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戦国都道府県  作者: 傘音 ツヅル
第一部〜始まりの英雄 黒雷編〜
31/55

Record No.031 超速の壁(1)

 四神軍が淡路島に進行する少し前、守達はギルド支部内にある薬院邸で世話になっていた。


「大牟田、家族はいるのか?」


 話しながら、薬院は将棋の駒を持ち、パチリと指した。


「妻と娘が一人な」


 守も返事をしながら駒を指す。


「お前がね」


 含みを持たせた言い方をし、薬院はフッと笑った。


「あの頃は兄貴より強くなりたい気持ちで頭がいっぱいだったからな」


 思い当たる節があった守は、申し訳なさそうに言った。


「私も子供だった。恋に恋する何たらってやつだよ」


 薬院は照れ隠しで言葉の最後を濁す。


「・・・・・・」


 守は何か言いたげな顔で薬院を見た。


「これでも女なんだよ」


 顔は美しいが、般若のような目で薬院は守を睨んだ。


「それで、具体的に何をさせたいんだ?」


「言っただろう。試作兵器のテスト相手になって欲しいと」

「別に俺達でなくても、ギルドにも手練れはいるだろう」

「黒帝の最新機器を使いこなす特務隊がいいんだよ。本当は兵器の解析が理想なんだが」


 わかりやすく回りくどい言い方をし、チラッと薬院は守を見る。


「出来るわけがないだろう」


 軍事機密漏洩につながることなど、守が許すわけがなかった。


「だろうね」


 薬院は全く期待していなかったという感じで、フッと鼻で笑う。


「こちらも、一つ条件がある」


 守は言葉短く言った。


「何だ?」

「データは好きなだけ取ればいい。だが、絶対に外部に俺達のことは漏らすな」

「わかった。プロジェクトチームだけの極秘事項としよう」




「隊長、あの女と昔何かあったな」


 ソファに座り、天井を見上げていた渋谷が言った。


「何を言っているんですか」


 神楽坂がムスッとした顔で睨む。


「カグちゃんの気持ちはわかるけど、隊長も男だからね」

「私には関係ありません」


 いつも通りの流れで、渋谷にからかわれた神楽坂は怒って背を向けた。


「お前達、待機の意味わかっているのか?」


 呆れ気味に秋葉原が言った。


「しかし、ここは落ち着きませんね」


 珍しくソワソワした神田が会話に入る。


「まあな」


 そう答え、秋葉原は部屋を見回した。


 守が薬院の部屋へ行った後、秋葉原達はだだっ広い応接間で待たされていた。


「僕達、どうなるんでしょう?」


 新橋が不安げに訊く。


「心配するな。隊長を信じろ」


 優しく笑い、秋葉原はポンっと軽く新橋の肩を叩いた。


「隊長は信じてますけど、黒帝に僕達の居場所はあるのかなって」


 新橋がボソッと言った。


「そうだな。下手に動けば、俺達をハメた人間の思惑通りになるだろうし」


 秋葉原はどうしたものかと考え込んでしまう。


「戻ってから考えればいいさ」


 渋谷は軽い口調で続ける。


「まずは四神軍との戦闘に参戦して、落ち着いてから説明すればいい」

「そう上手くいけばいいですけど」

「心配し過ぎると肌に悪いよ」

「あなたは楽観的過ぎます」


 渋谷の軽口に、神楽坂がキーっと顔を赤くしていたら、ドアが開き守が戻って来た。


「何だ。また渋谷がやったのか?」

「またって何ですか」


 守の決めつけに、ブーブーっと大袈裟なジェスチャーをしながら渋谷が返す。


「よし。皆、聞いてくれ」




 守はお決まりの流れで、渋谷をスルーして話し始めた。


「障害物がないから、今回はスピード勝負で攻めるぞ」

『了解』


 守の言葉に、隊員達は気合いの入った声で返事をした。


 守達は、学校のグランドみたいな土地で演習をしていた。


「俺、上野、神楽坂は正面から。渋谷、秋葉原は狙撃で援護と撃破、神田は狙撃のサポートをしつつ全体のフォロー。新橋は左右からガッドで陽動だ」

『了解』

《そろそろ始めるぞ》

「こっちはいつでも大丈夫だ」


 薬院からの通信に、日差しを手で遮りながら守は返事をした。


《テスト開始》


 薬院の声がスピーカーから聞こえてすぐ、ビィィィーーーーーっと、ブザー音が響く。


《前方から戦車型(ローラー歩行タイプ)アンドロイド三体、その後方に人型(二足歩行タイプ)アンドロイド二体進行中》


 開始直後、神田から無線で情報が届いた。


「新橋、人型を足止めしろ。上野、神楽坂、戦車型を一人一体ずつ片付けるぞ」


 状況を把握し、守は命令する。


『了解』


 返事をし、神楽坂たちは行動へ移った。


「ウォッシャーーー」


 上野が先頭の戦車型を下からすくい上げるように殴り飛ばす。


 空高く舞い上がった戦車型は、逆さまになって地上へ落ちて大破した。


「こんなもの」


 ボソッと呟きながら神楽坂は近づき、戦車型の関節にすれ違いざまに数発撃ち込んだ。


 神楽坂が通り過ぎると、戦車型はボロボロと崩れ落ちながら倒れた。


「まず大牟田を倒せ。二体同時に攻めるんだ」


 既に戦車型を斬り刻んでいた守へ、薬院は攻めを集中させた。


「隊長、すみません。足止め出来ませんでした」


 人型の動きが速く、ガッドは容易く抜かれてしまっていた。


「新橋、気にするな。お前達、手出しするなよ」


 新橋に穏やかに言った後、守は全員に命令した。


 隊員達は構えを解き、スポーツ観戦するぐらいの気持ちで様子を見守る。


「ハッ」


 短く声を出し、守は二体同時に人型の首を斬り落とした。


「さすがだな」


 そう呟き、薬院はどことなく楽しそうに笑った。

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