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戦国都道府県  作者: 傘音 ツヅル
第一部〜始まりの英雄 黒雷編〜
15/55

Record No.015 淡路合同訓練(1)

「お疲れ様です」

「おう」


 東京本部に戻った守を秋葉原が出迎える。


「カグちゃ~ん」


 冗談で抱きつこうとしたのを神楽坂が避け、渋谷は大袈裟にこけた。


「お前もご苦労だったな」


 それを無視して秋葉原が神楽坂を労う。


「いえ、私は大したことはしていません」


 神楽坂は軽く両手を左右に交差して謙遜した。


「またまた~結構な活躍だったって聞いているよ」


 地面に横になったまま渋谷が茶化す。


「隊長、行きましょう」

「ああ。お前は部屋で休んでいいぞ。俺は報告してくる」

「荷物は僕がお部屋に持って行きます」

「頼む」

「ちょっと、誰か相手してよ~」


 先を歩く三人を渋谷は叫びながら追いかけた。




「大牟田、よくやってくれた」


 ポンポンと守の左肩を叩き表参道が労う。


「上手く事が運んでくれて安心しています」


 それに守は笑顔で応じた。


「あの狸爺は悔しい顔をしたか?」


 京橋が愉快そうに守に訊く。


「いや、涼しい顔は崩れませんでしたね」

「ふん、格好つけおって」


 つまらないという顔で京橋は湯呑みに口をつける。


「それで黒幕は誰かわかったか?」


 今度は表参道が守に訊いた。


「いえ、若松管理官は東北独自の判断で押し通しました」

「そうか」

「こんなくだらんことをやるのは大体決まっているだろ」

「まあな。俺も目星はつけているが、あの人は用意周到だからな」

「いつか尻尾を掴んでやる」


 そう言いながら京橋はバシっと左の手のひらに右の拳を叩きつけた。


「名古屋は制圧完了したんですよね」


 区切りがついたのを見計らって守は話題を変えた。


「ああ。首謀者である知立は行方知れずだが」

「この状況では遠征は難しいですね」

「しばらくは各地を偵察しつつ国力を上げねば」

「それは特務隊に任せておけ」


 表参道に向かって豪快に笑いつつ京橋が言った。


「お前はあの野郎が余計なことをしないように目を光らせていろ」

「わかった」


 何だかんだ言って息の合う二人を守は微笑ましく感じる。


「それで大牟田、また頼みたいんだが」

「何でしょう?」

「神戸支部へ行ってくれ」

「神戸ですか?」

「今度、淡路島あわじしまで近畿と中国地方の大規模合同演習をやることになってな」

「合同演習ですか」

「現状の軍事力調査と今後の遠征準備を兼ねて計画した」

「自分は何をすればいいんですか?」

「お前というか第三特務隊だ」

「要は地方の奴らを鍛えつつ反乱の芽がないか調査しろってことだ」


 二人の会話に京橋が割って入ってきた。


「わかりました。そういうのは得意分野です」


 守は京橋の真似をして胸を力強く拳で叩いて返事をした。




「二週間後に出発し、一ヶ月の期間淡路島で演習をやる」


 翌朝、守は隊員達を集めミーティングをしていた。


「具体的にはどういう日程なんですか?」


 神田が挙手をして質問する。


「まず一週間は個別訓練のみ、残りは各支部と第三特務隊とで実戦訓練だ」

「我々で支部全員ですか?」

「支部は日替わりだが、俺達は固定だ」

「なかなか無茶苦茶な計画ですね」


 秋葉原は思わず苦笑いした。


「っていうか支部の奴ら怒り狂うと思うけど」


 楽観的な渋谷もさすがに険しい顔をしている。


「それが狙いだ」

「わざと怒らせて何がしたいんですか?」

「単純に軍事力を高める目的が一つ」


 守は一拍間を置いて続けた。


「あとは俺達の力を見せつける」

「反乱の芽を潰す為ですか?」


 黙って聞いていた神楽坂が訊く。


「そうだ。だから俺達は簡単に負けるわけにはいかん。むしろ勝つ」


 そう答えた守はどこか面白がっているようにも見えた。


「一部隊の実力を見せて効果があるんですか?」


 今度は新橋が訊いた。


「一特務隊でこれだけなら東京本部はどれほどだと思わせられればな」

「それで作戦はお考えなんですか?」


 隊員達が黙ったのを確認して秋葉原が言った。


「俺と神楽坂、秋葉原と上野で組んで近接戦闘、渋谷が狙撃で援護、神田はアーミーでかく乱、新橋は全体のフォローだ」

「普通ですね」


 特別な作戦を期待していた新橋は拍子抜けした顔をする。


「陣形はな。だから、各自この二週間で俺が出す課題をクリアしてもらう」

「うわ、すごい嫌な予感がする」


 守の言葉を聞いて渋谷が露骨に嫌面をした。




「秋葉原さん、速度が落ちています。上野さん、反応が遅れています」


 モニターを確認しつつ新橋は指示を出す。


「わかった」

「きっつ」


 秋葉原達はブーストでの戦闘時間延長と戦闘技術向上の訓練をしていた。


「よし、もう一度だ新橋」


 秋葉原は一呼吸置いて促した。


「了解」


 新橋がプログラムした動きで手の平程の鉄球が秋葉原達に襲い掛かった。


「はっ、はっ、はっ」


 ブーストでかわしつつ秋葉原は鉄球を撃ち落していく。


「とりゃーーー」


 上野は同じくブーストでかわしつつ鉄球を叩き落としていた。


「まだまだいきます」

「頼む」

「どーんと来なさい」

「新橋ちゃん、今度は間隔をバラバラにしつつ速度を上げていって」

「わかりました」


 渋谷は連射時の命中率向上とブーストをしている味方の援護射撃訓練をしていた。


「渋谷さん、ブースト時の援護射撃の命中率が通常時より五パーセント低下です」

「くそ。もう一回」


 目を瞑って悔しがった渋谷が叫ぶ。


「では始めます」

「新橋、次のプログラムを頼む」


 アーミーの操作シュミレーションをしていた神田が催促してきた。


「了解。次は海上訓練です」


 新橋はすぐさまに対応し次のプログラムを起動する。


「新橋、隊長はどこ?」


 神楽坂が新橋に怒鳴ってきた。


「ごめん。隊長は北西だ」


 集中が途切れていた新橋は瞬時に気を取り直して情報を伝えた。


「遅い」


 新橋の指示と同時に守が神楽坂の目の前に現れる。


「くっ」


 何とか反応した神楽坂は守の攻撃を受け止めた。


 神楽坂は守と同速度での戦闘が出来るようにマンツーマンで指導されていた。


「新橋、全体を把握しつつ情報を処理しろ。まだ指示が遅いぞ」


 守は神楽坂と距離を取ってから新橋にダメ出しをする。


「すみません」


 新橋はオペレータールームで全隊員のサポートを同時にこなしていた。


「神田がアーミーで集中出来る為にはお前の技術向上が不可欠だ」

「はい」

「大丈夫だ。お前らならやれる」

「はい」


 守の期待の言葉に新橋は力強く返事をした。




「死ぬ」


 体力自慢の上野もさすがに疲れロッカールームで倒れこむ。


「今までも厳しかったけど、一番だな」


 タオルを頭に被り下を向いたまま秋葉原が言った。


「すみません。僕のサポートが遅くて」


 ドリンクを配りつつ新橋が謝る。


「いや、お前はよくやっているよ。もう少し落ち着けば大丈夫だ」


 神田が笑顔でフォローした。


「そうだね。情報は正確だから後は指示出しのタイミングだけじゃない」


 渋谷が神田のアドバイスに補足する。


「そう言えば隊長は?」

「個人トレーニングをされています」


 渋谷の問いに新橋が答えた。


「マジか、やっぱり化物だな」


 それを聞いて渋谷はげんなりしてベンチに横になった。




「おーやってるな」


 訓練場に入って来た京橋を見て守は面倒くさいと内心で思った。


「何しに来たんですか」

「可愛い後輩の訓練に付き合ってやろうと来たんだろうが」

「別に頼んでいません」


 守は冷たく京橋を拒否する。


「いやー体が鈍っていかん」


 京橋は毎度の感じで守の言葉を無視した。


「はぁ~」


 守は盛大に溜息をつく。


「じゃあ、一本だけですよ」

「そうこなくちゃな」


 嬉しい顔をして京橋は二本の刀を取り出し、それを組み合わせ大型の刀にする。


「じゃあやるか」

「お願いします」


 スッと二人は真剣な顔になり向かい合い、一斉に動き出した。


「せい、せい、せい」


 京橋はブンブンと風切り音を出して斬りかかる。


「はっ、はっ、はっ」


 体も武器も守より圧倒的に大きいのに動きは速く、守は防戦一方になる。


「ははは。やっぱりお前とやるのは楽しいな」

「こっちはきついだけですけどね」

「おらおら本気を出せ」


 ビーっとブザーが鳴り、二人は動きを止めた。


「どこに行ったかと思えば、自分の仕事をしろ京橋」


 モニタールームから表参道が怒鳴る。


「わかったわかった」


 うるさいのうとブツブツ言いながら京橋は武器を片付けた。


「邪魔したな」

「まったく、いつまで経っても変わらないなあの人は」


 守はマイペースな先輩に呆れつつも思わず笑ってしまった。

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