第三回戦 五朗丸対百鬼
「おい、こいつは俺にやらせろよ! さっきの蹴りで頭にきてんだよ!」
「お前じゃ無理だ。こいつは怪我した八王寺はともかく、三月を無傷で殺っているから――」
俺の話も聞かずに五郎丸は飛び出した。
「馬鹿が!」
足の骨が折れているとは思えない速度で走ると、教師に向かいハンマーを振り下ろした。
「死ねや!」
教師は体を揺らすよようにハンマーを避けると、床を叩き割ったハンマーの柄を踏みつける。
「さっき言ったよな。問題を起こすなって」
教師は話しながら腰に手を回し特殊警棒を引き抜き、五郎丸の頭に叩きつける。
ゴギンと耳ざわりな音がすると、へし折れた。特殊警棒が。
どれだけ固い頭をしているんだよ。
五郎丸の頭からは血が噴出しているがふらついた様子はなかった。
これで武器は使い物にならなくなったし、五郎丸一人でも大丈夫かもしれないな。
俺はそう思い追いかける足を止めた。
「俺の頭を砕きたかったら、もっと硬い武器でも持ってくるんだな!」
五郎丸はハンマーを振り回し、教師を払い飛ばす。
空中で一回転し着地すると、教師はチラリと警棒を見て使い物にならなくなったと確認したのか、放り投げる。そして、ジャケットのボタンをゆっくりと外す。
その瞬間俺は未だに頭が回りきっていなかったことに気づいた。
武器がなくなった? そんなわけないだろうが。じゃあ、教師は三月と八王寺を何で殺したんだ? 何で突き刺して殺したんだ? 刃物に決っているだろうが!
「五郎丸引け!」
俺の叫び声と同時に教師はジャケットの裏側に手を入れナイフを取り出し五郎丸に投げつけた。
片手に二本ずつ計四本のナイフを。
その一連の動きには淀みがなく、教師の技量の高さが窺い知れた。
「ッ!」
五郎丸がハンマーを盾のように使いガードするが、隙間を縫うように、わき腹と太腿に二本のナイフが突き刺ささる。
鍛え抜かれたからだは研ぎ澄まされたナイフに突き破られた。
痛みで五郎丸の体の動きが止まった瞬間、教師は一瞬で距離をつめ、懐に手を入れ、五郎丸の鳩尾にナイフを突き立てた。
「五郎丸。お前は失格だ。死屍柴ヒルイの名を継ぐのは……お前じゃない」
冷たく言い放つと、ナイフを引き抜き血を払う。
こいつは護衛じゃない。この動きは……殺し屋の動きだ。
「馬鹿が……勝てねえって言っただろうが!」
俺は血を流し、倒れて行く五郎丸に言うと、五郎丸は俺を振り向き笑みを見せた。
言葉もなく、口も動かなかったが、あいつの言いたかったことが俺には伝わった。
『わりぃ』あいつの笑みはそう言っていた。




