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戦国都道府県  作者: 傘音 ツヅル
第一部〜始まりの英雄 黒雷編〜
43/55

Record No.043 淡路三つ巴の戦い(2)

「副管理官、堺一級兵の部隊が戦闘を開始しました」


 機士長が高石に報告をしてきた。


「よし、我々も敵軍後方を目指して出発だ」

『うぉぉぉぉおおおおおおおお』


 高石の号令に兵士達は士気を上げる叫びで応える。


「ちょっと待ったぁぁああああああああああ」


 木の上から飛び降りて現れた男の声が広野中に響いた。


「ここを通すわけにはいかないな」


 九竜軍の軍服を着た男は腕組みをしたまま言った。


「たった一人で馬鹿じゃないのか」

「大軍でやれば楽勝だろう」

「九竜軍め、ボコボコにしてやる」


 口々に油断した口調で黒帝軍の兵士達が男へと襲い掛かった。


「馬鹿者、止まれ」


 高石が止めようとしたが、既に遅かった。


「はぁっ」


 短く声を発し、長刀を振り払って男は兵士達を弾き飛ばす。


 煙が晴れた地面には、軽い数十人の兵士達がピタリと動きを止め静かに横たわっていた。


「お前達、手を出すな。徒町、俺がやられたら半径一キロで周囲を囲んで決して奴を出すな」


「了解しました。ご武運を」


 高石と似た風貌をした徒町は相手の男の力量と状況を理解し、黙って命令に従った。


「待たせたな。まさか、こんな所で赤竜に会うことになるとは」


「俺も有名になったな」


 首をコキコキと鳴らしながら攻は話す。


「のんびり喋りに来たわけじゃないでしょう」


 高石は中段に刀を構える。


「そうだな」


 攻も中段に刀を構えて高石と向かい合った。


「はぁぁあああああああああ」

「とりゃやああああああああ」


 先に高石が駆け出し、それに応えるように攻も駆け出す。


「しっ、しっ、しっ」


 右、左、右、と持ち手を入れ替え、片手突きを高石が繰り出したが攻は紙一重でかわした。


「さすが司令官クラスという所か、並みの動きじゃないな」


 距離を取って構え直した攻は楽しそうに笑う。


「そんなあっさりかわされると嫌味でしかないですよ」


 そんな攻に高石は軽く溜息をつく。


「悪かった。俺は素直なんだ。許せ」

「そういう真っ直ぐな所はそっくりだ」

「お前、守と仲良いのか?」


 そう言い訊く攻は一瞬だけ兄の顔になる。


「別に仲は良くありません。昔から知っているだけです」


 照れ隠しのように無愛想な態度で高石は答えた。


「そうか、そうか。そういえば、守と気が合いそうだな、お前」


 ニヒヒとまた嬉しそうに攻は笑う。


「その余裕ぶりは嫌いです」


 ブーストを高速と超速を織り交ぜながら高石は攻を攻めだした。


「速い。だが、軽い」


 ほんのわずかな隙を見つけ、攻は刀で受け流しながら高石の右腕を掴んで一本背負いをくらわせた。


「ぐはっ」


 思いっきり背中を地面に叩きつけられた高石は口から血を吹き出し、大の字に倒れた。


「守に影響されすぎだな。お前はテクニックで相手を翻弄する方が向いていると思うぞ」

「はぁっ……はぁっ……これから、殺す人間に……アドバイスは不要でしょ」


 短く呼吸をする中、高石は攻に言い返す。


「いや、いろいろと情報を聞きたいからな。お前は捕虜にさせてもらう」

「……」


 高石は沈黙することで、何も話すつもりはない意思を示した。


「まあ、素直に話してもらえるとは思ってないさ。じゃあ、行くかな」


 攻が高石を抱えようとしゃがんだ瞬間、正確に頭目掛けて銃撃が飛んできた。


「おっと、危ない」


 わずかな空気の振動と音を察知した攻は、首を動かして銃撃をかわした。


「てぇぇぇええええい」


 銃撃を囮にして近づいていた人影が空中から攻に斬りかかる。


「とりゃああああああ」


 攻は素早く反応し、片手で攻撃を斬り払った。


 人影は攻の攻撃の反動を利用して高くバク転して距離を取った。


「お前は攻と一緒に潜入してきた奴か」

「あのときの借りを返させてもらいます」


 攻の視線の先には鋭い目つきで睨む神楽坂が立っていた。


「何だ、今日は守と一緒じゃないのか?」

「隊長はあなたを相手にする暇はないの」

「さすが守が見込んだ奴だ。生意気な性格をしとる」

「その減らず口を黙らせてあげる」

「やってみろ」


 風が止むのと同時に二人は超速でぶつかり始めた。


「副管理官、立てますか?」


 神楽坂が攻を引き離した隙に秋葉原が高石の方に駆け寄って来た。


「悪い」


 高石は秋葉原の肩を借りて歩き出した。


「神楽坂、あんなに速かったか?」

「あいつは成長が早いんです」

「守先輩が来たのかと思ったよ」


 高石が勘違いする程、神楽坂のスピードは戦う度に速くなっていた。


「驚いた。スピードだけなら守を凌ぐかもな。だが、お前も軽い」


 攻は高石にやったように神楽坂の腕を掴んで投げ飛ばそうとしたが、寸前で飛んできた狙撃に邪魔されて手を離してしまった。


「まだ新手がいたか」


 攻は狙撃してきた方向を見ながら軍服についた焦げを手で払った。


《カグちゃん、一人でやる必要ないよ。これは戦争なんだから》

「わかっています」

《しかし、さすが隊長の兄貴だね。この距離の狙撃を寸前でかわすとは》


 自分と攻との距離を改めて見た渋谷は思わず感心してしまう。


「渋谷さん、関心してないで移動しますよ」


 新橋が次の最適な狙撃地点をグラナに表示して渋谷に見せた。


「わかってるよ。行くぞ」


 渋谷は言い返しながら歩き出した。


「本気を出さないとやばいな」


 余裕を見せていた攻の表情が険しいものになる。


「だから言ったでしょ。黙らせるって」


 神楽坂は攻の気迫に物怖じせず言い返し、二刀流に構えた。

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