表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦国都道府県  作者: 傘音 ツヅル
第一部〜始まりの英雄 黒雷編〜
42/55

Record No.042 淡路三つ巴の戦い(1)

「第三特務隊隊長、大牟田守だ。特別任務より帰還したと摂津管理官へ伝えてくれ」

「了解しました。少々お待ちください」


 守備兵は詰め所の電話から支部の司令部へ確認を始めた。


「これでやっと落ち着けますかね」


 上野が背伸びをしながら言う。


「早稲田が総司令から命令されたときには四神軍との戦闘が長引いているということだったからな。そのまま出兵ということもあるかもしれん」


 秋葉原が腕組みをして話す。


「お待たせ致しました。お通りください」


 確認を取った守備兵がセキュリティを解除して門を開き、守達を中に誘導した。




 

「大牟田、よく帰って来たな」


 管理官室で待っていた摂津は守に近寄り、グッと力のこもった握手をする。


「任務失敗と帰還が遅くなり、申し訳ありません」


 守は手を離し、最敬礼の姿勢で謝罪をした。


「気にするな。お前や第三特務隊が無事に戻ってなによりだ」


 ポンポンと守の肩を叩き、摂津は豪快に笑う。


「それでだ」


 椅子に座った摂津は少し気まずそうに話し始めた。


「戻って早速悪いんだが」

「何なりと命令して下さい」

「助かる。四神軍とのやり合いがな長引いていてな」

「早稲田から膠着状態になっていると聞いていますが」

「ああ。俺が指揮を取っていたんだが、大阪支部の管轄でレジスタンスが暴れてな。高石を呼んで総大将を任せたんだが」

「何か問題でも?」

「四神軍の総大将が手強くてな」

「もしかして龍河さんですか?」

「ああ。サウスが何とか抑えてくれてはいるんだが、地味に押されていてな」

「自分達をしごいてくれた人ですから」


 守は苦笑いまじりで昔を思い出す。


「俺達同期の中ではお前みたいな存在だった」


 摂津も懐かしそうに話す。


「と、思い出話は置いといてだ。というわけで、高石を助けに行ってやってくれ」

「了解しました。でも、本部は問題ありませんか?」

「まあ、うるさいのはいるが。京橋と表参道が手を回しているから今は気にするな」

「わかりました」

「それと、例のシステムが調整出来たと六本木がデータを送ってきたから確認しておけ」

「まだ時間は掛かると言っていたのに、さすがあいつは天才ですね」

「では、大牟田隊長。準備が出来次第、出発してくれ」

「了解しました」




「やっぱし淡路に直行か」


 守の命令を聞いた渋谷が溜息まじりで言う。


「処罰はなかったんですか?」


 いつものように渋谷を無視して秋葉原が守に訊く。


「ああ、今の所はな」

「わかりました」


 守の言葉で秋葉原は現状を理解した。


「というわけで、一時間後に出発だ。各自、装備の補給と点検をしておけ」

『了解』




「四神軍が攻めて来ました」


 伝令の兵士が高石に報告する。


「わかった」


 高石は立体地図を見ながら返事をした。


「本当に嫌な攻め方をしてくるね」


 フッと笑い、サウスが言う。


「昔からこういう所が嫌いなんです僕は」

「そうだね。それは僕も同感かな」

「どうされるつもりですか?」


 ちょっと苛立った様子で堺が高石に訊いた。


「陽動作戦でいく」


 地図をタッチしながら堺は続ける。


「まず敵の上陸を誘って本軍を誘き出し、手薄になった船の将鬼を討つ」

「人員はどうする?」


 サウスが内容を確認する。


「我々関西方面の軍で陽動をやります。第五特務隊と向日で船へ行ってもらいます」

「私がいたら支障が出るのでは?」


 向日が高石に訊いた。


「前のときに言ったのは部下がいたら君が動けないと思ったからで、君個人は十分戦えるから大丈夫だよ」


 高石の代わりにサウスが笑顔で答える。


「それならばいいのですが」


 少し赤面しながら向日は納得した。


「では、早速動いてくれ」

『了解』




「将軍が味方で良かったですよ」

「いつでも相手になるぞ安芸」

「勘弁してください」

「将軍、先陣が黒帝軍と戦闘開始しました」


 俊敏な動きで伝令が戦況を伝える。


「そろそろ淡路を取らないと上がうるさいからな」

「確かに。政治家のジジイ達はすぐに文句を言いますからね」

「そう言ってやるな。上は上で大変なんだろう」

「じゃあ、コテンパンにしてきてやりますか」


 肩を回しながら安芸は歩き出す。


「安芸、敵の動向をしっかり見ろ。決して深追いするなよ」

「わかっています。見かけによらず、心配性ですよね」


 ニカッと太陽みたいな笑顔を浮かべ安芸は小型船で島へ向かった。




「堺、敵は見えたか?」


 高石は本陣から戦況を確認する為に通信で呼び掛けた。


「うじゃうじゃやって来ています。あちらも勝負を賭けてきたみたいですね」

「わかった。天王寺、フォロー頼むな」

「わかりました」

「それで、どうする?」

「別に。真正面から攻めるさ」

「意外だな。お前は何か仕掛けると思ったが」

「俺の役目が囮だからだ」

「それはそうだが」

「無駄口叩いていないで、その自慢の腕を大いに揮って来い」

「わかったよ」


 ちょっと溜息をして天王寺は駆け出した。


「第一部隊、突撃ぃいいいいいいいいいい」

『うぉおおおおおおおおおおおおおおおお』


 天王寺の勇ましい声に奮い立った兵士達がはち切れんばかりの声を出しながら後に続く。


「おらおら。黒帝軍なんかに負けんじゃねえぞ」

『おおおおおおおおおおおおおおおおおおおお』


 安芸が掛けた号令に、四神軍の兵士達も負けじと大地を揺るがすような声を出して駆け出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ