十大組織長会談 死屍柴ヒルイ推参3
「おー。これはいいデスマスクだけどー。どこにうちの二ノちゃんがやったって証拠になるのかなー?」
「ふっ」
僕がササカワちゃんに聞くと、橘ちゃんが鼻で笑った。
「ジョン。可愛い部下を守る気持ちは分かるが、シスターの気持ちも考えてみてくれよ。三回戦まで残った自慢の兵隊が殺され敗れ去ったんだからな」
「橘様、私はそんな事を怒っているわけではありませんわ。私は嘆いているのですよ。死屍柴ヒルイ様の後継者を選ぶ公正な場が殺人鬼に汚されてしまった事を」
ササカワちゃんは元自分の教え子であり、今では上位組織の社長になった橘ちゃんを諭すように優しい声で語りかけたね。
けれどその目には怒りと橘ちゃんと黒百合を蹴落として、山百合が上に行ってやるという野心が溢れているよー。
いやー、美しい師弟愛だね。
「ふん、馬鹿馬鹿しい」
二人のやり取りを真っ白い絵の書かれていないパズルをやりながら門脇ちゃんが罵った。あのパズルはなんだろうなー。あれやってて楽しいのかな?
「ねえ、ジョン・ドゥさん。あなたの候補者は会場から逃げ出したんですよ」
「それは知っているよー」
「じゃあどうやって逃げ出したかは聞きましたか?」
「うん。入り口の鍵を開けて逃げたんでしょー」
僕が答えると、パズルのピースをはめ込む手を止めないまま、推理を披露しだした。
「二ノ宮さんは昨日四家さんと試合する前に他の部屋に行ったようでした。実際靴に血がついていたのでそれは間違いないでしょうね。そしてなぜ他の部屋に行ったのか、それは八王寺さんが十字さんに刺した針を探してではないんですか? 裏世界の住人なら簡単な鍵くらいは針一本で開けられるようですからね。では、なぜ針を探したのか、それは宿泊棟から逃げ出すためじゃないんですか?」
「ほう」
仏頂面で腕組み座っていた土門ちゃんが、感心したようにポツリと洩らした。
「八王寺さんを殺害した後に用意しておいた針で逃げ出し、今は雲隠れしている。違いますか?」
アハハハハ。さすがは現役国立大学生。見事正解だね。
ただ一点違う点があるとすれば、それは八王寺ちゃんを殺したのが須美子ちゃんだって言う点だねー。
殺したのは別の人。
須美子ちゃんに罪を被せて、今ものうのうと別室にいるあの人だからねー。
「アハハハハ。面白いねー。それで皆はうちにどうして欲しいのかな? 二ノ宮ちゃんを捕まえて、その首を取って欲しいの?」
「いいえ」
返事をしたのは門脇ちゃんだった。パズルのピースを一つ埋めると顔を上げた。なるほど、パズルをやっていたから目を見れなかったけど、野心に燃えた目をしていたんだねー。
「候補者はこれで三人に減りましたよね。これじゃあ、公平な試合は出来ない。けれど偶然にも、もう一人生きていて、戦闘可能な候補者がいるんですよ。うちの五朗丸君です」
「ほう。面白い事を言い出すね門脇の坊やは。一度負けたやつを戻すって言うのかい?」
「負けはしましたが死んでいませんよ。もう死んでしまったほかの候補者がもう一度戦うのは無理でも、うちの五朗丸なら可能です。どうですか狩谷さん」
門脇ちゃんは狩谷ちゃんに話を振った。
「私はなんとも申し上げられませんね。今の私は皆様と同じ候補者を推薦したものです。よってこの話に口を挟む資格はございません。お答えできなくて申し訳御座いません」
仰々しく詫びると頭を下げた。
「そうですか。それじゃあ、ヒルイさんに判断してもらえば良いですか?」
視線を空席の上座の席に送った。
「ご主人様はもう間も無くいらっしゃいますから、そのさい判断していただきましょう。今ジョン・ドゥ様にもお茶をお持ちしますので、皆様談笑でもしてお待ちください」
狩谷ちゃんはまた頭を下げると、席をたった。
それにしても面白い冗談だな。
まさかこの面子で談笑が出来るなんて思っているんだ。僕は思わず笑ってしまった。
「アハハハ」
「ジョン、何か面白いことでもあったかのう? それとも何か嘆いているのか? お前の声はそれが分からんからのう」
竜胆ちゃんは出されたお茶を飲みながら聞いてきた。
皆は高級そうなコーヒーカップだけど、竜胆ちゃんだけは湯のみだった。今日の服装は着流しではなく、高そうな茶色の着物を着ていたので、その様相は時代劇のヤクザの大親分のようで貫禄十分だった。思わず親分って呼びたくなっちゃうねー。
「ううんなんでもないよー」
僕が答えると、楽しそうな談笑が始まった。
おしゃべりパーティーの開幕だー。




