十大組織長会談 死屍柴ヒルイ推参6
橘ちゃんが五大組織に加入した日に、ヒルイちゃんも戦線離脱した狩谷ちゃんの代わりに新たな従者を雇ったんだよね。それは元竜胆組お抱えの殺し屋で、類まれな暗殺技能を持ち、尚且つヒルイちゃんを崇拝している子だ。
名前は確か梔子ちゃんだったかなー。
彼は狩谷ちゃんと比べても遜色ないほど強かったねー。
けれど彼は狩谷ちゃんの代わりは何も出来なかった。
ヒルイちゃんの片腕として戦闘では成果を上げ続けたけれど、裏世界の楔であり防壁であるヒルイちゃんの従者の仕事は出来なかったんだよね。
橘ちゃんの提案した赤きガーベラを会談の場に呼び戻し、五大組織ではなく六代組織にするという提案を受け入れちゃったんだから。橘ちゃんのヒルイちゃんを助けるためにって言葉を鵜呑みにしちゃってね。
それが契機になり、十大組織にまで増えてしまったんだよね。
当時の十大組織は、今の水仙連合会と三叉のスコーピオンの代わり黒百合の下部組織が名を連ねていたんだよね。
十組織のうち五組織が黒百合の参加の組織で、ほとんど裏世界の実権は橘ちゃんが握っていたといっても過言じゃなかったね。まあ、二年後狩谷ちゃんが戻ってきて、十大組織を再編成し、今の橘ちゃんの思惑を阻止することが出来たからいいけどね。
けど、今思うと橘ちゃんは今日と言う日を予期していたのかもしれないな。自分の傘下の組織を十大組織から外されても、騒ぎもしなかったんだよね。それは、急がなくても何れは自分のものになると思っていたからなんだろうね。
あの時にはもう一神ちゃんと言う自分と同等まで育つであろう原石を見つけていたのかもなー。
いやー。やっぱり黒百合の女帝は怖くて面白いな。そう思いながら、僕は橘ちゃんを見る。
「ふっ」
ササカワちゃんを一言で黙らせた橘ちゃんは笑った。
「身の振り方くらいは分かるようだな」
「身の振り方ね」
呟きながら佐藤ちゃんが葉巻を吹かした。
「何か問題かい?」
「いいや。俺のとこはもう候補者も負けちまったから偉そうな事は言えねえけどよ、あんたの言い分だと、もうヒルイの旦那の後継者はあんたのとこの坊主が取ったような言い方だと思ってな」
「そうとしか思えないだろう。残った三人で一番強いのはうちの一神だからね」
佐藤ちゃんは葉巻の煙を口から吐き出す。
「そうとは決ってねえだろ。姫宮の譲ちゃんのとこと狩谷ちゃんのとこのやつだって残ってんだろ」
「ふっ」
橘ちゃんはまた笑うと、佐藤ちゃんに笑みを向ける。
「零の坊やは認めても、四家ちゃんはまだまだ餓鬼だろ。なあ、姫宮さん」
「……何か?」
姫宮ちゃんが橘ちゃんを睨みつけながら言った。殺気を隠す気も微塵もないと言った感じだねー。
「あれはあんたの姉の子だろ? 覚えているよ。私が目を隠してやったんだからね」
何かを隠すようなジェスチャーをしながら笑いかけると、姫宮ちゃんがソファから腰を上げた。
おっ、第四ラウンドは姫宮ちゃんと橘ちゃんかー。
これは因縁の戦いだー。
僕が興奮してくると、狩谷ちゃんが姫宮ちゃんの前にすっと割り込んだ。
「姫宮様……お茶のお代わりはいかがですか?」
「……いいえ、結構です」
断わりながら姫宮ちゃんは腰を下ろした。
さすがは狩谷ちゃんだねー。こういう事が出来なかったから梔子ちゃんはお役ごめんになったんだよねー。
「橘さん一つ言わせて貰います。私は組織の長としても殺し屋としてもあなたには勝てません。けれどあの子は違います。祖父の才能を一身に受けた天才です。私なんかとは才能が違いますからね」
「ほう。言うようになったね。メアリーの首の前でわんわん泣いていた餓鬼の頃とは違うようだね」
「ええ。もう違いますよ。そしてあの子も……あなたに捕まっていた頃の弱い子ではないですよ」
姫宮ちゃんと橘ちゃんが火花散らしてにらみ合っていると、ゴホンと狩谷ちゃんが咳払いした。
そして狩谷ちゃんがポケットに手を入れ、スマートフォンを取り出した。スマートフォンは着信中なのかな、ウーウー鳴ってるね。
「皆様、談笑中申し訳ございませんが、ご主人様からの電話ですので、お静かに」
その言葉で、十大組織の長達は口を閉じ、狩谷ちゃんに視線を向けた。
中には緊張したかのように唾を呑み込むものもいるね。
そんな中、狩谷ちゃんが電話に出た。




