第二回戦 二ノ宮対四家3
「お姉ちゃん? ごつん? いやー、四家ちゃんには聞きたいことがいっぱいだなー。お茶でも用意して、ちゃぶ台の前に座って煎餅片手にゆっくりと聞きたいんだけど……残念なことにそれは無理だよねー。だって、開始の合図はされちゃったからねー。これ以上自分を抑える事はうちには出来そうもないから……殺し合いながら話そうよ」
そう言うと、ニノちゃんの雰囲気が替わった。
明るい雰囲気から、底なしに明るい雰囲気に。
目を細め、歯を見せなが楽しそうに笑ったニノちゃんはなんだか怖かった。
うー。殺気を発してないのに、近寄りたくないし、一緒の空間にいたくないな。それになんだか、肌がべたべたしてきて気持ち悪いよ。
殺気に当てられると肌がチクチクやピリピリはするんだけど、こんなの初めてだな。近いもので言うと海に入った後の感じかな。お姉ちゃんに海水浴に無理やり連れて行かれたときも、塩水が蒸発して肌がべたべたした。ちょっと似ている気がする。気持ち悪いものが体に纏わりついているような感覚が。
なんて言うんだろうなこういうの。
殺気じゃなくて……邪気? 近いけどなんか違う気もするな……うーん。
あっ。私はニノちゃんから発せられる気にピッタリのを見つけた。
「狂気だ」
「狂気? 狂気って狂った気って書いて狂気―?」
鋏をくるくる回しながら笑いかけてくる。
「うん」
「えー。うちのどこが狂ってるのかなー? うちのは……無邪気だよーっ」
ニノちゃんは鋏をぴたっと止め、右手でしっかりと握る。あっ、来る。
ニノちゃんが重心を落とし、体勢を下げながら駆け出した。凄く速かった。背中にロケットでもついているのかなって思うくらいに。
一瞬で私の目の前まで迫ると、目を狙って鋏を突き出してきた。
「危ない」
呟きながら鋏の刃と刃の間に、逆手に構えたナイフの刃を滑り込ませ突きを止める。目が刺されるのは痛そうだから嫌だな。攻撃を防いだ私は上半身を捻りながら首を裂くために残った左のナイフを振るう。
「わおっ!」
ニノちゃんは声をあげると、体を反らしこの攻撃をかわした。
空振りに終ったナイフは空を切りながら、重さと遠心力で私の体を引っ張った。
これやると目が回るから嫌なんだよな。うー。
私は引っ張られる力に抗わずに、その力に身をゆだねながら、その場で回った。回転する力で、私はニノちゃんの鋏を弾き、また左のナイフを繰り出す。うん。目が回るけど、あんまりナイフを重く感じないな。
お姉ちゃんが私のこの戦い方を円運動をうまく利用しているや回転軸がしっかりしているとか説明していたけど、私はあんまり理科が好きじゃないから、分からなかった。私の中では回ると、ナイフも自然に回るし、勢いもつくから速くなって威力も上がる技だと思ってる。
私が回りながら二撃目も繰り出すと、鋏を弾かれたばかりのニノちゃんは、防御体制をとっていなく、お腹に迫るナイフをかわそうと腰を引く。が、ナイフは制服をかすり、切り裂いた。
「ギリギリー!」
二撃目も空振りに終った私は、回る軸にしている右足に力をこめ回転の速度を上げて三撃目を放つ。
首筋に突き立てようとしたナイフをニノちゃんは鋏で弾き、楽しそうに笑った。
四撃五撃六撃七撃……と、私は自分で数えるのが面倒になるくらい攻撃を繰り出し続けた。回転しながらも膝を曲げたり、腕を上げたりしながら、攻撃の箇所を調整して何発も何発も繰り出した。突き刺す攻撃と切り裂く攻撃を。うー。そろそろ目が回ってきたな。
「四家ちゃん最高だね! 早いし重いし、反撃に出るタイミングが見つからないよ」
喋りながらも攻撃を弾き、追撃をかわし続けた。
ニノちゃんも凄いな。制服にかすったのは一発だけで、その後は全部刃先すら触れさせなかった。十数回ナイフを振るったところで、頭が微かにくらっとした。
あっ、そろそろ限界だな。終らせなきゃ。
回転しながらも床を蹴り上げ飛びながら体を横に倒していく。横の動きを警戒していたニノちゃんの不意を突き、私は頭上からナイフを振り下ろす。
「わおっ!」
今までこの攻撃で仕留められなかった敵はいなかったのに、ニノちゃんは声をあげながらも、鋏を大きく広げ、ガードした。私が回りながら着地するまでの四発をすべて受けきった。
「……うー」
声を漏らしながらも私は着地と同時に後ろに飛び、ニノちゃんの追撃を牽制するためにナイフを向ける。頭がぐらぐらするし、いっぱいガードされたから手が痺れていつもよりもナイフが重く感じた。
「……重い」




