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死屍柴ヒルイの後継者  作者: 也麻田麻也
十大組織長会談 死屍柴ヒルイ推参
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十大組織長会談 死屍柴ヒルイ推参8

 部屋中にピリッとした空気が漂い、ついでガチャンと言う音がした。音のほうに目を向けると、門脇ちゃんがカップを落としていた。

 わー。マイセンのカップが割れちゃっているよー。


 鼻腔にコーヒーのいい香りが漂ってきたから、零したのはコーヒーかな?


 門脇ちゃんは落として時にコーヒーを零してしまい、ズボンをびしゃびしゃに汚していた。

 まるで、おねしょしたみたいになっているけど、本人は全く気にしている様子は無かったね。ってか、気にする余裕なんか無いのかもねー。

 

 だって門脇ちゃんは目も口も限界まで広げ、体をブルブルと震わせているんだからねー。


 そっかそっか。門脇ちゃんは今日がヒルイちゃんとのファーストコンタクトだったねー。


 ヒルイちゃんに会って大抵の人が覚えるのは例えるなら、動物が絶対的な上位の捕獲者に出会ってしまった時のような感覚……うーんちょと違うかな? 

 ヒルイちゃんに会って覚えるのは恐怖じゃないからねー。


 門脇ちゃんの今の状態を例えるならなんだろうかな……。


 うーんヒルイちゃんに出会って覚えるのは絶望だからー……あっ、良いの思いついた。


 神の存在を否定していた物理学者が神に出会ってしまったときのような、全ての過去を否定されたときのような感覚だねー。


 そして、知ったんだろうねー。

 人間は神に似せて泥から作られた存在だって事を。ヒルイちゃんは神であり、自分は泥なんだ。

 自分はちっぽけな泥人形なんだとー。


 まあ、僕はそんな風には感じなかったけどねー。


「お前が門脇か。十代組織に入ったばかりの新米らしいが……ここには上下関係など無いんじゃから、肩の力を抜いて笑うといいぞ」


「……はっ! ハイ!」


 門脇ちゃんは急に立ち上がり、ヒルイちゃんに頭を下げた。おー。あの暴虐武人小僧ちゃんが人に頭を下げたよ。

 さすがはヒルイちゃんだねー。


「狩谷、タオルを出してやってくれんか?」


「はい。かしこまりました」

 狩谷ちゃんは一礼すると、部屋の隅に置かれたクローゼットからタオルを持ってきて、門脇ちゃんに手渡した。


「……ありがとうございます」

 門脇ちゃんはゆっくりとズボンを拭くと、テーブルの上に置かれた白いパズルに手を伸ばし、揺れ動いた心のように複雑な紋様を作り出したコーヒーを拭いた。

 彼の野心は面白かったんだけど、ここで終わりかな? まあ、五朗丸ちゃん程度を化け物って言っていた彼が本当の化け物に出合い、自分の無知さを痛感したんだからしょうがないかー。


「ありがとうございます」


 また、礼をすると、狩谷ちゃんにタオルを返した。


 ヒルイちゃんはそれを確認すると、組んだ足をほどき前かがみになり、膝に片肘をつき体重を預け、顔だけを組織長に向けた。隻腕で、失った腕側のスーツが下にだらりと垂れる。

 おっ、ついに始まるようだねー。


「さて、昨日一昨日と別な仕事があったんでのう、なかなか顔出しが出来んかった事を詫びさせて貰う。けれど、狩谷に映像は見せてもらったし、今朝の出来事も電話で聞かせてもらったぞ。あれはわしの不手際じゃった。水仙とササカワには本当に申し訳ないと思う」


「……どういう事ですか?」  

 水仙ちゃんがぼぞりと呟いた。まあ、水仙連合会の代表者は確か水仙会長の息子さんだから気になってもしょうがないよねー。


「三月君を殺したのは、負の遺産じゃ。あれの責任はワシの従者狩谷が取らせてもらう」


 水仙ちゃんが狩谷ちゃんをチラリと見ると、狩谷ちゃんはこくんと頷いた。なんだなんだー? 狩谷ちゃんが殺人鬼ちゃんを殺すのかなー?


 うーん。どうやら僕が知らない何かがありそうだねー。


 もう、ヒルイちゃんも相棒……っと、これは違うかな?


 僕とヒルイちゃんの関係は……共犯者かな? 


 アハハハハ。

 共犯者の僕に隠し事するなんて酷いなー。

 そう、僕らは共犯者。ヒルイちゃんと僕らはねー。

 

 僕らは継者争いを仕組み、裏世界の秩序をぶち壊そうとしている、裏世界のテロリストなんだよねー。


 阿鼻叫喚、死屍累々、魑魅魍魎が跋扈する世界がもうすぐやってくるよ。

 あー楽しみだなー。


「さて、そろそろ頃合かのう」

 ヒルイちゃんが呟き目で狩谷ちゃんに合図を出した。


「はい」

 返事をすると、壁のスイッチを押した。


 すると、ずっと言う音と共に部屋の壁が開けゴマと呪文を掛けられたかのように真ん中から左右にスライドしていった。そしてその先には候補者と脱落した五朗丸ちゃんと百鬼ちゃんの姿があった。


 おっと訂正かな。五朗丸ちゃんは辛うじて生きているけれど、一人は間違いなく絶命しているから数えなくて良かったなー。


 確かに頃合かもしれないねー。

 さあ、そろそろ決戦の時かな。優勝者は誰なのかってハラハラドキドキは僕にはないけれど、楽しめそうだねー。あー、本当にポップコーンとコーラを持ってくるんだったよー。


 この候補者選びは出来レースだった。知っているのは共犯者の僕らだけ。だから竜胆ちゃんは使い捨ての六波羅ちゃんみたいな、地位だけは高いけど弱い子を代表にしちゃったんだよね。

 だから水仙ちゃんは三月ちゃんみたいな養子であり、組最強の人間を選出しちゃったんだよね。


 この違いは知っているかどうか。知らされていたかどうか。


 まあ、知らなくてもしょうがないよねー。


 死屍柴ヒルイは天涯孤独の孤高の超人。


 唯一であり無二の存在だって事は裏世界に足をいれたその日に聞かされるようなことだもんねー。


 算数の一+一の様な一番初めに習うことだからねー。


 だから、しょうがないよねー。


 僕だってつい先日聞かされるまでは知らなかったんだからねー。


 唯一無二の存在であるヒルイちゃんに……。


 天涯孤独であるヒルイちゃんに……。


 死屍柴ヒルイに……息子がいたなんてさー。


 後継者はもう決まっている。


 あー楽しみだなー。ヒルイちゃんの後継者ちゃんの初舞台が。決勝戦の後に訪れる開戦の狼煙がねー。

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