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死屍柴ヒルイの後継者  作者: 也麻田麻也
十大組織長会談 死屍柴ヒルイ推参
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十大組織長会談 死屍柴ヒルイ推参4

「そういえば鏡谷様、十字さんはどこで見つけたんですの?」


 談笑の口火を切ったのはササカワちゃんだった。


 おー、面白くなりそうだな。ポップコーンとコーラを持ってきて映画鑑賞気分で見たかったよー。


「ああ、うちの十字は街でナンパしたんすよ。何か問題でもあったっすか?」


「ええ。あの子は山百合学園を抜け出た子だったので、あなたの元にいると知っていれば直ぐに迎えに行きましたものを」


「それは申し訳なかったっすね。あいつが山百合の子だとは知らなかったので、連絡できなかったんすよ」

 鏡ちゃんがホストスマイル全開でササカワちゃんに答えた。


 おー、責めるねー。前回の血判式の時は、十字ちゃんを知っているやつが何人かいるって言っていたから、確実に十字ちゃんの過去知っているはずなのにねー。さすがはホスト風。嘘をさらりとつくねー。

 このままボトルを入れさしちゃったりしないかなー。


 僕が楽しんでみていると、黒百合派閥のドン、橘ちゃんが話に参加した。


「鏡谷。あのお譲ちゃんはうちも狙っていた子なんだよ。シスターに言わないのは別に良いが、なぜうちにも知らせなかったんだい?」


 橘ちゃんが赤々とした唇を引き上げ、威圧感いっぱいの笑みを向けると、鏡ちゃんはごくっと唾を飲み、額に脂汗を掻き始めた。


「すっ、すいません。あいつの戦闘力に眼が眩んで······手元に残したくなって······本当にすいませんッした!」

 鏡ちゃんはソファから飛び降りると土下座をした。


 ありゃりゃ、力関係がはっきり出ちゃってるな。鏡ちゃんも実力は相当高いのにね。まあ、それでも黒百合の幹部クラス位だから、黒百合に君臨する女帝には敵わないかー。


「そうかい」

 土下座する鏡ちゃんにクスッと笑いかけると、細めた目に部屋が一瞬で凍りつくんじゃないかと言うほどの、殺意を込めた。わー寒い寒い。

「私はうちに紹介しなかった事をどうこう言う気はないさ。お前の所に良いのがいると分かればどんな事をしても手にいれていたからね。けれどね······あんたがろくに鍛えもせずにこの候補者争いに送り込んで死なせたことに腹が立っているのさ」


 鏡ちゃんの肩がガクガクと震え出す。あーこれじゃノルマに達しなかったホストがオーナーに土下座しているようだねー。


「あの子はガキの時から私が目を付けていた子なんだよ。私の所に来ていれば間違いなくうちの幹部でも上位に位置する才能があった子だと言うのに······よくもダメにしてくれたね······」


 あっ、これはヤバイ。殺気の質が変わったよー。これは殺しちゃうかもなー。


 そう思った瞬間、ガチャンと言う音が部屋に響いた。


「おやおや、すまんのう。最近ではもう湯飲みが重くなってのう」


 竜胆ちゃんが好好爺といった感じの笑みを浮かべ言った。おー、さすが歴戦の勇者、橘ちゃんの殺気が渦巻くこの部屋でよくあれだけの事できるねー。さすがは竜胆ちゃんだね。


「湯飲みが重く感じるならそろそろ引退時じゃないのかい? ねえ、竜胆さん」


殺意の矛先を鏡ちゃんから竜胆ちゃんに替えてきたね。さあ、好好爺はどうやって乗りきるのかな? ワクワク。


「引退のう」呟きながらヤギを思わせるお髭を弄った。「そうじゃのう、この候補者選びで······橘の嬢ちゃんの所が負けたら引退でもするかの」


「ほう。それじゃあまだ引退できないようだね。うちのやつが負けることはないからね」


 橘ちゃんの自信と殺意が溢れ出す瞳を竜胆ちゃんが穏和な笑みで迎え入れる。おーさすがは七十数歳の裏世界歴約六十年の大ベテランだ。ササカワちゃんとは違い、微塵も本音が漏れてないねー。


 先に折れたのは橘ちゃんだった。竜胆ちゃんにどんなに殺気を送ろうと暖簾に腕押しだと分かったんだろうね。


「鏡谷、席に戻りな」

 いまだに土下座を続ける鏡ちゃんを顎でソファに促すと、視線をササカワちゃんに送った。おっ、第三ラウンドはササカワちゃんと橘ちゃんのバトルかな?


「シスター。今度また視察に行かせて貰うから、いい人材がいたら教えてくれよ。あの八王寺ちゃんみたいな才能溢れる子がいるんだろう?」


「是非いらしてください。うちの子達も黒百合に入ることを目標に日々努力していますからね」

 そう答えると、笑っていない目に野心を灯らせた。

「ただ、八王寺さんのように行きたがらない子もいるので、その時は了承してくださいね。ほら、わが学園は生徒の自主性を重んじていますので」


「ふん。よくもぬけぬけと言えたもんだね」

 橘ちゃんは、紅茶をゆっくりと口に含み、苦笑する。

「あんたは本当に使えるやつはどんな手を使ってでも残そうとするからね」


「あら、私がいつそんな事をしましたか?」


「ふん。忘れたとは言わせないよ。八王寺に十字。この二人はうちのスカウトが見に行って断られただろう」


 僕が二人の会話をマスクの中で溢れんばかりの笑みを作ってみていると、狩谷ちゃんがお茶と高そうなクッキーを持ってやってきた。


「お待たせしました」


「ありがとー」僕はペコリとお辞儀しうさ耳を狩谷ちゃんに向ける。

 さあ、お茶もお茶菓子も揃った。

 この余興を楽しもうかな。

 この茶番を楽しもうかな。


 茶番。そう、この後継者争いの結果は始めから決まってるんだからね。これは出来レース。イレギュラーである須美子ちゃんももういない。


 ふっふっふ。楽しいなー。

 もうすぐだねヒルイちゃん。

 もうすぐ、この東日本が阿鼻叫喚の地獄絵図に変わるんだからねー。

 僕は笑いながらお茶にてを伸ばした。


「あっ、これ被っていると飲めないんだったー」

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