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戦国都道府県  作者: 傘音 ツヅル
第一部〜始まりの英雄 黒雷編〜
29/55

Record No.029 淡路合戦(3)

「せりゃーーーーー」


 天王寺は小太刀を両手に次々と四神を斬って捨てていく。


『ウォォォォォ』


 兵士達も天王寺に続き突進していった。


「手ごたえが無さ過ぎる」


 上手く誘い込まれた気がして天王寺は不安を抱いていた。


『隊長、バリケード展開完了しました』


 泉佐野が通信で報告する。


「わかった。お前達は堺の軍が到着するまで待機していろ」

『援軍を出さずに大丈夫ですか?』

「何か気にかかる。敵の出方がわかるまで様子見だ」

『了解』

「とりゃーーーーー」


 頭上が暗くなり、天王寺が見上げた先には刀を振りかぶった安芸がいた。


「くっ」


 刀を交差させて攻撃を受け止めた天王寺の肩がビシビシと音を鳴らす。


「お前、指揮官だな」


 そう言って安芸はニヤリと笑った。


「だったら何だ」

「ここで死んでもらう」


 言い終わるや否や、体を乱回転しながら斬撃と蹴りを組み合わせて安芸が襲い掛かった。


「簡単に殺せると思うなよ」


 天王寺も不規則な軌道を見切りながら攻撃を返していく。


「これじゃ援護出来ないぞ」

「速すぎて手が出せない」


 二人の攻防の凄まじさに黒帝軍の兵士達は見守るだけしか出来ずにいた。


松原(まつばら)、先へ行け」


 一旦距離を置き、天王寺は坊主頭で色黒な男に命令した。


「ですが」

「すぐに追いつく」


 松原の心配を払いのけるように天王寺は叫んだ。


「了解。全軍進めっ」


 松原の号令を聞き、兵士達は天王寺を避けて前へ進み始めた。


「黙って行かせるんだな」


 立ったまま自分を見る安芸に天王寺は静かに訊いた。


「俺は強い奴しか興味がないんでね」


 余裕の笑みを浮かべながら安芸は答える。


「それは俺も同意見だ」


 天王寺は刀を握り直し駆け出した。




「龍河将軍、安芸司令が黒帝軍と戦闘開始しました」

「わかった。敵陣地へ一定間隔で砲撃を続けろ」

「了解」

土佐(とさ)、海上はどうなっている?」

《南淡から黒帝軍が船でしてきています》


 男の声で西淡の海上の状況が伝えられた。


「銃魔なら陸から狙撃で迎え撃つと思ったんだが」


 顎を右手で触りながら龍河は考えにふける。


《このまま迎え撃ちますか?》

「いや、お前はこっちに戻って安芸を援護しろ。俺がそっちの指揮を執る」

《将軍がですか?》

「船を堕とされたらマズイからな」

《了解》


 土佐は少し不満だったが、龍河が警戒する銃魔に恐怖を感じ命令に従った。




「まだか」


 堺は兵士に怒鳴る。


「敵基地からの砲撃が止みません」


 天王寺達の後方にいた堺の軍は四神軍の遠距離砲撃で足止めをされていた。


「くそ、これでは作戦が・・・・・・」


 堺は苛立ちでギリっと鳴らして奥歯を噛みしめる。


「どうされますか?」

「アーミーを先頭にゴリ押しで行くぞ」


 いつも冷静な堺が熱い檄を飛ばす。


「了解。アーミー部隊、進軍開始」


 堺に言われ機士長が部隊に無線で指示を出し、アーミーのシールドを盾に兵士達は進んで行く。


「急げ、意地でも突破しろ」


 堺はさらに兵士達に檄を飛ばした。




「ウオォーーーーー」

「ハァァアーーー」


 天王寺が斬りかかり、それを雄叫びを上げた安芸が弾き返す。


「まだまだ」


 天王寺はブーストで追い込みをかけ始める。


「そろそろ終いにしよう」


 安芸も負けじとブーストで応戦した。


 二人の剣がぶつかり合い、戦場に鼓膜を破るような音を響かせる。


「オラ、オラ、オラ」


 天王寺はエンジンが掛かり、どんどんスピードを上げていく。


「ていっ、ていっ、ていっ」


 安芸も血管を浮き立たせながら攻防を繰り出した。


「天王寺、無事か」


 激しいせめぎ合いで疲労していた天王寺に、遠くから呼ぶ堺の声が届く。


「ああ、何とか」


 距離を取ったタイミングで天王寺は返事をした。


「待たせた」


 軽く息を荒げた堺が天王寺に駆け寄って来て言った。


 堺は四神軍の砲撃を突破し、一人だけ先行して天王寺に追い付いたようだった。


「二人相手はさすがに面倒だな」


 堺が現れ通信で何かを確認した安芸は、照明弾で視界を塞ぎ逃げ去った。


「待てっ」

「天王寺、よせ」


 追撃しようとした天王寺を堺が呼び止める。


「まだ追いつける」

「兵と合流して正面からやり合えばいい」

「わかった」




「敵さんが見えてきたね」


 サウスは楽しそうに言った。


「隊長、真剣にお願いします」


 眼鏡を掛けた女軍人が冷めた態度で釘をさす。


「リラックスだよ交野(かたの)ちゃん」


 部下からの厳しい目つきをサウスはウィンクで受け流した。


「うちの隊はこれでいいんじゃないんですか」


 交野の側に立っていた長身の男が言った。


八尾(やお)、お前もだ」

「俺もかっ」

「隊長、この人達大丈夫ですか?」


 少し離れた場所で、小柄な女性隊員の木津川(きづがわ)が向日に訊いた。


「心配はない。彼らは銃魔率いる第五特務隊だぞ」

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