表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦国都道府県  作者: 傘音 ツヅル
第一部〜始まりの英雄 黒雷編〜
26/55

Record No.026 天神暗殺任務(4)

「隊長、どういうツテなんですか?」


 車を運転しながら秋葉原が訊いた。


「ギルド(商業組合)の支部だ」

「ギルドですか?」


 理解しつつも、思わず秋葉原は戸惑ってしまう。


 ギルドは各地方で戦火が広がったとき、大手企業が行政に対抗すべく立ち上げた組織で、全国で経済活動をする為、中立の立場を取っていた。


「図々しい奴だが頼りになる」

「手を貸してくれるんですか?」

「面倒は覚悟しないとだが」


 守は気が重そうな声を出す。


「着いたら起こしますよ」

「頼む」


 守は秋葉原の提案を受け入れ、珍しく深い眠りについた。




「敵襲」


 車に衝撃が走り、後部座席の渋谷が叫んだ。


「秋葉原、走り続けろ」


 両頬を叩き、守は無理やり頭を起こしながら指示する。


「渋谷、神楽坂、敵の足を止めろ」

『了解』


 二人は荷台のスペースから敵が乗るウォーターバイクに狙いを定め撃っていく。


「神田は全員をサポート、新橋はギルドへ救難信号を送れ」

『了解』

「上野は秋葉原を守れ」

「了解」


 助手席にいた上野は敵を仕留めながら、前面のガラスを蹴破った。


「隊長、ギルドの警備ロボットがこちらに向かっています」


 神田がレーダーで察知し、報告する。


「わかった。秋葉原、ガンガン飛ばせ」


 そう言い残し、守は車から飛び出した。


「本当に化物だな」


 一瞬で消えた守を見て渋谷がボソッと漏らす。


「私より負傷しているのに」


 神楽坂が複雑そうに言った。


「大丈夫。カグちゃんも十分に化け物だから」

「褒めてます?(けな)してます?」


 睨んではいるものの、神楽坂は頬を赤く染めていた。




「目標確認。これより殲滅する」


 冷静な口調で守は報告する。


「くっ。時間がないな」


 攻との戦闘で負傷したせいで、普段より呼吸が荒くなっていた。


「はっ」


 短く息を吐き出し、守は警備ロボットの頭上に乗った。


 警備ロボットが払いのけようと腕を振り回したが、守は軽く避ける。


「ガーガッガッ」


 守の動きについてこれず、警備ロボットはオーバーヒートした。


「すまんな」


 独り言を呟きながら守は警備ロボットの頭を斬り捨てた。


『隊長、三体まだ来ます』


 神田が通信で守に知らせる。


「上等だ」




「神田、隊長の反応は?」


 通信が途絶えた守の安否を秋葉原が確認する。


「応答はありませんが、レーダーには反応あります」

「渋谷、どうだ?」

「すまん、引き離せそうにない」


 追手の数が多く、撃っても撃ってもキリがなかった。


『秋葉原、速度を上げろ』

「了解」


 通信で守に言われ、秋葉原は速度を上げる。


「え?あれって・・・・・・」


 守の姿を確認した上野が声を失う。


「警備ロボットの照準がこっちに定まっています」


 神田の言葉に全員が固まる。


『いいから突っ込め』


 秋葉原は守を信じ、アクセルを踏み込んだ。


「はあーーーっ」


 雄叫びのような声を出しながら守が刀で突きを放つ。


 突きの衝撃で転倒した警備ロボットのレーザーが車を横切り追手に命中した。


「隊長、乗って下さい」


 新橋がドアを開け、手を守に差し出す。


「行け」

 

 乗りながら守は秋葉原に指示した。




「止まれ」


 ギルドの警備兵が門前で車を止めた。


「何者だ?」

「薬院に大牟田守が来ていると伝えて欲しい」

「薬院様は忙しいんだ。帰れ」

『いい、通せ』


 スピーカーからハスキーな声で指示が出る。


「はっ」


 兵はスピーカー近くのカメラに向かって敬礼をした。


「失礼しました。お通り下さい」


 警備兵は謝罪し、門を開いた。


「すげえ、ビルばっか」


 中に広がる高層ビル群に上野が口を半開きで声を出す。


「不可侵条約があるからな」


 秋葉原が車を進めながら言った。


 戦争が始まり、高層ビルはテロ対策で低層に変えられていた。


 中に入ると、青いスーツ姿の男が車を止めるよう合図を出してきた。


「申し訳ありませんが、ここからは徒歩でお願い致します」


 男の佇まいは上品さを感じさせた。


「すごい場違いな気がします」


 新橋が小声で話す。


「確かにな」


 神田も静かに同意した。




「こちらでお待ち下さい」


 洋館のような大広間に案内され、守達は適当なイスに座った。


「大牟田、久しぶりやな」


 そう言って現れたのは、女優のように美しい女性だった。


「ああ」


 守は少し無愛想に返事をする。


「それで、黒雷さんが何の用かな?」


 座り話し始めた目の鋭さに、空気がピリッとなったように隊員達は感じた。


「下関に渡りたい」

「別にいいが、一つ条件がある」


 薬院は守にグラナを手渡す。


「それはギルドの新商品なんだよ」


 グラナには人型ロボットが映し出されていた。


「それで?」

「その新商品の実験相手になってくれ」

「・・・・・・わかった」


 仕方なく守は承諾する。


「契約成立だ」


 薬院が立ち上がり、手を差し出す。


「ああ」


 無愛想な表情のまま、守は握手した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ