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プロローグ:悪夢の目覚めは黒猫と

 一体それは、何百回目の悪夢だろう。

 凄まじく密度の高い、重い空気が僕の肩に腰かける。

 顔を上げた先には、人、人、人。

 笑っている人、怒っている人、泣いている人。年代も性別もばらばらだが、一つだけ共通点があるとするならば、それらの表情は、それぞれ僕にとって最も辛く感じるものだということだろう。

 けれど、僕は平気だ。何故なら、これが夢だと知っているから。

 僕は何度も何度も同じ夢を見る。

 そして、この夢に出てくる人は皆、僕が出くわした事件の関係者だ。中には未解決の事件だってある。

 そう――これらは全て、僕の奇妙な体質のせいだ。

 事件招喚体質並びに事件邂逅体質。

 平たく言えば、何らかの事件の現場に偶然出くわしてしまう。そんな体質なのだ。

 ある人はそれを才能だと言い、

 ある人はそれを災能だと言った。

 まあ、当人である僕にとってはどっちであってもさしたる興味はないけれど。

 一つだけ、強いて良いところを挙げるとすれば、出くわした事件に巻き込まれて怪我をしたことだけは、一回もないということぐらいだろうか。

 夢の中で僕は目を閉じる。夢の夢は現実。目を覚ますには夢の中で眠ればいい。


 ――ん?


 その時ようやく、僕は周りにいた人々が皆いなくなっていることに気づいた。

 足元を見ると、代わりに、黒猫が一匹。

 なんでこんなところに黒猫が?

「!?」

 覗き込んだ拍子に黒猫は僕の顔に飛び掛り、丁度僕の口と鼻がふさがる形になる。

 黒猫を引き剥がそうと試みるが、相手はうめき声を上げる僕にはお構いなし。この夢は何度も見たことがあるが、こんな展開になったのは初めてだ。はっきり言ってかなり苦しい。このままじゃ息が――。


 *


「ぶはっ」

「あ、起きた」

 目を覚ますと、クロこと氷鉋黒羽ひがの・くれはが僕の鼻をつまんでいた。

 そうだ。今日はクロの家に遊びに来ていたんだった。

 しかし、寝ている無力な人間の鼻をつまむとは怖ろしい事を……。

「ずいぶんうなされてたわよ」

 おそらく後半はお前のせいだな。うん。

 クロに非難の目を向けながら、なるほどそれで黒猫か、と僕は納得していた。

 氷鉋黒羽は探偵だ。

 怖ろしくマイペースなところが猫っぽかったり、黒い服を好んで着る事から、「黒猫」という異名を持つ。本当はこの異名は「不吉な黒猫」という皮肉な意味も持つのだが、そっちの由来は僕は好きじゃない。

 夢の中で飛びかかってきた黒猫はまさに、こいつの事だったというわけだ。

 ちなみに、僕は黒猫ではなく、氷鉋黒羽という非常に読みにくい名前から一字取って、クロと呼んでいる。その代わり、こちらも立森司狼たちもり・しろうの司狼を略されてシロと呼ばれてしまっているが。

 まあ、その程度が丁度いいのかもしれない。

 事件なんて生臭いものは、派手じゃなくて構わない。

 だから、その事件に関わる者も、白黒モノクロなくらいで丁度いい。

前作から大幅に間が開いてしまい、申し訳ないです(汗)

この小説はシリーズ三作目となっておりますが、前作を読んでいなくても大丈夫です。

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