殺人鬼の暗躍2
殺人鬼は嘆いていた。
なぜだ。なぜ、こんな弱いやつが死屍柴ヒルイという偉大な人物の名を継ごうとしているんだ?
自分の弱さも自覚せずに死屍柴ヒルイの跡を継ごうとするなど、私にとっては彼への侮辱でしかなかった。知らしめなければいけない。死屍柴ヒルイの名を継ぐに値する価値の無いやつは……死ぬべきなんだと。
荒い息を吐き出し、血走った目を動かしながら、最も死屍柴ヒルイを侮辱している人間の部屋の前までやってくると、トントンとノックをする。
その手にはナイフがしっかりと握られていた。
暫くすると、ドアが開かれた。
「どうかしましたか?」
八王寺がネグリジェ姿で後ろ手に鎌を持ちながら扉を開け、殺人鬼に話しかける。
教室にいた時とは様子の違う殺人鬼に八王寺が怪訝な顔を向けると、殺人鬼は八王寺の腹を蹴り飛ばし、部屋の中に踏み入った。
ガチャン。後ろ手でドアを施錠する。
八王寺は鎌を握りながら、柔らかい絨毯の上を転がり、殺人鬼を見据える。
「あなたが三月さんを殺した犯人だったんですね」
「……お前も三月も死屍柴ヒルイを侮辱した……死ね」
八王寺は殺人鬼に鎌を振り下ろすが、殺人鬼は迫り来る釜の切っ先を蹴りつけ軌道を変えた。すると鎌は床に振り下ろされ、絨毯と床板を貫き深々と突き刺さった。
「なッ!」
八王寺はすぐさま鎌を引き抜こうとしたが、それよりも早く殺人鬼は飛び掛っていた。その手の中にはナイフが握られていた。
「死屍柴ヒルイになるのは……お前じゃない」
そう言うと、殺人鬼は八王寺の目にナイフを突き立てた。
山百合の死神は殺人鬼に殺された。
神は鬼に敗れた。




