だが、賛成だ」


 目が合った瞬間、守は超速で駆け出し、サウスは銃撃で援護を開始した。


「新橋君のシステムを使わせてもらおうかな」


 サウスはシーガットスパイダーフォーメンションを展開し、それを使って反射弾を龍河へと撃ちまくった。


「こしゃくな」


 龍河は全く動じず、冷静に早撃ちでサウスの攻撃を相殺していく。


「やっと懐に入れました」


 守は間合いに入ってすぐに龍河に斬り掛かった。


「やっと来たか」


 龍河は動じず、左手の銃で攻撃を受け止めながら持ち替えた小刀で斬り返した。


「くっ」


 守は予測していたように刀を避け、すぐさま斬り返す。


 龍河も同じように刀を避け、同じように斬り返した。


「さすが黒雷と呼ばれるだかあるな。斬り合いではかなわん」


 対等に斬り合っていたように思われた龍河の右腕から血が滴り落ちていた。


「いえ、先生の得物は銃ですから」


 そう答える守も左肩に銃撃が掠っていた。


「先生、降伏しませんか?」


 気配を消していたサウスが、龍河の後頭部に銃を突きつけて警告する。


「お前達、俺が教えたのは戦闘だけだったか?」

「サウス、上だ」


 守が叫んだのとほぼ同時に現れた男が割って入って来た。


「よう守。今年は良く会うな」


 長刀を肩に掛けて立っていたのは攻だった。


「会いたくはないんだけどな」

「そう言えば、あのお嬢ちゃん強くなったな。あれはお前より速いんじゃないか?」

「なっ、神楽坂と戦ったのか?」

「まあまあ慌てるな。殺しちゃいない。少し相手をしただけだ」


 思わず動揺した守を、攻は宥めて話を続けた。


「悪いが、上の命令で四神と手を組むことになってな。邪魔をするぞ」

「守のお兄さんにしてはお喋りが上手いですね」

「こんな兄貴だから弟は真面目になったんだろ」

「おい、赤竜。そろそろお喋りはお終いだ」

「あー、すみませんね。弟と会ってついはしゃいでしまった」


 すっと真顔になった瞬間、攻の姿が消えた。


「はっ」


 背後の気配を察知し反応した守は攻の攻撃を受け止めた。


「はぁああああああああああ」

「くぅう」


 攻の力押しの鍔迫り合いに守の血管が熱くなる。


「おぉおおおおおおおおりゃあああああああああ」


 僅かな息継ぎの間を狙って守は攻の腕を取って投げ飛ばした。


「せえええい」


 攻は平然と投げ飛ばされた勢いを利用して空中で回転して着地をした。


「ハハハ。やっぱりお前とやるのが一番だ」

「こっちは全然楽しくない」


 楽しそうに笑う攻と仏頂面の守がぶつかり合う火花が空間のあちこちで散っていく。


「先生、早く守の援護に行きたいのでどいてもらえませんか?」

「俺がどうぞとでも言うと思ったのか?」

「いいえ。だから、強行突破します」


 サウスは今までとは違い、殺気のこもった早撃ちを繰り出した。


「そう言えば、お前の腹黒い所が苦手だったな」


 龍河もサウスと同等の早撃ちで返した。


「同族嫌悪ってやつですかね」

「そうだな」


 守達と同様にサウス達も超速でぶつかり合った。


「あの外人やるな」

「余所見していたら死ぬぞ」

「自分が殺そうとしている相手の心配とはお優しいことで」

「別に心配なんてしていない」

「なら遠慮なく」


 深く腰を落とした攻は強烈なボディブローを決めた。


「がはっ」


 急所を避けたものの、かなりの一撃をもらった守は顔を歪ませる。


「お前は私情を捨てたつもりだろうが、まだ甘いぞ」

「攻兄だってそうだろ」

「何だと?」

「今も躊躇したくせに」

「そうだな。まだお前を九州に連れて帰りたいと思っているからな」

「俺は帰れない。守らないといけない家族がいる」

「ああ、知っている。可愛い姪っ子がいることもな」

「じゃあわかるだろ。俺は頑固なんだよ」

「子供の頃からな」


 二人はそっくりな笑顔を浮かべ、構え直してから駆け出した。


「はぁああああああああああああああああ」


 高くジャンプし振り上げた刀を守が斬り下ろす。


「ちぇりゃああああああああああああああ」


 地面に足をめり込ませるほど腰に力を入れ、攻は斬り上げた刀で弾き返した。


「特式、幻影三連突きの型」


 態勢を整え、守はすぐさまに攻撃を繰り出した。


「ぐっ」


 神楽坂よりも正確で速い守の突きが攻の肩を一突き捉えた。


「まだまだ」

「調子に乗るな。竜技、紅蓮乱れ独楽」

「がはっ」


 攻の本気で放った技に守の体に鎌鼬かまいたちにやられたような傷が刻まれた。


「くそ」


 息を整える為、守は一旦距離を取った。


「ぐはっ」


 攻に斬り掛かろうとしたとき、龍河に蹴り飛ばされたサウスが守の横に転がり落ちてきた。


「面目ない」


 ハアハアと息を乱したサウスが守に謝る。


「大牟田、無駄な抵抗はやめろ。いくらお前でも我々二人相手は無謀だ」


 龍河が冷静な表情で守に警告する。


《隊長、本隊から撤退命令です》


 突然、新橋の声が無線で届いた。


「わかった。すぐに合流する」

《了解》

「サウス、走れるか?」

「逃げるぐらいは」

「十分だ。行くぞ」

「なんだ、帰るのか?守」

「ああ。あんた達が帰してくれるならな」

「いいぞ。気をつけて帰れ」

「は?」


 邪魔されると思っていた守は拍子抜けする。


「こっちも帰って来いって言われたよ。じゃあ、またな」

「しばらく会いたくない。行くぞサウス」

「何かわからいけど助かった。正直走るの厳しかったんだ」


 そう言って笑うサウスに肩を貸しながら、守はゆっくりと歩き出した。

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