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戦国都道府県  作者: 傘音 ツヅル
第一部〜始まりの英雄 黒雷編〜
23/55

Record No.023 天神暗殺任務(1)

「現時刻をもって合同訓練は終了とし、遠征任務を開始する」


 険しい表情をした摂津の声がマイクを通してミーティングルームに響く。


「九竜軍と四神軍が侵攻してきたとの情報が入った」

「連合軍ということですか?」


 一人の隊長が挙手をして訊いた。


「別々の経路を取っているが、同盟を組んだ可能性が高い」


 隊長達に動揺が走る。


「九竜はともかく、四神が動いたのは予想外だ」


 盛大な溜息をつきながら摂津が腕組みをした。


「今まで侵攻してきたことはなかったですからね」


 横に座っていた高石が小声で呟く。


「どうも九竜の新しい代表が切れ者らしい」


 マイクを離し、舌打ちをして摂津は言った。


「では、各隊の割り振りを伝える」


 背筋を正し、摂津は戦況説明をしながら各隊への指示を出していった。




「以上だ。準備が出来た隊から出発してくれ」


 そう言って摂津は作戦会議を終わらせた。


「摂津さん、自分の隊は指示を受けていないんですが」


 ざわつく中、守は揉みくちゃにされる。


「お前の隊には別に頼みたいことがあってな」


 他の隊員達が部屋から出たのを確認して摂津は話し始めた。


「それで、任務の内容は何ですか?」

「天神の暗殺任務だ」

「了解しました」


 守は動揺することなく、スッと敬礼して任務を承諾する。


「すまんな。地元で手を汚させて」

「いえ、任務ですから」


 軽く微笑んで守は言った。


「武運を祈る」


 摂津は守の目を見つめて拳を突き出す。


「俺は戦場では死にませんよ」


 守も力強く拳を当て返した。




午前二時マルフタマルマルに出発する。各自、万が一を含め準備しておけ」


 守の言葉に隊員達は任務の危険の高さを感じた。


「て言っても、独り身だしな」

「お袋さんがいるだろ」


 緊張感が感じられない渋谷に秋葉原が呆れて言う。


「口うるさいからパス」


 渋谷は逃げるように走って行った。


「ああ言っているけど、ちゃんと任務前にお母さんに連絡してますよね」


 皆の前で強がる渋谷の本音を笑顔で新橋がばらす。


「そういう奴だよ」


 秋葉原も笑って言った。


「私は時間まで控え室で休んでいます」

「神楽坂、体は大丈夫か?」

「任務には支障ありません」


 心配する守にいつもの態度で神楽坂は答える。


「ならいいが。無理はするなよ」

「わかっています」


 歩き出した神楽坂の背中を見つつ、守は小さい溜息をついた。




「まずは博多で現地の工作員と合流し、そこで装備等を整える」


 光速道の前で整列する隊員達に守が言った。


「どうした新橋、緊張しているのか?」


 顔が強張っている新橋にニヤケ面で上野が訊く。


「潜入任務初めてなので」

「そう固くなるなって」


 ワハハと笑いながら上野が新橋の背中を叩いた。


「痛いですって」

「そう、その調子。リラックスだよ」

「おい、出発するぞ」


 守は上野達の緊張感の無さに頼もしさを感じた。




「お待ちしていました。会えて光栄です」


 博多の秘密支部で出迎えたのは太宰府という男の二級兵だった。


「よろしく頼む」


 守は太宰府が差し出した手を握り返しながら言った。


「では、これに着替えてください」


 手早く太宰府が黒のボストンバッグをそれぞれの前に置いていく。


「なんでついて来るんですか?」


 更衣室へ向かおうと歩き出していた神楽坂が、振り返って渋谷を睨んだ。


「いや、一人で寂しいかと」


 ハハハと笑う渋谷に、綺麗な平手打ちがスパンという音を響かせ決まる。


「自業自得だな」

『そうですね』


 守の言葉に他の隊員達が声を揃えた。




「可愛いな、何度見ても」


 神楽坂のスカート姿を見て、渋谷はデレっとする。


「また叩かれたいですか?」

「それは勘弁してください」


 鋭い眼光で神楽坂に睨まれ、渋谷は苦笑いで謝る。


「やっぱり警備は厳重ですね」


 すっと切り替えて神楽坂は話し出した。


「そうだね。何と言っても、大将のお膝元だからね」


 私服姿で変装し、二人は喫茶店から九竜軍の本部周辺を偵察していた。


「でも、街の人達は普通ですね」


 初めて戦場以外の敵地を見た神楽坂はしみじみと口にする。


「まあ、他の土地に出れないこと以外は平和だからね」

「コーヒーなんて久しぶりです」

「確か、特殊シェルターで栽培しているとかで、食料問題も改善したって聞いたな」

「黒帝領も改善しているのに、どうして戦争しているんでしょう」

「一度抜いてしまったものは鞘になかなか納まらないからね」


 遠くを見るような目で呟いた神楽坂に静かに渋谷が答えた。




「明日、夜襲を仕掛ける」


 隠れ家の広間で守達は作戦会議をしていた。


『了解』

「作戦は部隊を二つに分けて行う」


 内通者から手に入れた立体映像の図面を広げ、守は話し始めた。


「俺と神楽坂で侵入する。他は退路の確保をしつつ待機だ」

「私がですか?」


 思わぬ守の言葉に神楽坂は訊き返してしまう。


「何だ、やりたくないのか?」


 守はちょっと意地悪する。


「やらせてください。ぜ、是非」


 嬉しさのあまり、神楽坂は声が上ずってしまった。


「いいか、スピード勝負になる」

「はい」

「遅かったら置いていくからな」

「はい」

「よし。では、作戦会議はこれで終了だ。皆、しっかり休んどけ」

『了解』




「秋葉原、一時間以内に戻らなかったら退却しろ」

「了解」


 返事を聞いて、守は通信を切った。


「神楽坂、準備はいいか?」

「いつでも大丈夫です」


 昨日とは違い、いつもの冷静さを取り戻した神楽坂がしっかりと返事をする。


「行くぞ」


 守の掛け声を号令に二人はブーストで裏口へと駆け、警備兵を気絶させた。


 敵兵を物陰に隠した守はガッドでセキュリティを解除し、小さく扉を開く。


《上は俺が行く。お前は正面だ》


 敵兵の位置を確認した守は手で神楽坂に合図を出した。


《了解》


 神楽坂も手早く合図を返す。


《三、二、一、ゴッー》


 守の合図で駆け出した二人に敵兵も反応するが、なす術なく気絶させられてしまう。


「いい調子だ。一気に行くぞ」

「了解」


 守に褒められ、神楽坂は顔に出さないよう内心で喜んだ。




「ただ待つのは歯痒いね」


 迷彩マントを着た渋谷がビルの屋上から九竜軍本部を観察していた。


「隊長を信じるしかないだろ」


 一緒に待機していた秋葉原が言った。


「それはそうだけどさ」

「気持ちはわかるけどな」


 全てを悟った感じで渋谷の肩に秋葉原が手を置く。


「神田、いつでも出れるように頼むぞ」

「大丈夫です。電源入れて待機していますから」


 配送業者に扮した神田達が道路脇に駐車して待機していた。


「カグちゃん、待ってるからな」




「もうすぐ天神の寝室だ」

「はい」


 守達は次々に敵を倒しながら、もの凄いスピードで侵入していく。


「ここだ」


 音を殺して、守達は天神の寝室で立ち止まった。


 ゆっくりと中に入った瞬間、レーザー銃弾が守達を襲った。


「きゃっ」


 咄嗟に神楽坂を蹴り飛ばし、守は銃撃を避ける。


「くそ……」


 転げながら壁に隠れた守の腕からは血が滴り落ちていた。


「守、外は包囲した。逃げられんぞ」


 部屋の中から守の名を男が叫ぶ。


「なんでここにおるとや」


 懐かしい人間の声に守は舌打ちをした。

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