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死屍柴ヒルイの後継者  作者: 也麻田麻也
二回戦 第四試合
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第二回戦 二ノ宮対四家8

「ほんと、茜ちゃんそっくりだねー」

 ニノちゃんが懐かしむような顔をしながら私を見てきた。


「……お母さんを知っているの?」


「知っているよー。裏の世界じゃ知らない人はいないでしょ。アンラッキーの名を継いだ伝説の暗殺者。姫宮メアリー茜ちゃんはみんなの憧れだったもんね。でも……」

 ポツリと呟き、私を見つめるとニノちゃんは楽しそうに笑った。

「人質を救おうとして自害しちゃうなんて本当に馬鹿だよねー」


 トクン。心臓が鳴った。いつもよりちょっとだけ強く。


「うちだったら、人質ごと犯人を殺すんだけどねー。その人質がよっぽど大事だったのかな?」


 トクン。トクン。また強くなり頭の中でお母さんの子守唄が流れ出した。なんだか眠くなってきたよ。私は構えを解き両手をだらんと下ろした。


「ねえ、四家ちゃんはどう思う? ヒルイちゃんに次ぐといわれた実力者が……命をなげうって助けてくれた事をさー」


 ドクン。鼓動が跳ね上がる。


 苦しい。心臓が……胸が苦しいよ。


 ああ、だけど目が重いな……眠くて眠くてしょうがないよ。

 朝早起きしたから、眠くなっちゃったのかな。

 少しだけ……少しだけ寝よう。


 そう思い私は目を閉じた……。


「あれー。四家ちゃんどうしたの? 目を瞑ってギブアップかな?」


 呼び掛けられ、私は目を開け二ノ宮ちゃんに笑みを向ける。


「……ッ!」

 二宮ちゃんが目を見開き、顔に驚きと喜びの混濁入り混じった表情を浮かべた。

「言われたとおりだったよ。言われた通りにしたら……茜ちゃんに出会えたよ! 八王寺ちゃんのような劣化品とは違う、狂気の微笑をまた見れるなんて思ってもいなかったよ! 楽しそうで楽しそうで堪らないのに、体の奥底から震えが込み上げてくるねー!」


「狂気? 私が?」


「そう! ほら見てー、四家ちゃんと対峙してるだけで手も肩もがくがく震えちゃってるよ」


 震えるニノちゃんを見て、私はポツリと呟いた。

「風邪?」


「風邪? 風邪なら温かくして寝なくちゃいけないね。それじゃあ……四家ちゃんの血を頭から被ってあったまろうかなー!」


 ニノちゃんが狂気を振りまきながら飛び掛ってきた。


 凄い狂気だけどもう怖くなかった。

 私の頭の中ではあの歌が流れていたから。

 お母さんが一緒にいるようで怖さは全くなかった。 

 

 だから私は笑みを浮かべた。


「Twinkle, twinkle, little star (きらきらひかる小さなお星様)」

 頭の中で流れる歌を口ずさみながら動いた。さっきまでは目で追うのがやっとだった鋏を左のナイフ弾き、回転しながら右のナイフで腹を割く。


「くっ! 早いね!」

 ニノちゃんはお腹を引っ込めてブレザーとシャツを切り裂かれながらも薄皮一枚でその攻撃をかわした。私は半回転した勢いを利用し、ニノちゃんを蹴り飛ばす。ニノちゃんは膝と肘を立ててガードし、バック転をしながら私から距離をとった。


「How I wonder what you are!Up above the world so high (あなたはいったい何者なの。世界の上でそんなに高く)」

 二本のファイティングナイフをぶらりと下ろし、私はニノちゃんに近づいていった。


「うち英語分からないけどー。それってきらきら星―?」


 笑みを零し私はコクッと頷いた。お母さんの子守唄。大好きなお母さんの歌。


「Like a diamond in the sky! (まるでお空のダイアモンドみたいに)」

 メロディに合わせるように私はナイフを振るった。一撃目は首を裂くように。赤いがーベラが咲き誇るように、鮮血を上げさせるために。


 ニノちゃんは鋏でその攻撃を防ぎ、目を輝かせながら二撃目に備える。


 回転しながら腹を首を足を狙って繰り出す攻撃を鋏でガードを続ける。金属がぶつかり合う音がメロディとなり音楽を奏でていく。

 一撃放つたびに、ニノちゃんのブレザーは引き裂かれ、太腿には刃先がかすったようで赤い線がうっすらと付いた。


「ヤバイヤバイ! 四家ちゃん超ヤバイ! 負けるかも。このままじゃ負けるかも! アハハハハ」

 ニノちゃんは楽しそうに笑い、後ろに飛びのいた。

「久しぶりにうちも楽しませてもらえそうだねー」


 ニノちゃんは鋏を両手で持ち、限界まで広げると、バキッと壊した。いや、留め金を外したようで鋏の形に似せた二本のナイフを元のあるべき形に戻したといったほうがいいかもね。ニノちゃんはナイフを一本ずつ握ると、私のように両手をブランと垂らした。

「さてと、楽しんで楽しんで楽しんでたーのー死んでもらおうっかなー」


 獲物を見詰めるケモノのように目を光らせて言ってくると、体を倒し一気に駆け出してくる。


 互いの間合いに入った瞬間ニノちゃんがナイフを振るう。両刀とも鏡写しのように同時に外から首に向けて放たれた。私がガードせずにいれば、首で交差し、胴体と頭のにパーツに切り分けられるような、重く鋭い攻撃だった。


 私は逆手に持ったナイフでガードし、弾き飛ばしながら攻撃を繰り出す。


「Twinkle, twinkle, little star, How I wonder what you are!(きらきらひかる小さなお星様。あなたはいったい何者かしら)」

 歌いながら回らずに。ニノちゃんはそれをガードしていく。やっぱり、ニノちゃんは強いな。


「速い! 重い! 怖い! 攻撃の質がさっきまでとは大違いだよー」


 実力は拮抗していた。


 でも……子守唄はもう二番に入る。もう寝る時間だよ。


 だから……。


 私はお母さんのように優しくニノちゃんに微笑みかけ……ナイフを振るった。

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