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戦国都道府県  作者: 傘音 ツヅル
第一部〜始まりの英雄 黒雷編〜
39/55

Record No.039 ギルド防衛戦(5)

「馬鹿な、私が全く歯が立たないとは」


 忍者男は右腕と左目を失い、血だらけで立っていた。


「普通の人間なら、とっくに死んでいるはずなんだが」


 守は軽く疲弊しているものの、余裕で話している。


「ご苦労さん」


 低い男の声が聞こえたかと思ったら、レーザーの銃弾が忍者男を撃ち抜いた。


「ガハッ」


 血を大量に口から吹き出しながら忍者男は倒れた。


「もっと役に立つと思ったんだけどな」


 突然現れたライフル型の銃を構える浅草が、銜え煙草をしながら言った。


「どうして仲間を殺した?」

「仲間?違う違う。こいつは試作品だよ」

「それはどういう意味だ?」

「悪いな、ボスから口止めされているんだ」

「わかった。ボスの名前ごと訊き出してやる」

「ハハハ。さすが黒雷様だ。用心しておいて良かったよ」


 パチンっと浅草が指を鳴らすと、小型の光速道が空中に出現した。


「千人じゃ足りないと思って十倍用意したんだ」


 浅草の言葉通り、小型光速道から出現した兵士は一万を超えていた。


「こんな数をどうやって?」


 さすがの守も動揺して疑問を口にしてしまう。


「いいだろう。冥土の土産というやつだ。答えてやる」


 浅草は余裕の態度で話し始める。


「まず、小型光速道は遠隔より特殊なレーザーを放射して空間を作りだし、固定型のゲートを必要としない方法を可能にした。まあ、かなりのエレルギーを必要とするから長距離移動は難しいがね。ちなみに私もこれで来たわけだ」


 機嫌良さそうに浅草は話し続ける。


「そして、人口減少の昨今、この数の兵士をどうやって用意出来たか。それはクローン技術での生産に成功したからだ」

「生産だと」

「フフ。何に怒ることがある?人間にナノマシンを注入して兵器として扱う軍隊と同じだろう」

「俺達は自分の意志でやっている。命を自分勝手に生み出すのとは違う」


 浅草の言葉を守は強く否定した。


「ハハハ。こんな時代にそんな綺麗ごとを本気で言っているのか?」


 涙が出るほど笑って浅草が言う。


「この外道が」


 守は怒りを抑えて刀を構える。


「かかれ」


 浅草の言葉に、兵士達は機械のような揃った動きで一斉に守へと駆け出していく。


「さすがの黒雷様も一万相手は無理だろう」


 少し離れた岩場に移動し、浅草は戦況を観察した。


『ぐぁあああああーーーーーー』


 数秒もしない内にクローン兵士達の叫び声が戦場に響く。


「どういうことだ?こんなことありえん」


 浅草の目にはグラナで表示されている兵士の数がみるみる減っていく様子が映っていた。


「何だあのビーム状のものは?データには無かったぞ」


 ガッドからの映像を確認して浅草は動揺する。


「はぁあーーーーー」


 守はクローン兵士達に体制を整える暇を与えないように斬って斬って斬りまくった。


「化物が」


 浅草は再び小型光速道を開き、四人の兵士を呼び出した。


 現れた兵士達は、守が倒した忍者男や神楽坂達が倒した兵士達と瓜二つの姿をしている。


「クローン部隊下がれ。お前達、あの化物を殺ってこい」

『了解』


 四人の兵士は姿は同じだが、感情が全く感じられない表情をしていた。


「さっきの奴もクローンだったわけか」


 守はゆっくりと歩きながら呼吸を整える。


「無駄な感情を無くした分、こいつらは手強いぞ」


 四人はプログラムされたような連携で守へと斬りかかった。


「はっ」


 守は次々に繰り出される攻撃を完璧に防ぎつつ、四人をバラバラに蹴り飛ばす。


「何をしている。死んでも負けるんじゃない」


 浅草は苛立ちを露にし、四人に命令した。


『了解』


 四人は同時に立ち上がり、ポケットから取り出した薬を飲み込んだ。


 薬の作用で四人の体は一気に膨張して、数倍の筋肉量になっていく。


『ガ、ガ、ガ、シャーーー』


 四人は完全に意識が無くなり、獣のように凶暴化した。


「とことん外道だな」


 怒りを通り越して、冷たい軽蔑の視線を戦いながら守は浅草へと向ける。


「戦争は勝たないと意味がないんだよ。負けたら全て終わるんだ」


 興奮した浅草は、血管を浮かびあがらせながら叫んだ。


「違う。戦争に意味なんてない。意味なんてあってたまるか」


 守も叫び反論する。


「意味は勝った人間が都合よく作るもんだろう」


 浅草はそう言って高笑いを浮かべた。


『ギャーーーーー』


 凶暴化した四人は斬られても斬られても、守へと襲い掛かってくる。


「いいのか?殺らないと殺られるぞ。ヒヒヒ」


 浅草は楽しそうに守を挑発した。


「……すまない。俺がしてやれるのは一つだけだ」


 守は奥歯を噛み締め、超速で四人の首を斬りおとした。


「どんなに綺麗事を並べても、戦争はただの殺し合いだ」


 四人の亡骸を見て、浅草は愉快そうに話す。


「お前はそれでも人間か」


 守が怒りに震えながら浅草に詰め寄ろうとした瞬間、ギルド支部の方角から凄まじい爆発音が聞こえてきた。


「俺なんかにかまってていいのか?」


 楽しそうに浅草は笑う。


「くそっ」


 守は刀を収めてギルドへと駆け出した。


「くくくっ。せいぜい頑張るんだな、黒雷様」


 浅草は笑いながら小型光速道へと消えていった。

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