十大組織長会談 死屍柴ヒルイ推参2
「気をつけようとは思っていたんだけど、ほら、なにぶん彼岸花は自分勝手に楽しもうが性分の人間の集まりだからさー」
「人間? 失礼ですが、訂正させていただきます。彼岸花は人間ではなく……殺人鬼……鬼の集まりではございませんか?」
狩谷ちゃんが訂正すると、僕の心の声を代弁するようにエレベーターがピンポーンと鳴った。おっ、最上階に着いたようだな。
「……どうぞ」
狩谷ちゃんに促されエレベーターを降りると、重厚そうな扉と、その前に九人の裏世界でも最強クラスの腕の持ち主達が立ち並んでいた。
男に女に若者に年寄りまで揃っていて、老若男女が皆殺気を放って僕を見てきた。
「おー。壮観だねー」
僕がその十大組織長の護衛に手を振ると、射殺すような視線を皆向けてきた。
いいねー。いいねー。
今すぐにでも殺し合いたいくらいだよ。
「ジョン・ドゥ様。参りましょうか」
狩谷ちゃんが僕の前にすっと見事な体捌きで割り込み、護衛の視線を遮ってきた。
残念だな。もっと殺気を一身に浴びたかったのになー。
狩谷ちゃんは広い通路を颯爽と歩き、扉の前に立つと、金で出来た鍵を鍵穴に差込み、扉を開いた。
中は三百畳以上ありそうな広々としたリビングになっていた。わお! 何度来ても圧巻圧巻。
部屋の中央にはこの巨大な部屋に置かれると小さく見えるが、僕の部屋に置くには大きすぎる革張りのソファが置かれていた。
そこにはもう十大組織長の面々が座っていた。空席は二箇所だけだ。僕が座る序列二位の席と、そして上座に当たるヒルイちゃんの席だけ。
ちなみに狩谷ちゃんはヒルイちゃんの横に立つから席はないんだよ。
「遅いじゃねえか。また道草でも食っていたのか?」
佐藤ちゃんが葉巻を咥えながら言ってきた。
「ごめんごめん。ちょっと道が込んでいいてねー」
十大組織長の面々は僕が遅れて来る事なんか慣れているといった感じで、別段咎めるような表情をしているものはいなかった。もちろん、廊下にいた護衛達のように殺気を放つものもだ。
……っと、間違い、間違い。
一人だけ笑顔だけれど、一切目を笑わせずに、僕の手足を捥いで、魚のえさにでもしてやりたいといった、殺気を向けてくる人がいたな。
まあ、この人に関しては外にいる護衛のほうがずっと強いだろうから、僕は気にも留めていないんだけどねー。
「あれー? ササカワちゃんそんな顔で僕を見てどうしたのかな?」
「どうもしませんわ。ただ、ジョン様に聞きたい事があるんですがよろしいですか?」
ササカワちゃんは優しい老婆のような声に殺気を乗せて僕に言ってきた。
「いいよー」
僕は席に座り、ソファの柔らかさを感じながら返答した。
「そちらの代表者の二ノ宮さんの処分はどうするおつもりですか?」
「二ノ宮ちゃんねー。何か悪い事したかなー?」
僕が聞き返すと、ササカワちゃんは一瞬だけ眉根をピクッと振るわせた。
「悪い事? よく言いますわね。二ノ宮さんがうちの……八王寺さんを殺して逃げたんですのよ」
「えー。どこに証拠があるのかなー?」
「証拠ですか」
ササカワちゃんは罠に嵌まったすずめちゃんを見るような笑みを僕に向けると、狩谷ちゃんに視線を移す。おやおや、僕は罠に嵌まっちゃったかな??
「まだ、ジョン様にはあの写真を見せていないようですね。狩谷様、百鬼様の送ってこられた写真を今見せる事は可能ですか?」
「はい。可能でございます。今出しますので、少々お待ちください」
狩谷ちゃんはそう言うと、パソコンを操作しだした。
すると、部屋の壁に貼り付けられた、二百インチはありそうな大きなモニターがぱっと光り、八王寺ちゃんの姿を映し出した。
ほうほう、なるほどなるほど。狩谷ちゃんに話は聞いていたが、こりゃあ疑われるのも頷けるねー。
「うわっ、グロっ」
画面を見た鏡ちゃんがポツリと呟いた。僕としては笑みがこぼれる面白い映像だと思うんだけどなー。
画面の中の八王寺ちゃんは死んでいた。
両目を鋭利な刃物で突き刺したんだろうね、眼球を横に半分に別けたような大きな刺し傷があり、そこから赤とピンク色の涙を流しているよ。
赤は血でピンクはぷるるん脳みそちゃんだね。
そしてこの犯行が須美子ちゃんの犯行だと思わせる最大の理由は眉間に付いた傷跡だね。
まるで鋏のような刃物で両目をいっぺんに刃の根元まで突き刺したから出来たような跡だねー。




