Record No.036 ギルド防衛戦(2)
「やはり見たことのない軍服を着ています」
ガッドの映像を確認した新橋が守達に報告する。
「俺が正面、秋葉原、上野、新橋が右、渋谷、神楽坂、神田が左の軍勢を惹きつける」
『了解』
「突撃」
『たぁぁぁーーー』
守の号令を合図に、隊員達は一斉に敵の軍勢へと駆けていった。
「早速使わせてもらうか」
守は、黒龍が刻まれた銀色で円状の機械を黒刀の柄に取り付けた。
「ギルドシステム、リンクオン」
そう守が言うと、体内のナノマシンが反応して黒刀が黒いレーザー状のエレルギーに包まれた。
「なんかマンガみたいだな」
子供の頃好きだった話の武器に似ていて、思わず守は笑ってしまう。
「卑怯な気もするが、多勢相手だ。遠慮なく使わせてもらおう」
グッと腰を落として守は脇に刀を構えた。
「せりゃーーーーー」
掛け声と共に守が刀を振り抜くと、数十メートルに伸びたエレルギーが敵を一斉に振り払った。
「ぎゃあーーーーー」
「ぐぁあ」
「がはっ」
予期せぬ攻撃に敵は様々な断末魔をあげて倒れていく。
「これなら思いっきりやれる」
守はググッと拳を握りしめて敵に突進した。
「はっ」
敵軍を次々と倒していた守は背中に近づくクナイに気付いて打ち払った。
「ちっ」
クナイが飛んできた先で、忍者のような姿をした男が舌打ちをする。
「誰の差し金だ」
守は忍者男に訊いた。
「死ぬ人間に言う必要はないだろう」
「そう言うと思ったよ」
お決まりのような答えに、守は溜息をつく。
「その命、もらい受ける」
「悪いな、俺は戦場では死ねないんだ」
「神田、アーミーで一発ぶちかまし頼むよ」
アーミーの肩に乗って狙撃態勢に入っていた渋谷が軽い調子で神田に言った。
「了解。神楽坂、五秒数えたら突っこんでいいぞ」
淡々と渋谷の注文に応え、神田は神楽坂に指示した。
「了解」
そう答え、渋谷の反対側の肩に乗っていた神楽坂は前傾姿勢になった。
「五、四、三、二、一、発射」
カウントダウンの合図でレーザーが敵軍の中心に放たれる。
『ぐぁーーーーー』
爆発で敵兵が盛大に吹き飛び、混乱が広がっていく。
そこへ追い討ちをかけるべく神楽坂が斬り込んで行った。
「ギルドシステム、リンクオン」
素早く駆け込みながら、神楽坂は早速新しい武器を起動した。
以前使っていたものと同じく二丁の拳銃だが、やや銃身が長く作られていた。
「超速でかく乱するので、渋谷さん援護頼みます」
「任せてカグちゃん」
「行きます」
神楽坂は超速を起動して次々に敵を撃ち抜いていき、渋谷もそれに合わせるように周囲の敵を狙撃していった。
「カグちゃんの射撃、鋭くなってる?」
「あの武器が神楽坂の神経とリンクすることによって正確さが増しているみたいです」
「ギルド凄いね」
「それだけじゃないみたいですよ」
神楽坂は近接戦になった途端、銃を変形させて二本の短刀を手にしていた。
「はぁあーーーーー」
今度は曲芸師のように縦横無尽に動き回って神楽坂は敵を斬っていく。
「俺達の出番あるかな?」
「どうでしょう」
渋谷達は守のような戦いぶりの神楽坂に、呆気に取られつつ援護を続けた。
「どりゃーーーーー」
両腕と両足にギルドの装備を身につけた上野は豪快に敵を吹き飛ばしていた。
「上野、あまり前に出るな」
調子に乗っている上野を心配して秋葉原が声を掛ける。
「大丈夫ですよ。今日は絶好調みたいなんで」
秋葉原の制止を聞かず、上野はどんどん前に出て行く。
「ったく、あのバカ」
「いつでも援護出来るようにシーガットを待機させていますから」
溜息をしながら上野を援護する秋葉原に、苦笑いしつつ新橋が言った。
「すまんな」
「うぉりゃーーーーー」
そんな二人の心配を他所に上野は突き進んでいく。
「上野さん、急激なスピードで何かが向かって来ています」
異変を察知した新橋が上野に警告する。
「どあっ」
咄嗟に防御した上野だったが、大岩のような男のタックルをまともに受けてしまった。
「上野。くそっ」
吹き飛ぶ上野を見て振り返り、秋葉原はマシンガンで敵に銃撃を浴びせる。
「特務隊も大したことないな」
戦国武者のような鎧を纏った男の手の平からシールドが発生し、銃撃は全て無効化されてしまった。
「新橋、上野の状態確認と奴のシールドの解析を頼む。俺は何とか時間を稼ぐ」
「了解」
「ギルドシステム、リンクオン」
秋葉原のマシンガンは棒状に変形し、先端からレーザーの刃を放出させた槍になった。
「得物が変わろうが、お前は私に勝てない」
「かもな。だが、自分の可能性を信じろと尊敬する人に教えられたんで、退けないんだ」
「なら死ね」
鎧男は巨体には似合わないスピードで間合いを詰めて拳を繰り出した。
秋葉原は横回転で攻撃をかわして鎧男の背後に回り、鋭い突きを放った。
「ちぇりゃーーーーー」
「ふんっ」
鎧男はシールドを起動して突きを防御した。
《秋葉原さん、解析完了しました。それと、上野さんは無事です》
秋葉原の耳に無線で新橋の報告が入る。
《すみません。さっきはヘマしましたけど、任せてください》
「新橋、どうすればいい?」
秋葉原は距離を取って新橋に訊いた。
《シールドの強化をする際に、それ以外の箇所が強度が低下するみたいです》
「わかった。俺が正面から行くから、お前達で後方から攻撃してくれ」
『了解』
「作戦会議は終わったか?」
鎧男は余裕な態度で秋葉原に訊く。
「待ってくれるとはありがたいね」
秋葉原は鎧男の注意を引く為に怒涛の勢いで攻撃を繰り返した。
「ふっ」
鎧男は鼻で笑いながら秋葉原の槍を蹴りで弾き飛ばし、空いた胴にすかさず蹴りをくらわせる。
「がはっ」
秋葉原は何度か地面を回転しながら吹き飛んだ。
「秋葉原さん」
「死ね」
秋葉原へ駆け寄ろうとした新橋もまともに蹴りをくらい、地面に叩きつけれてしまう。
「俺が相手だ」
新橋に止めを刺そうとした鎧男の前に上野が立ちはだかる。
「お前一人で勝てると思っているのか?」
「特務隊をなめるなよ」
《やっぱり俺がいないと駄目だね》
聞き覚えのある声に、上野は突然上空から隣に降りてきた男を見た。
「お前、なんでここに」
 




