第二回戦 二ノ宮対四家6
赤きガーベラは四十年前に出来た組織で、作ったのは私のおじいちゃんです。
おじいちゃんは元々はアメリカの殺し屋で、裏世界では『アンラッキー』と呼ばれた名うての殺し屋だったみたいです。
裏の世界の子供達は、夜なかなか寝ないとアンラッキーがやって来ると言われて、寝かしつけられていたんだぞって、おじいちゃんがなかなか寝ない私に言って寝かしつけようとしました。
元々おじいちゃんは日本に進出しようとして、ヒルイちゃんに返り討ちにあった組織が雇った殺し屋でした。ヒルイちゃんの首を取ろうとやって来たのですが、アンラッキーと呼ばれたおじいちゃんも力及ばず、僅差で負けたようでした。
腕を切り落とされ、止めを刺される前に逃げ出したおじいちゃんは誰もいない夜の公園で死を覚悟したそうです。即死は免れたものの出血が酷く、もって一時間と言うところだったそうです。おじいちゃんが薄暗い明かりに照らされた赤いガーベラを見ながら、ゆっくり息を引き取ろうとしていたら、そこに偶然おばあちゃんが通りかかり、おじいちゃんを助けました。
おじいちゃんはこの時の出会いを運命だったと言っています。
おばあちゃんは当時駆け出しの殺し屋であり、おじいちゃんを一目見て裏世界の、それも自分とは比べ物にならないほど強い人だと気づいたそうです。けれど、おばあちゃんはそんなおじいちゃんを助けました。
強いはずなのに、死に逝くおじいちゃんが泣いている子供のように見えて可哀想だったと、おばあちゃんは答えてくれました。
一命を取り留めたおじいちゃんはその後おばあちゃんから日本語を教わり、日本の裏世界がどういう状態で、ヒルイちゃんがどんな役割をしているのか教えてもらったそうです。
そして怪我も良くなり、自由に歩けるようになったおじいちゃんはまたヒルイちゃんの元に行きました。ヒルイちゃんはそんなおじいちゃんを見て一目で殺し合いに来たんじゃないと分かったそうです。おじいちゃんはおばあちゃんに助けられ、そんなおばあちゃんに恩を返すために力を貸したかったようです。
隻腕でアンラッキーを届けられないおじいちゃんは、自分の持つ技術を日本の殺し屋に授けたいとヒルイちゃんに伝え、ヒルイちゃんの後押しの下、おばあちゃんの所属していた暗殺組織や、無数のフリーの殺し屋を集め、新しい組織を作り上げました。それが殺し屋ギルド赤きガーベラです。
赤きガーベラはおじいちゃんの指揮の下、海外の殺し屋ギルドの進出を阻んだようです。アンラッキーの教えを受けた殺し屋達は強く、裏世界の中でも竜胆組や彼岸花に並ぶ一大勢力になったそうです。
おばあちゃんも赤きガーベラの殺し屋として最初は戦ったようです。けれど数年後、おばあちゃんは戦いの日々から身を引きました。私のお母さんを妊娠したからです。
私のお母さん、姫宮メアリー茜は今から三十七年前に生まれました。お母さんは黒髪に青い目をしていて、顔立ちはおばあちゃんによく似ていました。けれど、才能はお父さんであるアンラッキーに肩を並べるほどだったそうです。お母さんはおじいちゃんと、おじいちゃんの秘書をやっていた、病で現役を引退した元殺し屋の男性……私のお父さんに、暗殺技術から赤きガーベラの組合長になるのに必要な知識を教えられたそうです。
お母さんが九歳の時には妹が生まれました。それが私がお姉ちゃんと呼ぶ姫宮アイリーン祥子ちゃんです。祥子ちゃんは綺麗でたまにごつんってするけど優しいお姉ちゃんです。
本当はお姉ちゃんじゃなく叔母ちゃんなんだけど、叔母ちゃんと言うとごつんごつんって二回拳骨するから、お姉ちゃんて呼びます。
お母さんが二十一歳で、祥子ちゃんが十二歳のときに私が生まれました。その頃は赤きガーベラは十大組織でトップの地位に立っていました。
私は殺し屋ギルドで育てられましたが、おじいちゃんおばあちゃん、お父さんとお母さんとお姉ちゃんに囲まれた幸せな日々でした。
寝るときはお母さんとお父さんに抱きしめられながら眠りました。
眠る前には毎日お母さんが歌を歌ってくれました。
私が五歳になるまでは。




