決勝戦 一神対四家5
十字は実力で八王寺を凌駕していた。
武器の性能を差し引いても十字のほうが上だっただろう。
そんな十字が敗れた原因は、上空からの攻撃をブルーローズとの戦いで見せていたからに他ならない。
同じ技を二度見せる場合は、相手に対策が出来ないような攻撃でなければならない。
横回転からの縦回転は来ると分かっていれば対処可能な技だ。
私は直刀を片手持ちに変え、四家に向ける。
懐に入り戦いたいのか四家は切っ先からそれるように体を動かすが、私はその動きに合わせ四家を牽制する。
そして今度はゆっくりと一歩歩を進める。
それに合わせるように四家はじりじりと後ろに下がる。
「はっきりした。四家は私よりも弱い」
「……そうかな?」
四家は言い返しながらも切っ先を見つめ続けた。
そうかな。つまりは、まだ私よりも優位に立てると考えているのか?
何か策があるのか?
ここは出方を伺うべきかどうか。
「一神! 終らせろ」
私が相手の出方を伺おうとしていると、橘社長から声が掛かった。
奏者の指が動かされた。
傀儡は動き出す。
物語の終わりに向って。
私はまた歩を進め、二歩目を踏み出す瞬間、指先を弾き一気に距離を縮める。
四家はこの動きを読んでいたのか、突きを弾き距離を詰めるために、右足をやや前に出す構えを取る。
弾こうとしているのか。
それならそれで構わない。私は両手持ちに変え首に視線を移しながら 突きを放つ振りをする。
淀みない動きで切っ先を四家の首に向け、突き出す動きをーー途中でピタッと止める。
四家は攻撃が来ると思い反応し、右のナイフを振り上げた。
私は止めた刀を返しながら上段に上げると、踏み込みと同時に一気に斜めに振り下ろす。
四家も咄嗟に反応し、左のナイフでガードしようとするが、私の刀はガードを弾き、四家の肩から腰に掛けて胴を一閃する。
しかし手には胴の抵抗は返ってこなかった。
来たのは制服を引き裂き、体をかすかに掠る感触のみだった。
切先に着いた血が飛沫となって飛び散る。
四家はガードをしながらも受けきれないと考えたのか、刀の到来を一瞬遅らせる間に私と同様つま先で地面を弾き後ろに飛んで致命傷を回避したようだった。
地面に四家が降り立つと斬られた制服がはらりと揺れ、白い肌に赤々とした傷跡が現れた。
「……痛い」
呟くとナイフを軽く放り、逆手に持ち直す。
「痛いのは……嫌だな」
痛もうが私には関係のないこと。
一思いに殺すなど私は指示されていない。
どんな形であろうとも最前の死を与えるのが私という傀儡に課せられた使命。
「……私は使命を受諾するのみ」




