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死屍柴ヒルイの後継者  作者: 也麻田麻也
二回戦 第四試合
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第二回戦 二ノ宮対四家4

「四家ちゃん凄いねー。久々にハラハラドキドキ、ワクワクゾクゾクしたよー」

 ニノちゃんが楽しそうに笑うと、今度は私の体がゾワゾワしてきた。うー、気持ち悪い。狂気がまた飛んできた。

「そろそろ反撃の時間かなー」


 ニノちゃんが鋏をチョキチョキと動かしながら、ゆっくりと歩いてきた。今度はさっきみたいに走っては来ないようだ。

 ちょっと助かる。今動くの億劫だし、少しでも体を休める時間があるのは助かるな。


 私は頭をぶんぶん振り、ぐらぐらの世界を振り払い、ニノちゃんを見詰めた。


 赤薔薇さんとの戦いを見たから、凄く強いのは知っていたけど、こんなに強かったんだ。

 多分お姉ちゃんよりも強いだろうな。勝てるかな? うーん。難しいだろうな。私の強さはお姉ちゃんよりもちょっと強いくらいだから、きっと負けちゃうな。

 でもそれは困るな。お姉ちゃんに、赤きガーベラのためにも、この裏世界のためにも死屍柴ヒルイの後継者の座は譲ってはいけないって言われてるからな……。

 

 うー、重いな。


 ナイフを持つ手よりも、背中が重いな。


 重さで猫背になりながらもニノちゃんを見続ける。もう踏み込んでナイフを振るえば当たるという距離に来ているというのに、まだ踏み込む様子を見せずに、更に近づいてきた。


 どうしよう。先に攻撃したほうが良いのかな?

 そう考えていると、ニノちゃんはもっと近寄り、鋏が届く距離どころか吐く息が届く距離にまで近づいてきた。お互いの武器を目の端で捕らえるのがやっとと言うくらいの近距離で、ニノちゃんが笑った。


「四家ちゃんって瞳の色が黒じゃなくて、ブラウンなんだねー」

 そう言いながら顔を覗き込んでくる。私が武器を構えているというのに気にしていないように、平然とだ。


 戦う気はないのかな? 


 でも、おかしいな。さっきみたいに攻撃をしてきているわけではないと言うのに、凄く怖かった。

 傘を忘れて夕立を浴び、服が体に張り付いたときのように、ニノちゃんの狂気が私に纏わりついてきた。


 うー。気持ち悪いな。


 怖くてニノちゃんを遠ざけるためにナイフを振るうと、視界からニノちゃんが消えた。


「……!」

 私は目を見開いた。戦う相手が視界から消える事は、死に直結するってお姉ちゃんに言われたことがあるからだ。


 前にいないって事は後ろ! 私は後ろめがけナイフを突き出そうとした時、髪に何かが触れた。


「髪は綺麗な黒髪なんだねー。でも、四家ちゃんの髪質だったらもっと他の髪型が似合うと思うなー」


 声が聞こえたと同時に私はナイフを突き出した。しかしその攻撃は空を斬り、変りにジャキンと言う鋏の閉じられる音が耳に届き、私の体の一部が切り落とされた。

「……!」


 前に飛びながら後ろを向くと、ニノちゃんの足元には私の髪が落ちていた。ナイフを握ったまま手の甲で後ろ髪に触れると、首筋まで髪が短く切り取られていた。

「……首寒い」


 そんな私をニノちゃんはお腹を抑えながら笑った。

「アハハハハ。四家ちゃんいいねー。なんで殺さなかったんだとかじゃなく、寒いって、なかなか言えないよー」


「そうかな?」

 確かに後ろに立たれたのは驚いたけれど、首が寒いんだからしょうがないよ。


「寒くなるのは首だけじゃないよー」

 ニノちゃんは笑みを浮かべながら歩いてきた。いたずらをしようとする子供みたいな笑みだ。


 私は今度は後ろを取られないように警戒しながら、ナイフを両方とも逆手に持ち替え、構えを取る。

 一瞬で私の視界から消えた事を考えると、ニノちゃんの俊敏性は私よりずっと上なんだろうな。近づかれたら動きの差が出るから、近づけさせちゃダメだ。


 私は間合いに入ったニノちゃんにコンパクトにナイフを振るう。最小の動きで最短の距離をナイフが走っていく。回転せずに放つ斬撃で最も早い攻撃だけれど、ニノちゃんは半歩だけ下がり攻撃をかわし、首の前をブレードが通過するのに合わせ、鋏を突き出してきた。

 ジャキン。私は紙一重でその攻撃をかわす。紙一重と言うよりも髪一束と言ったほうが合うかもな。ニノちゃんの鋏は私の横髪をごっそりと切り取っていった。触ってみると、耳から下の毛がなくなっちゃっていた。


 うー。寝癖が付きやすそうだな。


「まず左―」

 そう言うとニノちゃんは鋏を下から突き上げてきた。私はナイフで弾くが、鋏はまた髪を切り取っていった。今度は右の横髪をだ。

「さてと、次は微調整だねー」


 またくるくる鋏を回し、私の髪をじっくり観察すると、鋏を握り一気に攻め立ててきた。


「……!」


 ニノちゃんは突きを繰り出してきた。けれど、その速度は今までとは比べ物にならないくらい速かった。私は二本のナイフで必死に捌くけれど、一本の鋏を振るうニノちゃんの刺突速度のほうが凌駕していた。

 弾いても弾いても鋏は少しずつ髪を切り取って行った。

 ダメだ防ぎきれないな。


 どうしよう。


 反撃に出ないといけないのに、防ぎきれないよ。

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